「いらっしゃい、志貴君」 雰囲気として、その日が来てしまった。 「どうしたの?」 朱鷺恵さんの質問にも、何だか受け答えに身が入ってないと自覚する。 「……ね、志貴君」 会話が途切れた頃、朱鷺恵さんがふと俺の事を優しい瞳で見つめた。 「……はい」 それは、いつもの合図だった。 が、今日だけは違っていた。 「今日は、お風呂……入ろ?」 朱鷺恵さんが、ふとそんな提案をしてくる。 「えっ? あ、はい」 意外な展開に少々驚きながらも、俺は勧められるままに返答していた。 「うん。じゃぁ、先行っててね」 俺は言われるがままに、浴室へと向かっていた。 朱鷺恵さんと一緒の入浴。 「はい、志貴君の背中も洗ってあげる」 そう言われて焦ったが、一度決めたら結構頑固なところがある朱鷺恵さんだ、素直に従う事にした。 「はい、終わり」 満足そうに朱鷺恵さんが微笑むのを感じて、俺は後ろをちょっと振り返ろうとした。と、 「志貴君」 おどけていない声。 「今日は、ここで……しよう?」 それは、突然の提案だった。 「えっ、え?」 ようやく、俺が慌てていた。 「あのね、私、色々勉強したんだよ。その……そっちの事」 その言葉に理解したのと同時に、驚きを隠し得なかった。 「きっとね、志貴君はあまり分からないと思うし、私も知識だけだけど……きっと大丈夫。始めましょ?」 そう言って近付いてくれて、優しいキス。 「んっ……」 これだけは本能的に、俺は朱鷺恵さんを受け入れて舌を絡めさせた。 「んふっ……うん……」 嬉しそうにしてくれる朱鷺恵さんを見て、自分を奮い立たせる格好となる。 「はあっ」 絡まりを解き、見つめると、朱鷺恵さんがぽうっとしながらも笑っていた。 「ね……ゆっくり、約束だよ?」 そう言って、朱鷺恵さんは体を後ろ向きにさせると、浴槽の縁に上半身を乗せて、俺の方へお尻を突き出すようにした。 「は、い……」 ごくりと、溜まっていた二人分の唾液を飲み込む。 少しだけ火照ってピンクに染まったお尻。 「恥ずかしいよ……そんなじっと見ないで」 朱鷺恵さんは顔を赤くして俺を見ると、俺を促した。 「いきなりはだめ。まずは、ゆっくり……」 その言葉に導かれて、俺は朱鷺恵さんのお尻に体を近づけると、そうっと入り口を指で触れた。 「きゃっ」 瞬間、朱鷺恵さんはびっくりして腰を逃がし、俺から逃れてしまう。 「あ、ごめん。ちょっと、ビックリして……」 朱鷺恵さんはもう一度ぐっとお尻を突き出してくれると、 「いいよ……あのね、暖めながらの方がいいんだって……」 そう言って、きゅっと浴槽の縁を強く掴んだ。 「はい……」 俺はもう一度強く頷くと、今度はもっと優しく、人差し指で朱鷺恵さんのアヌスへと触れた。 「んっ……あっ……変な感じ、だよ……」 まだ、きっとむず痒いとしか感じないのだろう、声に少々の困惑とおかしみさえ含みながら、朱鷺恵さんが可愛く思える声をあげた。 「朱鷺恵さん、どんな感じ?」 その感覚を知りたくて、俺は興味が強いという口調で尋ねた。 「あのね、んっ……なんだかくすぐったいけど、いつも志貴君が優しくしてくれるみたいに気持ちいいよ……ふうっ」 時折声を詰まらせながら、朱鷺恵さんも意外な感覚に驚きを隠し得ない様子だった。 「そうなんだ……」 納得してしまい、そうして、ちゃんと朱鷺恵さんが悦んでくれていると理解した俺は、少しだけ勇気が湧いてきて、安心した。そして、さっき『暖めた方がいい』と言っていたのを、ふと思い出す。 「あっ……きゃっ!」 アヌスへシャワーの軽い飛沫を浴びせられて、朱鷺恵さんがちょっと驚いた様子を見せた。 「あ、ごめん……なさい」 俺はそれを見て咄嗟の事に驚くと、慌ててシャワーの勢いを弱くした。 「んっ……んんん……」 今度は上手くいったようで、朱鷺恵さんがもう一度甘い声をあげてくれる。心なしかリラックスしたみたいで、すぼまりに見える固さも少しほぐれた様子だった。 