「志貴君? また……んっ……」
 また貧血でも、と朱鷺恵さんが言おうとしていた唇を、俺は優しく塞ぐ。少し驚きながらもすぐに受け入れてくれた朱鷺恵さんの、鼻に抜ける声が可愛らしかった。
 優しく唇だけを触れさせながら、俺はぎゅっと朱鷺恵さんを抱き締め続ける。痛くならないように気を使いながら、一番の力加減で離さないように。
 朱鷺恵さんが背中に回してくれた指が、俺の背中をさすった。そこから伝わる感触が気持ちよくて、唇を少しだけ強く押し当てる。
 触れ合っているところから伝わる暖かさは、何にもかえられない喜びだった。

「……」
 どのくらいそうしていたか、俺達は名残惜しそうにゆっくりと唇を離す。
 朱鷺恵さんは頬を染めながらこちらを見ていた。
 俺もその瞳を見つめ返すようにして、無言で言葉を伝える。
「だめ……だよ、志貴君。今日は体が良くないんだから……」
 その意味を分かってくれたのか、潤んだ瞳を反らしながら俺に困った表情を向ける。
 でも、止まらない。
 止められない。
 今の俺には、この気持ちを抑える事なんて不可能だった。

 もう一度唇を寄せて、奪った。
 今度は触れ合うだけじゃなく、その先へと。
 舌を優しく擦りつけると、朱鷺恵さんの唇を優しく撫でた。
「んっ……」
 声にならない声がそれを嫌がっていないと分かると、俺は唇の隙間から優しく朱鷺恵さんの口腔に差し入れた。
 まだ閉ざされていたその中を探るように歯茎を舐め合図をすると
「ん……」
力が抜けた朱鷺恵さんの唇から吐息が漏れ、入り口が開かれた。
 俺がゆっくりと舌を差し込むと、その途中で迎えてくれる熱い存在があった。朱鷺恵さんの柔らかい舌先が触れ、互いを刺激していた。
「んっ……あ……」
 知らず内に俺を受け入れ、そして舌先を触れさせた朱鷺恵さんは顔を赤らめ、それでも一度火のついた動きは止められないようだった。

 ちゅっ……ちゅ……

 舌が触れ合い、吸い付ける事によって僅かな音が発せられた。耳から伝わるその刺激が、より積極的な交歓を生み出す。
「んっ、ふうっ……」
 呼吸する事も忘れてしまったように、俺達は舌を絡め合った。二つの生き物が一つに繋がった口腔内で淫らに舞い、互いの唾液を吸い取りながら柔らかみを味わっている。
 唇と唇の間で舌を絡め合う姿に、互いがうっとりとした表情を向けて、たまらないと言ったように強くもう一度唇を合わせる。
 朱鷺恵さんの唾液がとろとろと俺の中に流れ込んできて、俺はそれを全て飲み込む。そうされたお返しと、逆に今度は口内に唾液をため込んで、朱鷺恵さんの舌に乗せ、そして顔を傾ける事によって流し込んだ。
「んっ……」
 こくりと、朱鷺恵さんの綺麗な喉がなり、俺のそれを嚥下してくれるのが分かった。閉じられていた瞳がうっすらと開かれて、俺を見る目が恍惚の表情で潤んでいる。
 お互い、もっとを繰り返すように唾液を与えあった。渇いた喉を潤すかのように流しては飲み込み、舌を絡ませては体温を一緒にしようとする。
「はぁ……ふうんっ……」
 朱鷺恵さんの鼻にかかった声がいやらしい。苦しいわけでないのに息を荒げながら、艶の入った笑顔で積極的に貪ってくれる姿は、あまりに綺麗で小悪魔を想像させた。

 そんな朱鷺恵さんを幾度と無く味わうと、俺は絡まりをほどいた。
「あっ……」
 ちろりと舌を覗かせながら、朱鷺恵さんが寂しそうな顔でこちらを見ている。もう先程までの俺の体を心配していた表情はすっかり消え失せて、ただ可憐な、しかし愛に陶酔した女性としての朱鷺恵さんがそこにいた。
 俺は体を押しつけると、朱鷺恵さんに自分の興奮の程を伝える。新たに密着させた腰の部分は、ズボンと更にその下の中で窮屈になり始めていた。
「……」
 朱鷺恵さんの柔らかい体に押しつけようとするたび、びく、びくっと興奮してさらに固くなっていくのが分かった。
 横になって抱き締めたまま脚を絡め、少しでも近付こうとする俺に朱鷺恵さんの体はゆっくり弛緩していった。

