/弓塚さつき


 カツカツ……
 板書するチョークの音以外、教室にはいっさいの音が失われていた。
「……」
 俺はそんな緊張感とも言える状況にものともせず、ただ意味もなく窓の外の景色を眺めていた。
 一時間目から毎日こうじゃ、なんだか気が滅入る時もあるさ。そう自分に苦笑いしながら校庭に目をやっていると

 カツ……カチャン

 突然沈黙を破るようにして違う音が耳に飛び込んできた。
「ん……」
 俺はゆっくり教室の景色に戻ると、その音の方向に目をやった。

 落としたペンを拾い、俺に目配せする人物が写る。

 その少し思い詰めたような笑顔が、物凄く可愛いと思える。
 そんなふたりだけの合図に、俺は一呼吸してから呟いた。

「先生、ちょっと気分が悪いんですけど……」

 俺のいつもの言葉に、先生も疑うことなく心配する。
「遠野君ね。わかりました、保健室で休んでもいいわよ」
「すみません……」
 少し演技臭いことを承知でそういうと、先生は心配そうにしてくれた。
「じゃぁ、保険委員の方、遠野君を連れて行ってあげて」

「はい」

 凛とした声と共に、一人の人物が立ち上がった。それを見て先生も頼もしそうに微笑む。

「よろしくね、弓塚さん」

 

 

「遠野君、大丈夫?」
 俺を支えてくれながら、俺と弓塚はふたり静かな廊下を歩く。

 いや、実際は腕を貸す、というか腕を組んでいるという表現が正しいのだろうが。

 しかし、病人に甲斐甲斐しく手を貸す保険委員という図式であれば、俺達の行動もなんら不思議ではなかった。
「ああ、もちろん大丈夫だよ」
 俺は弓塚に笑いかけると、屈託のない笑顔で弓塚は返してくれる。

 授業を抜け出すサインは、ペンを落とす事。
 ふたりだけの秘密のサインを交わし保健室まで歩くこの道のりが、弓塚は物凄く心地よい時間だって言っている。
 俺も、こうやってサボタージュして男女ふたりで歩くのは悪くないと思う。

「ほら、ついちゃったよ」
 保健室のドアをノックするが、誰もいないことははじめから知っていた。
 がらりと戸を開け、消毒液の臭いがする部屋の中に潜り込む。
 クリーム色のカーテンがかけられて直射日光を遮るその部屋は、ほんのりと薄暗くて心が何故か落ち着く空間だ。

 部屋の奥、更にカーテンで仕切られた区画にベッドがある。そのしきりを開けて俺はベッドに上がり込んだ。
「ふー」
 俺は学ランを脱いで弓塚に渡す。それをベッド脇のハンガーにかける為に俺に背を向けた。そうして形を整えてかけ終えると、弓塚はじっとしていたが、やがて

「……ふふっ」

 堪らず、笑い出していた。

「なんだよ、病人に対して笑うなんて失礼だな」
 俺はそう言うが、こちらも何だかおかしくなって。振り返る弓塚を見つめる。

「……ううふ」
「ははっ……」

 ふたり見つめ合って、しばらく笑っていた。

「遠野君、私達っていけない生徒だね」
 弓塚は笑いながらそう言うと、一歩俺に近付いてベッドの脇に立つ。
「ああ……まさかアバンチュールだなんて思わないだろうな」
 にっこりと微笑んだその柔らかそうな頬に、俺はゆっくりと手を伸ばした。
「ふふ、遠野君ったら」
 そう言って、俺の手を取って自分の頬を擦りつける弓塚。

 かわいい。

 心からそう思える仕草で、目を閉じる弓塚をぎゅっと抱き締めたくなる。
 でも、俺は病人と言うことになってるから、そんな事はしない。

「遠野君、熱はない?」
 そうお医者さんごっこのように話す弓塚は、看護婦さんになったらすごく似合うだろうなぁ、と思ってしまう。
「ちょっと、火照ってるかな?」
 俺はわざとらしくそう言うと、
「そう、じゃぁ看てあげるね」
 そう言って、弓塚はベッドに片膝を置き、おでこに手を当てる為に上がろうとする。

