「来て……志貴君。私は、大丈夫だから……」 それは、求める言葉だった。 「朱鷺恵さん……無理しなくても、前だって……」 そう言われて、おかしくならない方が嘘だった。女性の方から言われて、引き下がる程俺は出来てなかった。 「じゃぁ……ゆっくりしますね……」 導かれるようにして、俺は体制を整え、朱鷺恵さんの後ろに膝立ちになった。 「行きます……」 朱鷺恵さんは、俺のその言葉に頷いてくれると、無理に強ばらないように浴槽の縁へ体を預けた。 ず…… ほんの僅か、本当にちょっとだけその中に沈み込ませた。 「ん……くっ」 それはまだ傘の部分が触れたくらいだというのに、朱鷺恵さんの強ばりはあまりに大きく、ちっとも中へと入っていかない。 「ん……はぁ、はぁ……んっ……」 呼吸をするのも難しそうに、縁に添えた手は握られている。そんな朱鷺恵さんは精一杯協力してくれているのは分かるのだが、矢張り指とは経が違う。異物を受け入れる感覚は強く、押し出してしまいたいという本能の動きは、進入を拒んでいた。 「朱鷺恵さん……」 辛そうにしている朱鷺恵さんを見て、心が少しだけ痛む。我が侭に約束してくれたこの人が、辛いままで終わらせたくない。 ゆっくり体を朱鷺恵さんの方に預けると、背中に密着するようにして体温と呼吸を伝え、同時に指は朱鷺恵さんの下半身をなぞり、花びらへと埋没させる。 「あっ、ううん……志貴、君……」 ふっと、力が緩んだ。 ず、ず、と少しずつ、でも着実に亀頭がアヌスの見えない壁を突き破り、進入していった。 「ん、んん……っ!」 やっと先端が全部埋まる。傘になっている一番大きな部分を、ようやく突き抜けて入った。 「はぁ、はぁ……」 そこで一度動きをやめると、朱鷺恵さんの顔をこちらに向かせて、キスをした。 「大丈夫ですか……」 唾液を交換する合間に、朱鷺恵さんはにこっと笑ってくれる。 「よかった……」 更に空いていた手を胸に伸ばして、そのまろみを味わい、先端の可愛い突起を撫で上げて、気持ちよくなってもらう。 「くうん……いいよ、もっと奥まで……」 体を微かに震わせながら答えてくれる朱鷺恵さんに激しく欲情しながら、冷静に落ち着いて、進入を再開した。 「あ、あああ……」 みっちりと埋まってゆくその奥は、未知の感覚。 「はあっ……はあ……はあ……、全部、入った、の?」 動きを止めて、じっと朱鷺恵さんの体に自分を併せ、ようやく願いは成就されていた。 「よかったぁ……初めてでも、ちゃんと出来たね……」 朱鷺恵さんは安心したように、喜びの笑顔を見せてくれた。 本当に根本まで、全てのペニスが朱鷺恵さんの後ろに入った。 「んっ……志貴君……」 とろとろに溶けた花びらと、強く締め付ける後ろと。 「志貴君……ゆっくりだけど、動いて良いから……気持ちよくなって……」 しばらく後、少し痛いと思えた締め付けも心地よい感覚として馴染んできた頃、朱鷺恵さんはゆっくりと俺の頬を撫でて微笑んだ。 「大丈夫? 痛くないですか?」 二人の初めてをお互いにあげた時を思い出して、ちょっとだけ可笑しく思ってしまう。 「はい、じゃぁ……」 最後に確認し合うと、俺はゆっくりと体を起こして、お尻に手を添えた。 「あ、あ、ああっ……」 朱鷺恵さんは首を下に向け、自分の中から俺が抜け落ちる感覚を味わっているようだった。 「あ……凄い……」 気持ちよさなのか、異物の放出感なのか。 全部抜いてしまうと、また最初からやり直さなければならないと思い、俺は亀頭が顔を覗くギリギリの所まで引き抜くと、また進んで朱鷺恵さんの中を進んだ。 「んっ、はぁ……ん……」 意図的に呼吸を合わせてくれているようで、朱鷺恵さんが一呼吸する間に、ペニスが半分程ゆっくりと沈み、もう一呼吸で最奥を突いた。 中は朱鷺恵さんの本当の処女地よりも酷く狭く、きっと幼い女の子を責めてしまっているような感触。 「いいよ……志貴君のが、わたしの中で動いて……」 その先の、『気持ちいい』という言葉を引き出したくて、俺は優しく動く。改めて花びらに手を添え、同時に膣内でこちらは少しかき回してみる。 「んっ……ああっ!」 朱鷺恵さんが、啼いた。 「……くっ」 俺は何度目かに引き抜いた時、傘の部分が入り口付近で凄く気持ちよくなる事を発見してしまっていた。 「んあっ!」 唐突に、朱鷺恵さんから甘く融けた声が聞こえた。 「朱鷺恵さん、気持ちいいの?」 俺はその反応に少し驚きつつも、嬉しさに聞いてしまっていた。 「わからない、分からないけど、今ジンッときて……ああっ」 少しだけ困惑した面持ち、それは初めてなのに感じてしまっている事への羞恥からか。 「そうなんだ……ここ、俺も物凄く気持ちいい……」 どん欲に、朱鷺恵さんがおねだりをしてきた。でも言われなくても、俺はそうするつもりだった。 