ほうき少女 まじかるアンバー

1st Night「登場!まじかるアンバー!?」





「ん……んー」
 俺は目を覚まして、いつもとは違う状況に置かれていることに気付いた。
「あれ……翡翠?」
 眼鏡をかけながら、いつもそこにいるはずの少女の姿を探す。
「おっかしいなぁ……」
 時計を見ると、ちょうどいつもの起床時間だ。
「ま、珍しく寝坊してるのかな?」
 翡翠に限ってそんなことはないだろうと思いながら、ベッドから立ち上がる。
 まだ閉められたままのカーテンを開くと、眩しい朝日が眠い目に襲いかかった。
「……ああ、いい天気だ」
 窓を開け、目を細めながら雲一つない空をぼんやりと眺める。

 平和だなぁ。
 あの頃の日々がまるで嘘のように毎日が平穏に過ぎていく。
 それがかえって物足りなくて。
 そんな風に思えるのも、過ぎ去った日々が今となってはいい思い出となっているからだろうか。

「……死にそうな思い、一杯したのにな」
 苦笑しながら、ゆっくり伸びをする。
「うーん、今日も一日がんばりますか!」
 とりあえず、今日着る服を調達しようと思った瞬間だった。

 キラリ

「……ん?」

 視界の端に光るものを見たような気がして、俺は振り返る動きを止めた。
 改めてしっかりと窓の外を見るが、先程の光は見えない。

「……気のせいかな?」
 多分、窓ガラスか眼鏡のレンズに朝日が反射したのだろう。そう合点しようとした時。

 キラリ

 今度ははっきりと確認した。
 視界の中央、空の真ん中で光る物体。
「……何だろ」
 気になった以上、その正体を見極めたいところだ。俺は窓から身を乗り出し、目を凝らした。

 何もないはずの空。

 なのに、そこには高速戦闘機の通過した後のような飛行機雲。
 そして……
「……え?」
 今、通り過ぎた、キラーンって……?

「…………ぃぇーーーーーーーーーー」
 遅れて聞こえたのは、声?
そう思う間もなく、その姿は一気にやってきた。

「……キャッホーーーーーーーー!」
 真正面でもう一度キラリと光ったと思ったら、目にも留まらぬ速さでこちら目掛け突進してくる……何だ!?

「うわぁぁぁぁ!!」
 俺は反射的に身の危険を感じ、窓から逃げ出す。と同時に

 ギャギャギャギャギャー!

 と、急ブレーキをかけて部屋の中に飛び込んできた何か。
 勢いで窓はバタバタと暴れ、カーテンは勢いよく翻っている。

「ひぃ……」
 ベッドの陰に隠れ、事なきを得た俺は恐る恐る部屋の中央を見やる。
 と、そこには何故かほうき……に跨った人間。
「みーつけたー!」
 と、俺を発見すると嬉しそうにほうきから飛び降りる。

 その姿はある種異常だ。
 目深のフードの付いたマントを羽織り、その内には……割烹着。
 それも、普段見慣れてる「あれ」だ。

「ちょ……ちょっと、琥珀さん……」
 なにやってんですか、と苦笑して話しかけようとしたが
「私は琥珀さんじゃぁありません!」
 と、ほうきの柄の先をビシッと突きつけられて反論されてしまう。
「と、言われても……」
 俺はその姿には他に考えられる人物が見あたらない。フードに隠れた瞳はイヤに輝いていて、それこそ楽しんでる時の琥珀さんの瞳そっくりだ。
「四の五の言わない!痛い目見ますよ〜」
 そう言われると、それが琥珀さんでなくても恐怖を抱いてしまう。寧ろ琥珀さんであった方が痛い目……というか死に目を見そうだが。
「は、はい……」
 萎縮した俺を見て、その琥珀さん似の少女は満足そうに頷く。

「よろしい」
 そこでようやく、彼女は居住まいを正す。
「申し遅れました、私異世界から来ました……」
 と、決めごとのようにクルリと回転し、ポーズを決めると

「ほうき少女、まじかるアンバー!!」
 と、ほうき片手にイヤに陽気に叫んだ。

「あ……あの……琥珀さん?」
 俺はそのノリに全く付いていけず、ただ呆然とするのみ。
「もう。だから〜、琥珀じゃなくてまじかるアンバーと呼びなさい!」
 またまた正すように琥珀さん……もとい、まじかるアンバーは注意する。面倒だから俺は心の中では琥珀さんだと思う事にした。

「……で、まじかるアンバー。何しに来たの?」
 俺を興味深げに見る琥珀さんは、ビシッとほうきを俺の目の前に突き立てる。
「あなた、名前は?」
 目の前に先端を突きつけられ、その有無を言わさぬ迫力に思わず俺が及び腰になる。
「と……遠野志貴」
 恐る恐る、と言うべき口調で俺が答えると、代わりに彼女が嬉しそうに
「ビンゴ!」
 と叫んだ。
「……へ?」
 キョトンとする俺を無視して、琥珀さんはガッツポーズを決める。
「遂に見つけたわ、セヴンスナイト!」
 琥珀さんはそう言うと、ほうきを床にほっぽって俺に飛びつく。
「ちょ……ちょっと」
 俺はそのまま背後のベッドに押し倒されるような格好になる。
「あなたが私のマスターになるのよ。さ、契約しましょ」
 そう言うが早いか、琥珀さんは俺の唇を奪った。

