あの時から、何度こうなる事を待ち望んでいただろうか。
 触れた瞬間、時は止まり、想いが爆発してしまうかと思えた。

 柔らかい唇の感触に、いやそれ以上に愛おしい気持ちで心が融けていった。

 永遠に触れていたいその感触が、惜しみながら離れていく。
 秋葉が顔を上げ、こちらを覗いているようだった。さらりと長い髪が、その表情を隠す。
 俺はその手で髪を梳くと、艶やかな感触を味わう。
 そうして腕を更に伸ばし、秋葉の顔に触れる。顔を近づけさせると、もう一度優しいキスをする。そのまま体を入れ替えて秋葉を布団に組み敷く。
 そうして顔を上げ、月光に照らされた秋葉の顔は……

「秋葉……」

 やっと、ちゃんとした明かりの下で秋葉の顔が見れた喜び。
 それとは違う喜びに満面の笑顔を浮かべている、秋葉。
 しかし、止めどなく流れていた涙のせいで、真っ赤に充血した瞳。
 それは、弱々しいウサギを連想させて。
 守らなくてはいけないという気持ちをいっそう強めるものとなっていた。

「秋葉……」

 これだけ悲しませてしまったなんて、兄として、愛する者として失格だ。
 でも、なんとか気持ちだけは伝えなきゃいけないと思っている。そう思っているのに……

「ゴメン……ゴメンよ……」

 口を衝いて出る言葉は、そんな単純でありふれたものしか。
 今は、それで精一杯だった。
 知れずまた涙が溢れてくる。

「……いいえ、兄さん。いいんです」
 一瞬悲しそうな顔をする秋葉に、俺の胸が締め付けられる。
「秋……葉」

 秋葉は瞳を閉じて首を振ると、目を開いた時には笑顔に変わっていた。
「兄さんが、帰ってきてくれたから……そして、私はあなたの元に帰ってきました……」

「ただいま。そして、お帰りなさい、兄さん」
 秋葉が涙を滲ませながら言う。
「ああ……ただいま……そしてお帰り……俺の秋葉……」
 その可愛らしい顎のラインに手を添えながら、もう一度優しくキスをした。

 ゆっくりと秋葉の唇が開かれ、俺を求めるように、しかし控えめに舌を絡ませてくる。
 まだぎこちなく慣れぬそれは、ゆっくりと俺の口の中を動き回り、存在を確認するかのようだった。
 秋葉のされるままに、俺はその舌を感じる。
 柔らかくて、甘い。
 女の子の味がする。
 どうしてこんなに違うのだろうと、蜜のような感覚に心を陶酔させる。

 秋葉が俺を導き出すように、舌を俺の口腔から自分のそれに移動させる。
 その感触が一瞬でも失われるのがイヤで、俺はそれに従って秋葉の口腔に自らの舌を進入させていた。
 引き込まれた口腔内は、秋葉の味に溢れ、俺は夢中にそれを貪る。吸い取るようにじゅるりと音を立てると、それが興奮作用をもたらしてくるのが分かる。
 自らの唾液を送り込むと、秋葉はそれを愛おしげに自分の舌に絡め、嚥下する。

「は……」

 初めて、秋葉の声が漏れる。
 ぴちゃり、ぴちゃりと開いた隙間から流れ出る音は、柔らかく美しくはしたない響きとなって響き渡る。

「くふぅん……」
 くぐもった声で秋葉が感じている。嬉しくなって夢中で舌を絡めて、涎を垂らすように口の端から二人の唾液がこぼれる。
 秋葉の舌を自分の口腔に呼び戻し、唇ではさみつけて全体を銜えるようにしてしまう。
「ん……」
 吸い取られるかのような一瞬の感覚に秋葉が驚く。しかしそれを快感と知ると改めて求めようと、舌が俺の中に進入する。
 それに意地悪するようにわざと顔を引くと、舌を差し出した状態の秋葉の顔が目に写り込む。
 物凄くいやらしい。
 そのいやらしさに興奮して、その突き出していた舌に自分の舌を乗せるようにすると、秋葉がそれ感じ取った瞬間に積極的に絡めてくる。舌際で互いに円を描くように、一番敏感な舌先を互いに狂わそうと暴れ回った。
 キモチイイ。
 とにかく、触れ合う側から奔流となって快感が流れてくる。
 唇を覆い尽くすように重ねると、全体を吸い付けるようにして、更に舌を歯になぞらせ、歯茎をちろちろと愛撫していった。