「くっ……凄い、よ……」 呻きながら、俺は浅く挿入してお尻を撫でる。 「はあっ、はあ……ん、志貴君、志貴君……」 虚ろになって快感を奪い取り、次第に覚えてくる昂揚に、俺のこころは耐えられそうになかった。 「朱鷺恵さん……もう……」 俺は、ぐっと奥歯を噛み締める。射精がすぐそこまで近付いてきた。 「うん……っ、初めてだから……いいよ」 朱鷺恵さんは、そんな俺を許してくれる。 「中で……奥に出しても良いよ」 俺をいつも包み込もうとしてくれる、この人が好きだ。 「はあっ、はあああ……」 体重を全て預けて、呼吸を感じ取りながら突き込んで…… 「んあっ……熱い……」 朱鷺恵さんの奥で。 「んっ……出てる……たくさん……」 びゅくっ、びゅくっと震える先端から流れた精液は、朱鷺恵さんのお腹いっぱいに流れ込んだ。 「んっ……」 動きが止まり、息を整える深呼吸に変わると、朱鷺恵さんは愛おしそうにこちらを見つめてくれて 「いっぱい、出たね……気持ちよかった?」 辛かったはずなのに、なんて自然に笑顔を見せてくれた。 「はい……」 他に感想は言葉を付け足しても無意味と感じた。 しばらく余韻を味わっていたかったが、このままでいるのは朱鷺恵さんに負担になるし、なによりまた回復してしまったら、もっと味わいたいと思ってしまうだろう自分を恐れた。 「……抜きますね」 名残惜しさを僅かに抱えながら、俺はゆっくりと朱鷺恵さんの最奥からペニスをゆっくりと引き抜いた。 「んっ……ん……あっ……」 そして、抜け落ちる瞬間の朱鷺恵さんの少し気持ちよさそうな顔。苦しいばっかりで、きっと本当に気持ちよくはなれなかった筈。 「あ……」 どろっと、締まりかけていた入り口から、俺の白く濁った精液が流れ落ちていった。 「はあっ……はあっ……」 朱鷺恵さんはまだ口で息をするようにして、異物が抜けきった感覚に違和感を覚えているようだったが、その所為で見せられた光景に、くらくらとしている自分がいて。 「朱鷺恵さん、流れてる……」 俺は、自然に指を伸ばしてそこへ触れ、すぼまりを軽く開いていた。 「あ、やぁ……だめ……」 ようやく気付いた朱鷺恵さんにたしなめられてしまったが、最後に見た光景は、とにかく刺激的すぎていた。 「はぁ……」 湯船に二人、狭くもないのに意味もなく肩を寄せ合って、俺達は事後の疲れをほぐしていた。 「志貴君……やっぱり変態」 事が終わってから、朱鷺恵さんは俺の事をむーと睨め付けて、そんな言葉を繰り返していた。 「変態、ねえ……」 俺はそんな事を呟きながら、隣にいる朱鷺恵さんを見る。 「ねえ朱鷺恵さん……変態な俺って、嫌い?」 ふと、そんな言葉を投げかけてみる。 「うん、こうしたいくらい嫌いだよ」 朱鷺恵さんはそう言って、言葉とは正反対に笑い、肩に頭を預けてくれていた。 「ねえ……何でお風呂場?」 唐突に投げかけられた疑問に、朱鷺恵さんは俺の鼻をちょんと小突く。 「さっきも説明したけど、お尻はね、皮膚の弱い器官だし、暖めると良いのも本当、それと、元は排泄器官でしょ? 色々準備してあったけど、もしものことを思って……だよ」 その単語に俺が不思議な色を浮かべると、朱鷺恵さんは仕方ないなぁと言った顔をした。 「志貴君、あまり予習してなかったでしょ」 そう言うと、怒りながらも頬を染めて、鼻先をぐりぐりとやられてしまった。 「あ、あー」 言われて、何となくその言葉の意味を分かってしまった。 「……ごめん」 結局、またまた普段は思いっきり朱鷺恵さんにリードされっぱなしの俺。 「よろしい。反省したらきちんと復習しておいてね」 えっへんと先生ぶったポーズも、生まれたままの姿じゃ可愛いばっかり。 「じゃぁ、朱鷺恵さん」 俺の何気ない呼びかけに、朱鷺恵さんは相変わらずの表情。 「今、復習しましょう?」 これだ。 「……」 顔を真っ赤にして俯いている朱鷺恵さんに、ちょっとたまらなくなる。 唇が離れると、上目遣いでこっちを見上げてくる。 「……ここで?」 そんなやりとりは、必死に笑いを堪えそうになる自分との戦いだった。 「でも……まずは、朱鷺恵さんを悦ばせないとね。今日はまだ、えっちな顔を全然見てないから」 そう言って、朱鷺恵さんの首筋に噛み付くように顔を寄せ、舌を這わせながら、今日はどんな事をしてあげようかと、リードを奪った俺は考えていた。
〜後書き〜 中身見てちょっと驚いたかも知れませんが、朱鷺恵さんとの初めての後ろ体験のお話です。 まず、宙出版から出ている「月姫ごちゃまぜ!」というアンソロジーで、僕の朱鷺恵さん本が紹介され、恐らくイメージも定着してるだろうからと言うのもあります。 もう、かなり本来の像を逸脱し、自分の中で勝手に「理想のお姉さんキャラ」として動いている朱鷺恵さんですが、まぁそのうち、もうちょっとエピソードを設けたいな……と思っております。 |