「……!」

 俺は言葉を返す事も出来ない。唇が割られ、舌が滑り込んでくる。
 ……気持ちいい。
 クチュクチュと、俺の口内を唾液にまみれながら柔らかい舌が蹂躙する。送られる甘い唾液が脳髄から俺を溶かそうとするかの如く、優しく俺に絡み付いてくる。
 気付けば琥珀さんのペースに乗せられて、激しく舌を絡ませ合っていた。いつもの琥珀さん以上に情熱的に、熱いキスを繰り返してしまう。

「あ……」
 唇を離すと、激しいキスにフードが外れて、まじかるアンバーの顔が現れる。
 ……どっからどう見ても琥珀さんなのだけれども、キュピーンと輝く瞳だけはいつものそれとは全然違って、やっぱり琥珀さんじゃないのかとも思ってしまう。
 その姿を見つめていると
「ふふっ……契約しましょうね〜」
 琥珀さんは嬉しそうに俺の下半身に手をやる。
「わぁ、もうおっきい、流石ね」
 そのままさわさわと股間を撫でられて、俺は思わず反応してしまう。
「ふふふ……」
 妖悦な笑みを浮かべて、琥珀さんはズボンのジッパーを口で下ろす。
「ちょ、ちょっと!?」
 うろたえる間もなく、俺の元気なイチモツが露わにされてしまう。
「いただきまーす」
 そう言うが早いか、琥珀さんは俺のモノを愛おしげに口に含んだ。

「うっ……」
 その感触は、確かに琥珀さんのものに違いがなかった。
 口の中がまるで膣のように多重の蠢きを見せ、舌と口腔と歯で全体をじゅるりと愛撫される。
 俺の足元に跪き、激しく頭を上下させる姿が何ともいやらしい。思わずその頭に手を添えて、自分から上下運動に抑揚を付けてしまう。
「んっ……マスターもその気になってきましたね……ん……」
 唾液を絡めて全体をくわえ込んだと思ったら、今度は鈴口に唇を合わせて吸い取ろうとするかのような愛撫。そうして口をすぼませながら、バキュームのように強く吸い取る動きを見せる。
 その巧みなテクニックに、早くも俺は高まりを覚えてしまう。
「ん……いいよ……」
 突然の展開にもつい、そんな事を口にしてしまう。

「あはっ、もう大丈夫みたいですね」
 そう言って俺のモノから口を離した琥珀さんが、そのまま俺にのしかかる。
 そうして、割烹着の裾を僅かにはだけさせると、その奧にあるであろう淫靡な花びらを俺のモノにあてがう。

 トロリ

 瞬間、俺の剥き出しの亀頭に、熱い粘液が垂れ落ちた。
「あっ……」
 俺が思わずそれに反応すると
「あはっ、マスターの銜えてるだけで、私も興奮しちゃいました」
 目の前の琥珀さんが、顔を赤らめながらそう告白する。
 その可愛い笑顔に、俺のココロは沸騰しそうになる。
 が、それより早く

 ずぶっ……

 腰から下が溶け去るような、一気の甘い感覚に俺は飛ばされた。
「あああっ!」
 包み込まれただけで、達してしてしまいそうな感覚。
 あまりに柔らかい、その膣。
 口も素晴らしかったが、それとはまた違う圧倒的な快感。
「ああん……マスターの、大きい……」
 目の前の琥珀さんも、瞳を潤ませながらその俺の感触に溺れていた。
「動きますよ、マスター……」
 そう言って、琥珀さんがゆっくりと動き出す。

 じゅぷ……じゅく……

 馬乗りになった琥珀さんの腰が上下されるたびに、俺を強烈な快感が襲う。
 まるで膣に別のイキモノがいるかのように、貪欲に俺のモノを貪り、吸い尽くそうとする。全ての襞が俺のペニスに絡み付き、その快感をこそげ取るようにして撫でさすり続けている。

「ぐ……あ……」
 その快感に、一気に射精してしまいそうになるのをこらえる。女性と交わる以上は自分だけ先に終わるのは許せないポリシーがあったからだ。
 目を瞑り、快感に抗う。

 だが、そんな俺を見て不満そうな琥珀さんの声がした。
「もう、頑張りますねー。早く契約しましょうよ」
 そう言うと、余計締め付ける……と思ったが、急に動きが緩慢になる。
「……?」
 助かったか?
 俺は薄目を開け、その姿を確認しようとした時だった。

