ある夕方、私が食事の支度をしてると 「翡翠」 応接室の方から、志貴さまの声が聞こえました。 「はい、志貴さま」 翡翠ちゃんは志貴さまの後ろに控えていたのでしょうか、すぐに返事が聞こえます。 「……夜……来てもらえるか?」 一瞬のためらいの後、恥ずかしさを隠す様に志貴さまは小さな声で翡翠ちゃんに告げました。 「……はい」 翡翠ちゃんは、その言葉の意味に頬を染めながらも、こくりと頷きました。 夜伽の約束 だから…… 「翡翠ちゃん」 私は食後の語らいの最中、翡翠ちゃんに話しかけました。 「どうしました、姉さん?」 私は笑顔で、でも少し困って拗ねたように訪ねます。 「うん……ここじゃ話しにくいから、私の部屋で」 私が誘うと、翡翠ちゃんは一瞬志貴さんに視線を向けました。 私は……その志貴さんの優しさにつけ込んでしまったのです。 「志貴さん、翡翠ちゃんをお借りしますねー」 私はそう言うと、ふたり分のティーセットを用意して部屋に向かいました。 「うん……お茶でも飲みながら話しましょう」 私は翡翠ちゃんにティーカップを差し出しながら、微笑みました。 私は……本当はこんな時、どうしたらいいのか分かりませんでした。 なのに……今はどうするべきなのか、分かってしまいました。 「翡翠ちゃん……」 ……ごめんなさい…… |