「あっ……だめっ……」
 その舌戯に、先に耐えられなくなったのは秋葉だった。
 堪らなくなった秋葉が、唇を離していやいやをするようにしてしまう。
 先程とは違う潤む眼で、俺を優しく見つめる。

「兄さん……いっぱい、いっぱい下さい」
 おねだりをする少女は可憐純情で。でも濡れる唇が動く度、それは一人の愛する女として俺を誘う。
「ああ……いっぱい、いっぱいしてあげるよ」
 俺は優しく頷くと、その唇に一度触れてから、移動を開始させた。

「あ……兄さん……」

 顔中をくまなく唇で往復すると、秋葉はむずがゆい声を上げる。甘い響きがかわいくて、余計それを続ける。
 額をぺろりと舐めると、僅かに汗の味がした。
「いやっ……」
 秋葉が嫌がるが、今までの分も含めて秋葉のすべてを感じたい。
「私……その……」
 秋葉は目を伏せ、顔を真っ赤にしている。
「走って……きたから」
 走ってという表現が正しいかは別として、秋葉は余程恥ずかしいのだろう、沸騰している。
 そう言われて、俺は改めて秋葉の全身を見ると……

「あはっ、秋葉、このパジャマは向こうで着てるのかな?」
 軽く袖の部分をつまみ、そのピンクの上下を俺は意外そうに見つめる。
「あっ……」
 秋葉は今気づきました、と言わんばかりの驚きと恥ずかしさを見せる。それだけ夢中でここまでやってきたのだろう。

「ち、違うんです兄さん……!」
 何が違うというのか、秋葉がぷるぷると首を振って否定する。
「だって……羽居ばっかりは……ずるいから。その、中に……」
 ごにょごにょと腕の舌で口ごもる姿がとてつもなく愛らしい。

「そっか……嬉しいな。秋葉のこんなパジャマ姿も見れたし」
 そう言うと、秋葉はくすっと笑う。
「兄さん、変なところに興味がありますねえ。制服フェチですか?」
 取り直した秋葉にフェチと言われると、流石に俺も否定できないだけに恥ずかしくなる。
「ば……馬鹿言え。それは……その……秋葉だから……」
 俺が今度は恥ずかしながら目を反らし、そう言って誤魔化す。
「兄さん……」
「……」
 それに反応して、結局二人で真っ赤になってしまう。

「……じゃぁ、今度からは家の中でもこんな格好でよろしいですかね?」
「うん……その方が、可愛いと思うから……」

「……」
「……」

 二人の視線が共に宙をさまよっていた。しかし互いの顔が僅か数センチにある状況では、自然と目の前のそれと絡むわけだ。

「ふふっ……」
「はははっ……」

 共に穏やかな笑い。いつになく濃密な二人の時間が、俺にはとても嬉しく思える。
 とにかく、こんな事より……きっと秋葉も望んでいるはずだから。
 そうして見つめ合うと、もう一度唇を重ね合い、唾液を啜りあう。
 舌先から刺激される気持ちよさに、二人は夢中になっていた。

「ああ……兄さん……もっと」

 首筋をまさぐる俺に、更に気持ちよくなりたいと秋葉がねだる。
「うん……」
 今は秋葉が気持ちよくなれるように、俺は全身で奉仕してあげなきゃいけない。
 髪を梳き、軽くさらりと流してからうなじに舌を這わせる。
「きゃっ……そこ、弱いのぉ……」
 跳ねるような、いつにない可愛い叫び声がいい。秋葉は俺に抱かれながら、全身を敏感にさせていた。
 そのまま首筋から唾液の線を這わせて耳を舐め、耳朶を優しく唇で挟む。
「ああ……うんっ……」
 こそばゆいような、そんな愛撫に首を僅かに動かして本能的に逃げてしまう秋葉。それでも追いかけ、柔らかい耳全体に唾液を這わせてゆく。

「やっ……くすぐったい……」
 首だけでなく、全身をくねらせてその感覚から逃れようとする。それは俺の腕の中で、体の下で俺にも軟らかい肉の動きとなって刺激を与えてくれていた。

