翌日、俺は朱鷺恵さんに目を合わせられなかった。 「ただいま……」 いつもより遅い帰り。 「どうしたの? 風邪でも引いちゃった?」 目も合わせず、暗い表情のままで俺が答える。 「そう……朝ご飯も食べなかったからお腹空いてるでしょ? ご飯にしましょう」 朱鷺恵さんはそんな俺を後ろから押して、食卓に座らせた。 「志貴君……勉強が解らないの?」 片付けを終えた朱鷺恵さんが、心配そうに俺の部屋を訪れる。 「……」 言葉が出ない。 バッと、目を伏せる俺。 そんな俺を見て、朱鷺恵さんはなんて思うだろう。 しかし…… 「ふふふっ……」 朱鷺恵さんは、笑っていた。 俺は驚愕を覚えて朱鷺恵さんを見る。 俺の初めてを奪った、あの瞳だった。 「志貴君……昨日の夜、私の部屋の前で何をしてたの?」 その質問は、俺を奈落の底に突き落とすのに十分だった。 「私も少しだけ欲求不満だったから、罠を仕掛けてみたんだけど、ちょっとビックリしちゃった……」 ……いや、騙されていたのか。 「志貴君……我慢はいけないと思うの。私も……」 そう言うと、朱鷺恵さんは後ずさる俺を追いつめるように、机の向こうからこちらへとやってきた。 「あれから志貴君……自分の事ばっかりで、ぜんぜん愛してくれないんだもの……無理してるって、顔に出ているのに……」 朱鷺恵さんの言葉は、妖悦に俺を誘うのに、俺はそれに恐怖まで感じていた。 「我慢できなかったら、私だったらいつでもいいのに……」 と、朱鷺恵さんは潤んだ瞳で俺の股間に手を置いた。 「ほら……楽にしてあげる」 小悪魔のような瞳が、俺を射抜く。 「ふふっ。久しぶりだから、興奮してるんだね」 と、朱鷺恵さんは両手を使って俺を扱き出した。 「凄い……まだ大きくなってる」 それにうっとりとするように、朱鷺恵さんは上下運動を続けながら亀頭に指を這わせて先走りを掬い取った。 「私も……もう準備が出来てるから……いくよ」 解らない論理が、俺を支配した。 朱鷺恵さんは俺に跨ると、スカートの中をさらけ出した。 「ほら……見て、志貴君のが欲しくて、弄ってるだけでこんなに……」 と、クロッチ部を横にずらすと、朱鷺恵さんのそこが露わになる。 「見られるのがこんなに興奮するなんて、思わなかった。でも、やっぱり志貴君のがいい……」 と、ゆっくりと腰を落とし、朱鷺恵さんの膣が俺を包み込んだ。 「ああはぁっ……いい……っ」 朱鷺恵さんはうっとりと俺を見下ろし、そのまま腰を使い出した。 ずっちゅ、ずっちゅ 何を。 ショック状態で動けない俺を笑うかのように、朱鷺恵さんは積極的に俺の上で動いて、快楽を貪っていた。 「あっ……ああっ! 志貴君のがいっぱい……私に入ってる……」 妖しい熱に、うなされている。 「あっ……あ……朱鷺恵さん……っ!」 膣の締め付けは今まで以上に激しく、朱鷺恵さんが性急に俺を求めていると解らせていた。 ダメだ、こんなの 絶望を感じるフラッシュバック。 「あっ……寂しいよ、志貴君……もっと、私だけを見て……」 その言葉が、深く突き刺さる。 だというのに、体は非情な程正直だった。 「あっ……志貴君、もうだめ……」 遂に、朱鷺恵さんまでも最後を迎えつつあるのか。 「ああっ……だめ……だめ……志貴君……来て……」 俺は持てる意識を全て使って、この射精感に耐えなくてはならなかった。 「ほら……我慢しないで……私の中で出して……っ!」 自分も快感で気をやりそうになりながらも、俺の乳首を爪で引っ掻き、陰嚢を優しく揉み、そして離した。 「ああっ……ああっ!」 瞬間、俺は遂に墜ちていた。 ドクン! ドクン! 俺は、とうとう朱鷺恵さんの中に欲望の塊を発射してしまっていた。 「ああ……志貴君のが中に……」 朱鷺恵さんが、それに合わせて硬直する。 ……酷い絶望感 ……ポツ、ポツ 二つの雫が、俺の頬を濡らした。 「えっ……?」 俺は一気に冷静になり、見上げると…… 泣いていた。 どうして…… わからなかった。 「……志貴君……ゴメンね……ゴメンね……」 朱鷺恵さんはただ、ゴメンねを繰り返して嗚咽するばかりだった。 「ゴメンね……寂しかったんだよ……」 朱鷺恵さんは、自分の中からそれをずるっと引き抜くと、そのまま俺の股間に顔を埋め、ふたりの愛液でドロドロになった俺のモノを、口で綺麗にしてくれていた。 ワカラナイ 衝撃に萎えきってしまっていたそれを、朱鷺恵さんは残らず舐め取っている。 「……」 それが綺麗になったと分かると、朱鷺恵さんは俺のモノから口を離した。 「志貴君……ごめんなさい……」 朱鷺恵さんは最後にそう呟くと、逃げるように俺の部屋から立ち去っていた。 「……あ、ああああ」 大分経ってから、俺は放心したように頭を抱えた。 知らぬ間に、俺は……俺は そうと理解するのには、また更に長い時間が必要だった。
|