「あはっ、出しちゃえ」
 と、ぎゅうと今まで以上の強烈な締め付けが俺を襲った。

「そ、それじゃ琥珀さんとまるきり同じじゃ……うっ!」
 それには油断していた俺は耐えられるわけもなく、あっさりと陥落してしまった。

 どく、どくっ……

 したたかに、琥珀さんの膣内に射精してしまう。
「あ……マスター」
 その激しい射出を感じそう琥珀さんが呟くと、瞳を閉じた。
「我、汝との契約、ここに結ぶ……まじかるアンバー!」
 そう叫ぶと、二人を繋げる部分から光が溢れ出した。
「ああっ……イッちゃうー!」
 その強烈な光と達成感に、琥珀さんも絶頂へと登り詰める。
「あっ、あはぁあん!!」
 更にぎゅうと締め付けたその膣に、俺は訳も分からず全ての精を流し込んでいた……

「ああ……」
 ずるりと、琥珀さんが事の終わったペニスを膣から抜き取る。
「うっ」
 まだ敏感なそれは、抜け落ちる瞬間にも快感を与えられた。ビクッと震え、精液の雫が鈴口からにじみ出る。
 そうして俺はようやく解放され、意識が蘇る。

「いきなり何なんだよ……琥珀さん」
 気持ちよかったからそれはそれで構わないが、やはり突然の出来事に俺はその真意を尋ねようとする。
 が、琥珀さんは相変わらず苦笑しながら
「もう、まじかるアンバーですよ、マスタァ」
 と、甘ったるい声をかけてくる。
「分かったよ、アンバー……って、何故にマスター?」

 と、ようやく俺はその言葉の意味に疑問を抱いた。
 アンバー……やっぱり琥珀さんにしておこう……は、頬を真っ赤に染めてイヤイヤとしながら
「イヤですよマスター。契約して下さったんですからマスターはマスターです」
 恥ずかしそうに、俺の半立ちのモノをピンとつつく。
「くっ……って、そっちが無理矢理やったんじゃ……」
 と反論しようにも、琥珀さんは聞いてくれない。
「これで、マスターは私のモノ。きゃは!」
 普段の琥珀さんにはあるまじきノリで、そうはしゃぐ。
「お〜い、琥珀さん……」
 置いてきぼりの俺は、完全に蚊帳の外だ。
「もう……でも、マスターがそうおっしゃるのですから、仮の姿は琥珀という名前にしましょう、ええ」
 と、なんだか一人合点した琥珀さんが、ようやく俺を見る。

「マスター、これからは琥珀とお呼び下さい」
 琥珀さんは、ベッドの上で正座し、三つ指を立て深々とお辞儀をする。そうして上げた顔には、満面の笑みがあった。その吸い寄せられそうな瞳に、正直ドキッとする。
「あ……ああ」
 ゴクリと唾を飲み込み、そう答えるのが精一杯だった。

「……で琥珀さん、契約って何なの?」
 俺はようやく、落ち着いて話をする環境に立った。
 服をパジャマから普段着に着替え、ベッドを降り椅子に腰掛けて話を聞く。
 琥珀さんは、そんな俺の前でフードを外し、てきぱきと状況を説明してくれる。

「今、魔法界では少し厄介な事が起こっています。覇権を争うようにして、いくつかの魔女が抗争を行っているのです」
 部屋を歩き回りながら、何だか雲の上の話をしているようだ。
「私もその一人です。で、この抗争に決着を付けるには、マスターを見つけて協力して貰わないといけないのです」
 そこで琥珀さんが、ビシッと俺を指さす。
「そこで、退魔の血筋の唯一の生き残り、Seventh Nightの血を引くあなたが、最高のマスターとなりうるのです!」
「はぁ……」
 セヴンスナイトって……確かに昔の名前は七夜だけど、そう言う事を解決出来そうなのは「Knight(騎士)」の方じゃないの?そう思ったがあえて口には出さず、続きを聞く。

「で、私はその姿を探しにやってきて……今は遠野志貴を名乗るマスターと巡り会ったのでした……」
 そこで先程のコトを思い出したか、琥珀さんは赤くなる。
「契約は、体液の交換で成り立ちます。本当は唾液や血液でも良いのですけど、やっぱり一番強力なのは……きゃは!」
 いやですよー、と俺をからかうようにして琥珀さんが恥ずかしがる。
「いや……それは一方的に琥珀さんが……」
 言うが、ぴしっと頭を叩かれてしまう。
「マスター、激しいじゃないですか。私もつい本気でイッちゃいましたよ……」
 そう言われると、男としては悪い気がしない。
 とりあえず、納得する事にした。

「で、俺はどうしたらいいの?」
 これからのコトについて訪ねると、琥珀さんは真剣な顔になる。
「はい。これから、他の魔女達を倒さねばなりません。そのためにはマスター、あなたの力が必要です」
「俺の……力?」
 正直、こんな俺に力なんてあるのか?いささか疑問だ。
「そうです、これから私と行動を共にして頂いて……」
 そう、琥珀さんが続けようとした時だった。

 バタン!

 廊下のドアが激しく開けられて、何かが飛び込んできた。