「きゃっ……」
 俺のモノが、たまたま動く秋葉の股間の部分に当たり、秋葉は一瞬固まる。
 まだ2度しか俺を受け入れた事がないから、まだまだそれは畏怖の対象なのだろう。
 我慢効かなくなったそれは、確かにいつも以上に秋葉に対する想いからか先程から激しく勃起をし、早くこの狭い檻から出してくれと俺に訴え続けていた。

「秋葉……これが、欲しい?」
 俺はわざと腰を押しつけ、秋葉の腰へと布地越しに擦りつける
「ああ……兄さんが、熱いです……」
 秋葉は答えられず、服の上からでも分かる熱を感じ、顔を赤らめる。
 正直、秋葉に擦りつけるそれは信じられないくらいにキモチイイ。そのままトランクスの中で激しく放出してしまいたい程だ。それを我慢し、俺は秋葉に妖しく微笑みかける。

「まだ怖い?恥ずかしい?大丈夫、俺が恥ずかしさを捨てさせてやるから……」
 秋葉をとっても気持ちよくさせて、恥ずかしいとか考えさせないようにしてやりたい。そう思って俺はゆっくりと首筋から鎖骨に舌を這わせ始めた。
「ああっ」
 パジャマの第一ボタンが外れていて、その艶めかしい首筋から僅かに覗く鎖骨のラインまでが俺の目を刺激する。秋葉の全身から漏れ出す甘い香りに魅了され、誘われて俺がその窪みを往復すると、秋葉はたまらない声を上げてくる。
「ん……にいさんっ……」
 首を反らす秋葉を左手でカバーし、さらに露わになるそのスロープを滑る。

 秋葉の嬌声を、どれほど夢に思い出してしまっていたか。本人には恥ずかしくて言えないが、俺は現実となった秋葉の反応に至福の喜びを感じていた。
「ほら……秋葉、脱がすよ」
 舌を這わせながら、了解を待つももどかしく右手をボタンに添える。手前が逆のボタンをはずすのは案外だが、何とか一つ、二つ外して、更にそれに続こうとする。
 ふと、その胸元に目を向けると……

 そこには、僅かに紅潮させて息づく秋葉の肌。そしてはだけたパジャマから僅かに覗く胸の合わせ目。
 そこには二つの小振りの胸を隠すはずの下着はなく、かといってキャミソールを付けているわけでもなかった。
「に……兄さん」
 恥ずかしそうに、自分の胸を隠したがる秋葉。
「いや……秋葉の胸は綺麗だよ」
 機先を制し、秋葉の言いたい事を遮る。
「あの……」
 何も付けていない事をごにょごにょと言い訳する。
 まぁ、楽な格好で寝たいというので、よく女性はブラをせずに寝るというのを知ってるから、それほど悪い事じゃないかも知れない。

「意外だなぁ、もう少しちゃんとしなくちゃな」
「はい……」

 秋葉は口ごもり、恥ずかしそうに反省するが、それだけ開放感を得たい、という違う気持ちの表れなのか、とか思ってしまう。
 でもそれが俺には効果的で、いきなり包み隠さず現れたその胸を早く貪りたい衝動に駆られた。
 残りのボタンを両手で外す。ここで慌てるとかえって上手く行かず、焦りも余計に手を固まらせて逆効果だから、落ち着いて全てのボタンを取る。そしてゆっくり胸を隠す覆いを取り払う。

 秋葉の鼓動と呼吸に合わせて、僅かに上下を繰り返す胸が、ようやく俺の目の前に現れた。
「やっ……」
 胸を晒す事に未だに強い羞恥を覚えているだろう秋葉は、俺を見ないように横を向いてしまい、目を閉じてしまっている。
 きっと恐らく普通の女の子よりは薄い胸かも知れない。
 でも、それは間違いなく秋葉の胸で、俺が誰よりも愛おしく感じる人のもの。
 他人との比較なんて……比較なんて……

「兄さん……羽居の胸、おっきかったでしょう……」
 自分を卑下するような事を、秋葉は言ってしまう。それに釣られ、考えてしまう俺がいた。
 確かに、羽居ちゃんの胸はふくよかで、俺は溜まっていたものもありあっさりとそれに負けてしまった。
 言い訳がましいかも知れないが、でもそれは羽居ちゃんだからというわけで、秋葉の胸が小さい事とは全く関係ない。