この感覚。 愛しさから、自然に行動は次へ移る。 「ひゃっ!? し、志貴君?」 俺は朱鷺恵さんのアヌスに、優しくキスをして、舌を触れさせていた。 「ダメだよ、汚いよぉ……」 そこまでは予想してなかったのか、朱鷺恵さんの反応は驚きに近いものがあり、俺の口から逃れようとしていた。 「大丈夫だよ、さっきいっぱい洗ってたでしょ?」 さっきとは違って消え入りそうなか弱い声で、朱鷺恵さんが身をくねらす。俺に押さえられて不自由にしたまま、何とも艶めかしい光景。 「んっ……あ、はああっ……」 段々さっきのように甘い声が混じり始めて、朱鷺恵さんが感じてくれているのが分かる。 「朱鷺恵さん……次、行っても良い?」 俺は顔を離すと、回していた腕をまたお尻にあてがい、その先を尋ねた。 「ん……うん、ゆっくり、挿れてね。傷ついちゃうから」 俺は不安にさせないようにしっかりと頷くと、ひとつ唾を飲み込んだ。 「んああっ……」 瞬間、構えてしまっていた朱鷺恵さんが身を固くして、まだ幾ばくも進んでない指の進入を拒む。 「力、抜いてください……」 朱鷺恵さんは、恐らく自分でも未知の部分に指を射し込まれた感覚の所為だろう、きゅっとすぼまりを強めてしまう。 「朱鷺恵さん、息吐いて……」 朱鷺恵さんが驚いた声を上げ、震え上がった瞬間、ふっとすぼまりの力が抜け、指がまた一ミリずつ進入を開始していた。 「んっ……両方なんて、ずるいっ……はあっ……」 朱鷺恵さんが可愛く拗ねながら、それでも気持ちよさそうにしてくれたから、俺は安心した。 そのまましばらく愛撫を続けていくと、第一関節まで指が埋まった。 「あっ! 志貴君、んっ……!」 三つの感触で同時に責められて、朱鷺恵さんの体から力が抜けていくのを感じた。 「んっ、んんっ……!」 遂に、人差し指全部が朱鷺恵さんの中に埋まった。 「んっ……あっ……」 そこに、先程から比べて一番の甘い声を聞き、俺は尋ねていた。 「抜ける時、もっと感じるの?」 抜ける時の方が気持ちいいと、読んだ本に書いてあったような気がしていたから、本当にそうなんだと、何だかやけに冷静に納得してしまう自分がいた。 「ん……志貴君、慣れてきたから、もっと動かしていいよ……」 少しだけ呼吸を整えると、朱鷺恵さんが笑ってくれた。 「うん……」 俺はその言葉を信用して、また指を沈めた。 「ううんっ……くぅ……ん」 指を奥まで挿れると、少しだけ高い体温と腸壁が俺を包み、膣内にも似て何とも不思議だった。 「あっ……いや……」 朱鷺恵さんが嫌がるまで指の先を鍵状にしてみると、思いの外内部は広がっていくのだと驚いた。しかし考えると、確かにそうでないと、これよりも太いものなんて入らないだろうし、そもそもの役割も果たせない。 「あっ……んんっ……」 朱鷺恵さんは驚いたが、それでも指が進入してくるとそれを受け入れてくれて、準備に答えてくれるかのようだった。 「ああんっ……なんか、おかしいよ……ぐりぐりってされて……ふあっ!」 その感覚に驚きながらも、熱くうねった内部が指を締め付けた。 「やっ……ダメ、強い……ああっ!」 急に、朱鷺恵さんが体を強ばらせてしまった。 「あっ、ああっ……!」 その反応に、俺はちょっとビックリした。朱鷺恵さんは、いつもより早く達していたからだ。アヌスに気を取られていた所為もあってか、俺の前後への愛撫は調整知らずだったのかも知れないけど、ぴくぴくと内部を震わせて目を瞑ってる朱鷺恵さんは、たまらなくいやらしく思えた。 「は、あっ……いや、はずかしい……」 その高揚感から戻ってきた朱鷺恵さんが、少し息を乱しながら顔を赤く染めた。 「あっ……はあっ……志貴君」 それでも、朱鷺恵さんは気丈に笑って俺を見てくれる。 「来て……志貴君。私は、大丈夫だから……」
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