「ん、はぁっ……」

 ようやく、朱鷺恵の身体が動く。
 ぬぷっと、その中から少しだけ萎えた志貴のペニスが顔を覗かせると、追うようにしてぼたりぼたりと精液がこぼれ落ちた。

「いっぱい出たね、志貴君。私の中で、ちゃあんといけたね」

 凄く嬉しそうに微笑む朱鷺恵は、まるで憑き物が取れたかのように穏やかなそれに戻っていた。
 その笑顔を見つめながら、志貴は、一子は放心していた。

「っ……と、あれ、二人ともどうしたの?」

 志貴の横に座り直すと、まだ正気に戻ってこない二人を不思議がって朱鷺恵が声をかけた。

「いや……朱鷺恵、お前が……」

 一子はその先を言いよどんで口を紡ぐ。

「朱鷺恵さん……」

 志貴もその変わり様に驚きながらも、先程までの朱鷺恵の痴態を思い出し、どう言って良いのか分からない風だった。
 しかし、朱鷺恵はあっけらかんとした表情で

「え、まさかショタ趣味なんて言うつもり? 演技よ、演技」

 とあっさりと言ってのけた。

「あ……?」
「え……?」

 流石にこれには二人ともぽかんと口を開けたまま絶句した。

「いやねぇ。確かに役を作っている内に凄く興奮したし、私もそんな気があるのかなーって思ったけど……最初はおねーさまに成りきるつもりだったんだから……」

 流石に少しだけ恥ずかしがって朱鷺恵が否定するが、二人にとって見れば迫真どころか素の行動かと思っていたわけで、すっかり朱鷺恵の思うままにやられていたわけだ。

「と、と、朱鷺恵さん!?」

 先に正気に戻ったのは志貴だった。少しだけ驚きながらも安堵の表情を浮かべている。

「びっくりしましたよ……まさか、本気なのかと……」

 胸をなで下ろすような表情を見せる志貴に、僅かばかり朱鷺恵はむーっいう表情を向ける。

「えー、それじゃ私がこんなだったらイヤだったの? 志貴君、私は志貴君に初めてをあげたのに……ひどい」

 くすんと寂しそうな姿をする朱鷺恵に志貴は驚き慌てて手を振る。

「ち、違います! そう言う訳じゃなくって……」
「ふふっ、大丈夫、わかってるよ。でも、志貴君も気持ちよさそうでまんざらでもなかったみたいだし、これからはおねーさんになろうかなっ?」

 志貴の狼狽をよそに、朱鷺恵はあっさりと笑って答えていた。その笑顔にほっと胸をなで下ろし、気恥ずかしげにぽりぽりと頬を掻く志貴。

「うん……たまには、いいかも……」

 本音をちょっぴり漏らすと、朱鷺恵と見つめ合ってふふっと笑っていた。
 と……

「朱鷺恵……」

 二人のいい雰囲気の横で、わなわなと震える人物が一人。

「あ……」

 二人が視線をそちらに向けると、複雑な表情で朱鷺恵を見ている一子がそこにいた。

「朱鷺恵……騙したな」

 一子は先程自分が思っていた事を否定され、それを見抜けなかった気恥ずかしさと朱鷺恵への複雑な思いに、ごっちゃになった感情をあらわにしかけていた。
 まずい、このままだと……と志貴がこの場を何とかしなければと思ったとき

「一子ちゃん、今度は私が協力してあげるから、ね?」

 と、朱鷺恵があっさりと一子の後ろに回って、志貴の方にポンと身体を押した。

「わわっ!」

 突然の事に一子は反応できず、押されるがままに志貴に抱きつく格好になった。

「ちょ、朱鷺恵、話をすり替えてるぞ……!」
「いいのいいの、今度は私が二人のエッチをティーチャーしてあげる」

 悪気のかけらも見せず、朱鷺恵は押し倒したままの一子の後ろから覆い被さると、一子のふくよかな双房に手を這わせて、やわやわと揉み始めた。