「いいかい、秋葉……」
 俺は自分にも、秋葉にも言い聞かせるように呼吸する。秋葉は呼ばれた事で目を開き、顔をこちらに向けていた。怒られた時のように、自分の意固地さにシュンとなっている感じだ。
「俺は秋葉の胸だとか、羽居ちゃんの胸だとか考えない」
 そう言うと、露わになっているその胸を、優しく右手のひらで包んだ。

「あんっ……」
 触られただけで甘い声を上げる秋葉の瞳を見つめる。
「俺は、秋葉だけを愛している。それだけだよ」
 そうして、ゆっくりとその胸を愛撫し始めた。

 仰向けになり、ほぼ平らと言っても仕方のない胸だが、俺が触ると女性特有の柔らかい肌が迎えてくれた。触るだけで手のひらが興奮し、わなわなと震え出す。興奮は神経を神速で駆けめぐり、小脳を狂わせて、その衝動を露わにしていく。それに押されて、右手はいっそう胸をいじる。
 はじめは優しく周縁をなぞるだけだったが、次第に中心に向かってするすると上るように指を這わせ、今はその頂点に近い色違いの狭間を触れるか触れないかで優しくさすっている。

「きゃふっ!兄さん……ああっ!!」
 その恐るべき感覚に秋葉は全身を震わせ、鳥肌も立てている。
 ビクリ、ビクリと胸を上下させるたびに、指先が軽く沈み込むように胸を触る。ぷにぷにと俺は気持ちよく、秋葉にはそれが時折にしか与えられない拷問のようであろう。
「やぁ……兄さん、意地悪しないで……」
 悲しそうに秋葉が懇願する。俺が悪いわけではないのだが、そこは秋葉の為。言葉は素直に受け止めて、もっと気持ちよい刺激を与えてやる。

「ほら……秋葉、感じる?」
 人差し指で山の尾根から頂を目指すように這わせる。そうしてもう一度先程の場所まで行くと、そこを通過し、頂にチョンと軽く触れた。
「ああっ!」
 瞬間、それだけで秋葉は大きな喘ぎ声を上げた。そのままゆっくりと体から力が抜け、布団に沈む。
 俺はその先端をいじるように、くりくりと指で弄ぶ。そして親指と一緒に、指の腹で優しく摘んであげた。
「あっ!ああっ!」
 秋葉の声が断続的に上がり、秋葉は背筋を反らす。突き出された胸は、先端が愛撫に従って突き出すようになり、さらに少しづつ固さを増していた。
 その存在感と、感度の良さに喜びを覚えながら、俺は空いた手で反対の胸も同じように愛撫してあげる。

「きゃっ!……兄さん……切ないです……」
 眼を潤ませ、秋葉が2点だけに与えられる刺激に言い得ないむずがゆさを覚えているようだった。
「ゴメン秋葉、でもキモチイイでしょ?」
「……はい」
 頬に染まる朱が、一際濃くなったような気がした。今度は、胸全体を……
 両手でこねるように、胸を優しく揉む。手のひらに、乳首が当たってころころ転がされている。
「ああ……んっ!」
 面の刺激に、体を揺すらせくねらせて反応する。
 そして、片方の胸の手を下にずらすと、口からチロリと出した舌で、その周縁からなぞり始める。

「ああはぁっん!」
 触れた瞬間、そのゾクリとする快感に秋葉が震えた。手での愛撫と同時に、下で頂点をゆっくりと目指し、秋葉をじらす。
「や……や……」
 秋葉は早く来て欲しい、と胸に顔を埋める俺の頭に手を置く。それでもゆっくりゆっくり、意地悪く舌を近づける。
「だめ……兄さん、秋葉はおかしくなります……」
「ああ……おかしくなっていいよ、愛しい秋葉……」

 ぬめぬめと這わせ、そうしてやっと先端に到達すると、その固くしこった乳首を俺は優しく舌で包み、唇で吸った。

「あああああ!」
 胸に頭を押しつけるように、秋葉は待ちこがれた愛撫に全身を強ばらせる。ぎゅっと押しつけられた胸に、俺も知らずうちに夢中になる。
 ちうちうと、秋葉の可愛い乳首を吸い続ける。

