「志貴さん……私、初めてだから……」


 姉さんが、あまりにも衝撃的な事を言いました。
 それを聞いて、私と志貴さまは目を合わせ、悲しい顔をしてしまいました。

 「七夜」としてはこれが初めてなのに、姉さんは……
 そう考えると、胸が締め付けられる思いで一杯でした。

 しかし、その真実を私たちは語る事など出来ましょうか。
 只今は、姉さんに幸せになって欲しい。
 志貴さまを見つめると、同じように頷きました。

「うん……優しくするよ……」

 志貴さまの嘘が、私の嘘が痛いです。
 しかし、救いになる嘘ならば、それは偽善でも構いません。
 だから、それを受け入れて貰いたい。

「はい……きて……ください……」

 姉さんの声が弱々しいものになる。

 ぐっ……と、志貴さまが腰を付き入れた。
 それは初めてにはとてもスムーズに、姉さんの中に埋没していきました。

「入ったよ……七夜さん」

 志貴さまが薄目を開け、姉さんを見ると

「はい……私の中に志貴さんが……」

 姉さんは、大粒の涙をこぼしながら答えました。

 それを見て、どうしてでしょう。私まで涙がこぼれてしまいます。
 大好きな姉さんが、大好きな志貴さまと結ばれたからでしょうか。

「いくよ……七夜さん……」

 志貴さまはそう言うと、ゆっくりと姉さんの中を動き出しました。

「ああ……!あはぁんっ……!?」

 姉さんは、志貴さまを受け入れながらも、自分を次々に襲う快感におかしくなっているようでした。

「え……どうして……な……んで……ああっ!」

 姉さんが未知の感覚に付いていけず、困惑したまま喘ぎます。

「七夜さん……七夜さん……」

 志貴さまは、恐らく姉さんの本能に潜む卓越したテクニックに翻弄されてしまっているのでしょう。私にする時以上に余裕無く、歯を食いしばりながらピストン運動をします。

「凄い……や……ああっ!」

 姉さんの心と体は全く別のものとなって、姉さんの中で共存してしまっていました。


 処女の心に、娼婦の体


 それは、何て残酷な組み合わせなのでしょう。
 初めてだと思っている姉さんにも、優しくしなくてはと思う志貴さまにも、非情の快感を与えてしまうのです。
 そんなアンバランスなセックスが、他にありましょうか。
 
「志貴さん……いや……私……あっ!」

 そんな自分の初めてなのに淫らな反応が、姉さんを悲しませたのか、姉さんは嫌々をするようにします。

「七夜さん……大丈夫だよ。軽蔑なんてしない」

 志貴さまはそれをすぐに悟り、姉さんをぎゅっと抱きしめ唇を奪いました。
 私の膝の上で、ふたりが舌を絡ませていました。

「んっ……んんっ……」

 姉さんが次第に情熱的にキスをし、志貴さまの言葉を信じたようでした。

「だから、もっと素直に啼いて……七夜さん!」

 志貴さまが、ぎゅっと強く姉さんを突き上げました。

「ああっ!!」

 姉さんは叫び、志貴さまに揺らされるままにブルブルと震えます。
 そうして、姉さんの奥から何かがせり上がってくるようでした。

「あ……やだ……志貴さん……い……く……」

 快感に不慣れな姉さんが、早くも達しようとしていました。

「くっ……俺も……」

 志貴さまは、矢張り姉さんの無意識の締め付けに限界を感じているようでした。

「志貴さん……中にください……」

 姉さんの言葉に、志貴さまは私を見ます。

「志貴さま、そのまま……」

 私は頷き、それを肯定しました。
 最上級に愛するなら、外で果てて欲しくない。
 そんな私の我が儘ですが、姉さんへの思いを叶えて欲しかったのです。

「分かった……よ、七夜さん!」

 志貴さまの最後の叫びと共に、腰が激しく打ち付けられました。

「ああっ! 来て、来てー!」

 姉さんが叫び、最後に体をぴんと硬直させました。
 瞬間

「くっ……」

 志貴さまの動きが、止まりました。
 腰だけを姉さんの中に擦りつけるようにして、びくんびくんと。

 射精していました。
 姉さんの中に、思いの丈を注ぎ込んでいました。

 ぐっ、ぐっと押しつける動きに合わせて

「あっ……あっ……」

 姉さんが、小さな悲鳴を上げています。

「ああああ……」

 そのまま、姉さんは気を失ってしまいました。
 くたりと顔を横に向け、涙が一筋私の腿に触れます。

「ああ……姉さん」

 私はなぜだかとても満たされて、自分がしている時以上に幸せを感じてしまいました。

「はぁ……はぁ……」

 志貴さまは軽く息を整え、私を見ました。

「翡翠……これで……」

 不安そうに笑う志貴さまに、私は笑顔で返し

「はい、ありがとうございました……」

 深々と頭を下げました。
 私の瞳から零れる涙が姉さんの顔を濡らし

「んっ……翡翠ちゃん……」

 姉さんが私を見つめ

「……ありがとう」

 そう言って、私の髪を撫でてくれました。

「姉さん……」

 私たちは、ふたりで泣き
 そうして、一番幸せな夜を迎えました