「……」
 その存在をはっきりと確認してくれたのか、朱鷺恵さんが微笑んだ。そうして、背中に置かれた手を俺の頬に持ってくると、優しく俺を撫でてくれながら
「志貴君……する?」
呟いてくれた。
「……」
 その言葉は、何よりも俺を酔わせた。
 嬉しかった。
 まだ表現が子供の自分を、それでも優しく受け入れてくれる朱鷺恵さんが。
 俺は何も言わず、ただこっくりと頷くだけだった。
 でもそれしか俺には出来ずに、そして朱鷺恵さんにもそれだけで十分意思が伝わると信じていた。

 しかし……俺がゆっくりと朱鷺恵さんを組み敷こうとすると、朱鷺恵さんがやんわりとそれを拒んでいた。
「だめ……」
 途端に、俺は泣きそうになった。
 なんでだめなんですか……そう思った。
 俺に、もっと続きをさせてください……
 はしたないお願いを、俺は朱鷺恵さんにしたかった。

 でも、朱鷺恵さんは俺を気遣ってくれていたのだった。
「今動いたら危ないから……今日はわたしがしてあげる」
 そう顔を赤らめながら優しく微笑んでくれると、逆に俺を自分の布団の上に優しく寝かせてくれた。
 見上げると、俺の事を慈しむような顔で朱鷺恵さんが俺を見下ろしてくれていた。
 その姿は……記憶にも殆ど残っていないような、母さんの姿を思い出させてくれていた。
 ああ、母さんってこんな優しさなんだなぁ。
 そう思える朱鷺恵さんの笑顔は、俺の心を従順にさせていた。
「……」
 瞳で会話するようにして朱鷺恵さんと視線を交わすと、ふっと優しい微笑みがこぼれた。
「上手くできないかも知れないけど……一生懸命気持ちよくさせてあげたいから……」
 朱鷺恵さんは俺に口づけると、すうっとその体が動いていた。

「あっ……」
 朱鷺恵さんの腕が、ゆっくりと体越しに下りていって、俺のズボンの上をなぞっていた。
 きもちいい……
 それだけで飛ぶような感覚に、俺のペニスはよりはしたなく血を集めてたぎらせてしまっていた。ズボンの中でふくれあがり、トランクスをも突き上げるようにしてそそり立っていた。
「志貴君……こんなに……」
 それを少し緊張しながら見つめている朱鷺恵さんは初々しく、いつも間近で見た事がなかったそれに緊張を覚えているようだった。
 しかし、朱鷺恵さんがそんな素振りを見せたのは僅かだった。ズボンの上から優しく撫でさすると
「もう……大きくなってる」
 うっとりとした表情でそれを見つめ、止まらないように服の上からの刺激を続けた。
「っ……」
 厚い生地越しの感覚で、朱鷺恵さんの指の動きが伝わってくるのが分かった。そこだけ敏感になったように、しかし撫でるもどかしい刺激が奥をじんとさせ、力を入らなくさせていった。

「志貴君……楽にして、あげる……」
 何度かそうやって俺の反応を見た後に、朱鷺恵さんは俺の表情に気付いたようにゆっくりとベルトに手を掛けた。
 かちゃりとまずバックルが外され、そのままズボンのボタンを取られ、最後に窮屈そうにしているファスナーを何とか降ろしてくれた。
「……」
 俺が協力する形で腰を浮かせてあげると、朱鷺恵さんがゆっくりとズボンをおろしにかかる。それがずり下がっていくと共に、自分でも抑制が利かなくなっているものをまい込んだトランクスが空気に晒された。ズボンは膝まで降ろされると、俺は脚を蹴って残りを放り出すようにして脱ぎ捨てる。
 朱鷺恵さんは少しそこで躊躇ったけど、また手を腰に当ててくれて、トランクスの上からその膨らみをもう一度撫でた。
 先程よりもっと感度の増したそれは、俺をもっと気持ちよくさせていた。少しだけずれていたトランクスの前から、自分の先端が顔を出してしまうのではないのかと思う程にいきり立って、痛い程反り返っていた。

