分かり合えて、俺達は変われたと思う。
 あの日はいつまでも、お互いの愛を確かめ合っていた。
 絶対に離れてしまう事などないと分かっているからこそ、たくさん愛して。
 朱鷺恵さんの匂いを俺に。
 俺の匂いを朱鷺恵さんに。
 いっぱいいっぱい染み付けて、夜を明かしていた。

 きっと、お互いがちょっとだけ焦っていたのかなと反省して、俺達は話し合った。
 無理に周りに合わせなくても良い、俺は結局元のクラスに戻して、出来るところからやり直す事にした。

 それと、程良い息抜きは、やっぱり必要だねって、ふたりで笑った。
 あれからは勉強会は朱鷺恵さんの部屋で。そのまま俺達は体を絡め合わせながら夜を一緒に過ごした。
 程良い、なんて程度じゃないかも知れないけれど、朝、自然に目が覚めると裸で隣で眠っている朱鷺恵さんを何度か見られて、この上ない幸せだった。
 今までだったら自主的に起きる事なんて全くなかったのに、と朱鷺恵さんに顔を真っ赤にされて怒られながらも、俺達は本当に全てがクリアになっていた。

 勉強も、つかえが下りてからは順調だった。自分のスタンスと、朱鷺恵さんの惜しみない協力で、しっかりと成果は上げる事が出来た。

 

「凄い! Bランクだよ〜」

 最後の模試の結果を見て、朱鷺恵さんが手を叩いて自分の時のように喜んでくれた。
 最初の時には余裕でDだった学校も、遂にここまで来るようになった。

「これも全部、朱鷺恵さんのお陰です、ありがとうございます」
「やだ……志貴君ががんばったからだよ……私はちょっと手伝っただけ……」
「そんな事ありません、何もかも……そう、全部朱鷺恵さんが……」

 謙遜する朱鷺恵さんに、俺は言葉を投げかけ……少しだけ思い出していた。
 ここに来た時から、一杯学んだ。
 学業も、そして恋愛も……
 離しちゃ、いけない。
 離さない。
 それを教えてくれたのは、みんな、朱鷺恵さんだった。

 後はこれからの自分の努力次第、朱鷺恵さんの思いを無駄にしてはいけないと、心の中で強く誓ったのだった。

「ふ〜ん。あ……」

 と、成績表を眺めながら朱鷺恵さんは気付いてしまったようだった。
 ちょっとビックリしながら、ある一点を指さしていた。

「私の……学校……」

 志望校の欄、一番最後。
 そこには、自らの意志で選んだ朱鷺恵さんの学校の名前があった。

「……ほら、俺、こんなだから、体の事とか興味あるし……」

 俺は自分でそうしたとはいえ、照れながら理由を話した。

「……それに、一緒の学校に通えたら、いつでも一緒にいられるかな……と思って……迷惑ですか?」

 朱鷺恵さんは、ひとしきり驚いた後、それから大きく首を横に振った。屈託のない笑顔で

「もうっ……」

 それだけで言葉が続かないのか、じっと俯いてしまった。
 俺はそんな朱鷺恵さんが愛しい。
 愛しくて、髪に隠れた額をそっと撫で上げて、それから瞳を覗き込んだ。
 触れ合う距離。ふたりは

「ふふっ……」
「あはは……」

 笑った。
 幸せ一杯で、他に何も考えられなかった。

「ん〜、でも、この成績じゃぁ私の後輩にはなれないぞ〜」

 と指さすその先には、きっちりと「D」の文字が浮かんでいた。


 









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