 甘い味がする。

 それは気持ち的な問題かも知れないけれど、蜜を塗られたかのように舌が乳首から甘味を受け取り、発火しているようだった。
 今度は、反対の胸にも唇を移動させる。体の命令系統が微妙に狂っているのか、未だ隠し続けていた腕を押しのけて、逆の乳首を吸い出す。
 今度は、優しく甘噛みしたと思ったら、歯を軽く立ててきゅっと噛み締め付ける。

「あああっ!!」
 その瞬間瞬間に、秋葉は一際高い喘ぎ声をたて、快感に溺れまくっていた。その姿が嬉しく、俺は精一杯の愛撫を続ける。

 だが、幾夜も待ち、待たされ続けた二人はこれだけで満足できるわけがない。
 秋葉はともかく、俺はこれだけの愛撫で秋葉を満足させているなどと、ひとかけらも思ってはいなかった。

 もっと……もっと、時間を全て埋めるが如く愛してあげないと……

 いつまでもそうしていたい気持ちを振り払い、俺は体を秋葉にそって下にずらし出す。最後に軽く乳首を吸うと
「あっ!あ……」
 胸から消えていく熱い感覚に、秋葉が寂しげな声を上げる。
「大丈夫……」
 どこにも行かないよ、そう舌で伝えるかのように、頂点から尾根、そして腋のラインからお臍に向かい、ゆっくりとシュプールを描き、舌が滑降する。

「や……だめぇ……」
 お臍の中にまで舌を差し込まれ、羞恥にむせび秋葉がイヤイヤする。が、体は正直に快感を受け取っており、甘美な刺激となって秋葉を襲い、結果体を揺らす動きとなって表象に現れる。
 その反応を楽しみながら、俺はまた少し下がり出す。

 そうして、パジャマのズボンに到達する。
 指で軽く引っ掻くようにしてズボンを脱がそうとすると、恥ずかしいのか秋葉がその裾を押さえ込んでしまう。

「どうして?脱がないともっと愛せないよ、秋葉」
 わざと寂しそうにそう言うと、秋葉は困惑した表情で
「恥ずかしいです……兄さん」
 上半身を露わにした少女は、近付く解放に戸惑っている。

「分かった。秋葉、俺も脱ぐから……」
 そう言って、俺はゆっくりと秋葉の前でシャツを脱ぎ、ズボンも脱ぎ捨てる。

「ほら……」
 俺はトランクス一枚の姿になり、秋葉に向き直ると
「あ……」
 その間に体を起こしていた秋葉が俺の体を見つめ、そしてその中心にある胸の傷を見た瞬間……命の共有を思い出したのか、思い詰めたような顔をして下を向いてしまった。
「秋葉……」

 決して消す事の出来ない、この傷の跡。
 しかし、それは二人の繋がりを意味させる、決して消してはいけない絆の跡。
 それを伝えずに、秋葉に悲しい思いをさせてはならない……

「秋葉……今は、僅かしか感じられないけど……」
 俺は、その傷口をなぞるようにすると、しかし強い意志のこもった瞳で秋葉を見つめる。

「秋葉は、俺の中にいる。そして俺も、お前の中で確かに生きている。そうだろう?」

 秋葉ははっと顔を上げそれを聞き、俺の瞳を見つめると……どこに残していたか、また涙を溢れさせていた。
「はい……兄さん……」
 それだけが精一杯で、自分の胸に両手を当て、鼓動を感じるようにする秋葉。
「この温もりは、兄さんのもの……」
 秋葉は一度目をつぶるようにして、張り裂けそうな想いを抑えると

「もう、どこにも行かないで下さい……」

 すがるような目で、俺に想いを伝えた。そのまま、俺の胸に体を飛び込ませ、無言で泣き出した。
「ああ……もう、どこにも行ったりしない。たとえ月日が巡り、魂だけになっても……俺は、秋葉といつまでもいる……」
「兄さん……兄さん……」
 消えてしまいそうな秋葉が愛おしくて、愛おしくて。
 俺も力を込めて秋葉を抱き締め、自分に融合させてしまうようにその胸に覆いこんだ。