「次、だね……」
 朱鷺恵さんが俺に確認するように問いかけると、我慢できないとばかりにその返事を待たずしてゆっくりと次がずり下げられた。
 前が大きく膨らんで窮屈になり、脱がすのは俺の協力が不可欠だった。
 朱鷺恵さんが引き下ろすタイミングを見計らって少しだけ腰を引くと、ずっと下げられた布地の間から、あまりに大きくなっていたそれが顔を覗かせていた。
「あっ……」
 朱鷺恵さんはそれを見て、いつも以上に顔を紅潮させる。でも目が離せないとばかりにそこから視線を移す事が出来ず、手は半端にずり下げられたまま止まっていた。
 空気に触れた心地と、むず痒さに俺は腰を震わせる。と、朱鷺恵さんははっと気付いたようになると、自分がそうやっていた事への恥ずかしさに瞳を反らしながら、またトランクスを下げてくれていた。

 それも膝まで下げられると、朱鷺恵さんは手を離してゆっくりとベッドの下に座り込んでいた。俺も体を起こしてベッドの端に座り、脚の間には丁度朱鷺恵さんがいてくれる格好となっていた。それはつまり……
「……あ……」
 瞳を上げた朱鷺恵さんが、言葉を失ってもう一度目を伏せていた。
 ちょうど朱鷺恵さんの目の前に、俺のそそり立つものがある格好となっていたのだ。
 俺は見下ろすような格好で、朱鷺恵さんの頭から肩に掛けてのラインを見つめていた。
 その状況は、酷く俺を興奮させるものであった。
 自分なんかの前に跪いて、目の前にそれを見せつけられている朱鷺恵さんが……
 想像が血をよりたぎらせ、生き物のようにそれを動かしていた。

「朱鷺恵さん……」
 言葉が思いつかず、俺は呼びかけるだけだった。
 こんな時に限って、どうして欲しいのか、言葉が口を衝いて出なかった。
 喋る言葉を忘れてしまったように、口の中が粘っこい唾液によって接着したようになる。
「……」
 朱鷺恵さんはゆっくりと顔を上げると、今度は目を反らさずに見つめていた。そこには一つの決意の色が見えたような気がして、俺は何も言えなかった。
 一瞬の静寂の後、朱鷺恵さんは俺の事を見上げながら
「気持ちよく……してあげるね、志貴君」
 それだけを小さな声で呟くと、顔を怖ず怖ずとゆっくり俺の股間に近付けていった。
 手が添えられて、俺は気持ちよさにびくりと反応してしまう。
「あっ!……」
 朱鷺恵さんがそれに驚いて一度手を離してしまうが、今度はしっかりと握ってくれて、離さないようにしてくれた。
 俺はそれだけでどうにかなりそうなのを抑える。立ち上がったペニスに今は意識を集めて、発射してしまわないようにする事が重要だった。

 ざらりと、先端に何かが当てられる感触。
 暖かいぬめりが、控えめにペニスに当てられていた。
 ぞくりと激しく鳥肌が立つ感触に脚の指を内に縮めさせ、快感に耐える。
「ん……」
 朱鷺恵さんが、舐めてくれている。
 その事実だけで、俺のペニスはたまらなく反応していた。
「ん……ふっ……」
 怖々といったように、ぎこちない舌の動きは亀頭全体に広がっていて、じわじわと俺を気持ちよくさせていった。

 先端から幹にかかる部分の、ちょうど出っぱった部分に舌を添えられると、こそばゆい感覚に押しつけたくなる衝動を覚えてしまっていた。
 しかし、まだ口腔性交の経験の少ない朱鷺恵さんに無理な事はさせられない。俺はその思いを堪えると、出来るだけ優しく朱鷺恵さんの髪を撫でてあげた。
 気持ちいいですよ……
 言葉では伝えない代わりに、それを行動で示してあげようとした。
 それに気付いた朱鷺恵さんが、ゆっくりと視線を俺のペニスから動かしてこちらを見上げていた。
 今さっきまで舐めていた舌はまだ軽く唇の外に覗いたまま、上目遣いで不安そうにしている顔。怯えたようなその表情に、心を揺さぶられた。
 コクンと俺は笑顔で頷いて、繰り返し俺は朱鷺恵さんの髪を撫でてあげた。言葉で口にすると、酷く気持ちが届かないものになってしまいそうだったから、ただそうしてあげるだけしか、俺には出来なかった。
 朱鷺恵さんはその行動に安堵の表情を浮かべ、さらに嬉しそうに微笑んでくれると、もう一度俺のペニスに顔を添えてきた。
 