 その、スカートから除く太股が目に飛び込んでくる。雪のように真っ白で、触れたら物凄く柔らかそうなそれに、意識が飛ばされそうになる。

 そして……その奥に、やっぱり。

「弓塚……」
 俺はそっと右手を伸ばす。その太股の……奥に
「何?きゃっ!」
 弓塚はビクッと物凄く敏感に反応すると、力を失って俺に体を預けてしまった。

「ほら……火照ってるね」
 俺は軽くそこをさすってから右手を抜く。

 指には、既にとろとろになった弓塚の愛液がまとわりつき、早くも濡れていた。
 太股を見た時僅かに見えた光の筋は、弓塚の我慢できない証だったのだ。

「やぁっ……だって……」
 弓塚が俺を見ると、かあっとなってうつむく。

「昨日のあの後からも、志貴君を見てると、あそこがすっごく熱くなってきちゃって……」

 弓塚は恥ずかしそうに告白する。
 ふたり、昨日もここで逢瀬を交わして。
 それからずっと弓塚はこうしたかったのか

「だからって、午前も更に1限はちょっと早くなかったか?」
 俺は苦笑する。流石に毎日こんなだと、ちょっと怪しまれる可能性も危惧しないとならない。

「だって、だって……」
 恥ずかしがって続きを言えない弓塚に、俺は頭を撫でてあげる。
「……夜に自分でしても、火照りが収まらなかったから……」
 観念して、弓塚がそう言ってくれたのが嬉しくて、俺は弓塚の体を起こすと、キスしてあげた。

「あっ……」
 本当に嬉しそうに、目をつぶって弓塚がその感触を味わっている。
 凄く柔らかくて、融けてしまいそうな弓塚の唇。
 押しつけられただけで狂いそうなそれを、愛おしげに舌でなぞる。

「んっ……志貴君」
 たまらず弓塚の舌が俺の唇を割って入り込んでくる。
 ぴちゃぴちゃと互いを味わいながら、俺はさらなる刺激を与え始める。
 先程のように指を太股の間に滑り込ませると、更にびしょびしょになっていた。パンティの上からでもじわりと愛液が染み出し、弓塚の内股と俺の指とをしとどに濡らしている。

「ああっ……」
 軽く触れただけで、弓塚は陥落してしまう。
 パンティの脇から指を滑り込ませて直接触ると
「んんっ!志貴君……!!」
 びくびくと震えながら、弓塚が反り返る。

 指を優しく前後させると、くちゅくちゅと淫靡な音色が響き渡る。
 既に弓塚のそこは洪水のように愛液を湧かせ、下着はその役目をとっくに失っていた。

「志貴君……私、もうダメ……」
 潤む瞳で、弓塚が俺に懇願する。
「ああ、おいで……」
 導くと、弓塚は下着を取り去り、俺の上に跨った。

 先程の愛撫の音は俺をも興奮させていて、弓塚がジッパーを降ろしてトランクスをずらすと、ペニスが大きく反り立って現れた。

「ああ……志貴君の、凄い……」
 それに魅了された弓塚が、熱いため息をこぼす。
「いくよ……」
 そうして短いスカートの間から愛液を滴らせながら、弓塚がゆっくりと俺の中心に向かって腰を落とした。

「ああっ……」
 繋がった瞬間、弓塚がひとつ声を漏らして動きが止まる。
「中に……私の中に入ってる……」
 そう実感を喜びとして覚え、弓塚の膣は優しく俺を締めだした。
「動くね……」
 積極的に弓塚は腰を使い出す。
 出入りする度に、弓塚の中から愛液が溢れ出して俺の股間に滴り落ちる。
「あっ……志貴君……いいっ……」
 嬉しそうに俺を貪る姿が、ひどく淫靡でたまらない。

 普段は清楚なアイドルのように皆の前で振る舞う弓塚が、俺の前でだけ見せてくれる貌。
 そのギャップに陶酔し、俺も動きに合わせてペニスを奥に送り込む。

 弓塚の膣は熱く、柔らかい。我慢できなかったモノをようやく挿入され、歓喜にむせぶ内部は、襞が別の生き物になったかのように俺を包む。くにゅくにゅと俺を一時も離そうとしない中の感触が、まるで弓塚の心そのものを表しているようで。
 たまらない愛おしさは、俺の腰の動きに反映される。腰を突き上げ、子宮口に直撃させる。