 俺はまた優しく舌で愛撫される事を想像していたが
「んっ……」
 新たに訪れた感触に、たまらず声を上げて呻いていた。
 今度は先端に朱鷺恵さんのその可愛い唇が押しつけられていて、ゆっくりと亀頭を前後して動いていた。
「ん、ふ……」
 俺が気持ちいい事に積極的になってくれたのか、朱鷺恵さんの動きは自身のない動きから、少しだけスムーズなものに変わっていた。
「はあっ……」
 唾液に濡れた唇を滑らせて、朱鷺恵さんが俺のものを愛していた。唇が僅かに開き、挟み込むような動きに酔いながら、次第に動きは熱さを増していき、やがて……
 ず、ず……
 一部分だけに加えられていた快感が、突然亀頭から全体に広がっていった。
「ん……」
 少しだけ苦しそうに、朱鷺恵さんが鼻から声を漏らすと
「ああ……」
 甘く痺れるような感覚に、俺は深い息を吐き出して震えた。

 朱鷺恵さんが、俺のをいっぱいにくわえてくれている……
 口を犯すという背徳的な行為が、あまりに刺激的だった。
 喉の一番奥まで朱鷺恵さんが俺を飲み込んで、少し苦しそうにしている姿さえも、そそられてしまいよりペニスを固くしてしまう。
「くうっ……」
 驚いてそれを吐き出してしまいそうになるも、朱鷺恵さんは途中で押しとどめて更に奥深くまで俺を包み込んでくれた。
「んっ……ん……」
 一番奥から、今度はゆっくり口内で扱くようにして引き抜いてくる。熱い朱鷺恵さんの口の中の粘膜が絡みついて、更に傘の部分が朱鷺恵さんの歯に触れた瞬間、痛痒いような痺れる感覚に襲われていた。
 一度それを繰り返すと、朱鷺恵さんは要領を得たように動きをよりスムーズにしていった。

 朱鷺恵さんを上から見下ろすと、その頭が俺の股間に埋められて、あまつさえ上下している。
 そんな信じられない感覚に言葉を失い、また手を添えていた。
 朱鷺恵さんは今度は口を離さずに俺自身を含んだままこちらを見上げて、俺の気持ちよさそうな顔を見て微笑むと、更にいやらしく俺を舐めた。
 慣れないながらも、俺に見せつけるようにして舌を這わせ、竿を横添えして舐め、手はゆっくりと俺の陰嚢をさすっていた。
 刺激的な光景に、我慢が効かなくなり始めていた。
「ん……朱鷺恵さん」
 やっとそれだけ言うと、はじめて歯を合わせて堪える。これ以上されると、自分でも制する事が出来ないままに果ててしまうと体が悟っていた。
「あ……」
 俺はゆっくりと朱鷺恵さんの顔に手を添えると、ゆっくりと引き離していた。

「志貴、君……」
 朱鷺恵さんは離された事に僅かな不安を感じたのだろうか、俺を見上げる瞳には僅かに悲しみの色が含まれているように思えた。
 だから俺はゆっくり首を振ると
「ごめん、朱鷺恵さん。これ以上気持ちよくされると……俺、我慢できなくて朱鷺恵さんの口や顔を汚しちゃう……」
 朱鷺恵さんを大切に思うからこそ、俺はそうなってしまうのを何とか押さえつけた。
「あ……」
 朱鷺恵さんは、その言葉で意味に気付いたらしく、顔を真っ赤に染めると俯いた。それから、もう一度顔を上げると
「……きもち、よかった?」
 無邪気な瞳で、そう尋ねてきた。
「うん、すごく……気持ちよかった」
 俺は恥ずかしさにどうにかなりそうなのを堪えながら答えると、朱鷺恵さんの顔がほころんで、いつものそれに変わった。
「よかった……すごく、不安だったの。気持ちよくできてないのかなって思って……」
 朱鷺恵さんの言葉は、確かに不安を感じさせたそれだったかもしれない。でも、朱鷺恵さんのその愛撫に、俺は確かに快感を今まで以上に強く覚えて、こうして今もペニスをいきり立たせていたのだった。

「ありがとう、朱鷺恵さん……今度は俺が……」
 その感謝の証に、俺が今度は気持ちよくさせてあげる番だった。
「うん……待って。今、服脱ぐね……」
 朱鷺恵さんはふらっと立ち上がると、そのまま倒れかかってきそうになるのを止め、俺に背中を向けていた。
 俺はそんな朱鷺恵さんを、黙って見つめていた。