「あはぁっ!」
 その最奥に届いた瞬間、弓塚が大きく反り返る。その突き出されるようにした胸に触れたくて、俺が手を伸ばした。

「ダメ……胸はダメだよ」

 快感に溺れながら、何とか薄目を開けて弓塚がいつものようにそれを拒む。
「服……シワになっちゃうから……」

 弓塚はいつも学校だと胸を触らせてくれない。教室に戻った時、俺はともかく、弓塚の服が乱れていることを怪しむ人間がいて、この秘密を知られてしまうのを恐れているらからだ。

「ああ……」
 分かっていた。でも、弓塚の動きに合わせて服の上からでもふるふると上下するふくよかなそれに、触れたくて仕方がなかった。

「もったいないなぁ……こんなに可愛いのに……」
 俺はその黄色いベストの上から、乳首の位置を探るようにしてさわりと撫でた。その瞬間
「あああっ!!」
 ビクンと、弓塚が激しく反応する。と同時に、膣の締め付けが一段ときつくなった。

「ん……?」
 俺は一瞬びっくりしたが、すぐにそれを理解してもう一度その位置を軽く触れる。
「あはぁんっ!胸……ダメェ……」
 可愛い鳴き声を上げ、弓塚が跳ねた。
「もしかして……胸、感じてる?」
 俺が意地悪く聞くと、弓塚は恥ずかしそうに俯く。

「だって……ほとんど触れて貰ってないから、志貴君が触れると思うだけで……あはっ!」
 くりくりと、位置を探るようにしてやると弓塚の腰が一層激しく動き、快感を倍増させてくる。
 指先に、ブラとワンピース、更にベストの上を通してでも分かる固さ。
 弓塚は痛い程乳首を隆起させていた。

 触れられない、そのタブーを犯された弓塚の胸は、驚きと強烈な快感に弓塚を一気に飛ばしていた。
 それが俺には物凄く嬉しい。だから、かりかりと爪を立ててそこを弄ってやる。服の上からではむず痒い快感になるに違いないと思ったからだ。案の定

「ああっ、ダメ!ダメェ!!」
 弓塚はそれだけで、背中が折れそうな程反り返り、達していた。
 同時にきゅうっと、強烈な締め付けが俺を襲ったから、俺も限界ギリギリだったそれを放出する。

 どくどく……

「ああ、志貴君の精液が中に……」
 嬉しそうに、弓塚が俺に抱きついてその迸りを感じていた。
 きゅっと首に回される腕の感触と、そのキュートな香りに翻弄され、俺は弓塚の柔らかくて熱い膣に、ありったけの精液を注いだ。

「志貴君……最後にキスして……」
 俺自身を中から抜き、下着を付けようとする前に弓塚がおねだりした。
「ああ……」
 にっこりと、清楚で可愛いその笑顔がたまらない。
 俺は優しく唇を近づけると、初めて触れるかのようなその不可侵の領域とも思える弓塚の唇に、ちょんと触れた。

「えへへー」

 唇を離すと、その感触を人差し指でなぞりながら屈託のない笑顔で弓塚が笑い、体裁を整える。
「じゃぁ、少ししたら戻ってきてね」
 そう言うと、弓塚は先に教室に戻っていった。

 言われたとおり、5分ほどして俺も戻る。
 なんだか一人で帰るこの廊下はひどく寂しくて、毎回弓塚の存在の大きさに気付かされる。

 

 

 教室に戻ると、ちょうど休み時間で騒がしい。
「大丈夫か、遠野?」
 有彦の心配そうでない心配の言葉を聞き流し、俺は目をやる。

 女子の輪の中心にいた弓塚が、俺を見つけるとにこっと微笑んだ。
 一緒にいると、見ていると、物凄く心が和んで、まるで太陽みたいな子だな、何となく、そう思っていた。