 まず、音もなく上着が落ちる。そのまま俯いてボタンを外すと、ワンピースが続けて肩から滑り落ちた。
 美しい朱鷺恵さんが、露わになり始めていた。
 肩に掛かる白のラインが、少しだけ火照り始めている肌色にコントラストを呼び起こしていた。
 きれいな、肌だなぁ……
 見惚れている間にも、朱鷺恵さんはスカートのチャックを降ろして、完全に下着姿になっていた。パサリと音を立て、朱鷺恵さんの足の下で輪っかになって柔らかそうなスカートが広がっているのが、たまらなく欲情した。
 その中心にいる朱鷺恵さんはあまりに美しくて、ただ俺は見つめ続ける事しかできなかった。
 その視線に気付いたのか
「や……」
 こちらを見て、少し恥ずかしそうに胸を隠している朱鷺恵さん。わざとそうしているのじゃなく、自然にそうなってしまうのが朱鷺恵さんだって思えて、俺は少しだけ視線を逸らす格好をした。
 それに安心したように朱鷺恵さんがまた向こうを見ると、俺はもう一度視線を戻すしかなかった。こんな光景を間近で見られないなんて、罰としか思えなかったからだ。

 背中に手を回してブラのホックに手を掛ける姿が物凄くいやらしかった。普段見る事の出来ないそんな光景に、息をのむ音が聞こえはしないかと不安になってしまう。
 ゆっくり朱鷺恵さんの胸を隠していたそれが取り払われると、俺は朱鷺恵さんの何も付けていない背中に視線を釘付けにした。
 首筋から肩、そして柔らかそうな背中を通って……未だ布地に隠されている腰まで、どうして女性の体はこんなに優しい曲線で出来ているのだろうと思った。
 ブラが床に落ちると、少し躊躇するようにして朱鷺恵さんの動きが止まったが、やがてその最後の布きれに、手が添えられていた。
 スルリと、小さくなるようにして朱鷺恵さんの大事なところを隠していた布が抜き取られていった。膝の所で足を上げて片足を抜き取ると、もう片方もゆっくりと外して……朱鷺恵さんは、生まれたままの姿になっていた。

 美しかった。
 しみひとつ無いその肌は透明に光り輝いているかのようで、まるで宝石を想像させた。 小さく持ち上がったおしりが、形良くこちらに向けられている。緊張をたたえたその姿は、神々しくも思えてしまった。
「志貴君……恥ずかしいから、あまり見ないで……」
 背中から向けられる視線を感じていたのだろうか、朱鷺恵さんは小さく消え入りそうな声を出すと、ゆっくりとこちらを振り向いてくれた。

 ……あまりの姿に、しばらく言葉を失った。
 恥ずかしそうに視線を反らして、朱鷺恵さんは全てを俺の前にさらけ出してくれていた。赤く染まった頬、細く線を結ぶ顎、首から鎖骨を通って美しいラインの肩、そしてふっくらと質量をたたえている胸。その先端は腕に隠されて見えないけど、膨らみは隠しきれずに、かえってその仕草が扇情的に見えてしまう。
 更にその下、くびれたウェストから繋がる腿、膝から指先。
 そして……
「いや……」
 そこを見つめる視線に、かあっとより紅潮して朱鷺恵さんが瞳を反らす。
 左手で隠されたそこには、朱鷺恵さんの一番秘密の場所があった。何も付けていない、ヒップのラインから繋がるそこは、きゅっと閉じられた足にも隠れて見る事が出来なかった。
「明るいから……恥ずかしい……志貴君も……」
 朱鷺恵さんは精一杯の声を漏らして、俺を見つめた。

「はい……」
 俺は、半端になっていたトランクスと、未だに付けたままのシャツを脱ぎ捨て、それからカーテンを引いた。すこしだけ薄明かりになっても、朱鷺恵さんを映し出す俺のスクリーンには変わりはなかった。
「来て……朱鷺恵さん」
「うん……」
 俺も生まれた姿のまま朱鷺恵さんに手を広げると、こくりと頷いた朱鷺恵さんはゆっくりとその腕の中に入ってきてくれた。
 腰から背中の当たりに手を回して、俺は朱鷺恵さんをゆっくりと抱き締めると、朱鷺恵さんは安心したように俺の肩に手を置いてもたれ掛かってきた。
 急にならないように気を付けながら、俺は朱鷺恵さんの体をゆっくりとベッドに沈ませると、朱鷺恵さんに口づけた。
「んっ……」
 最初から舌を絡ませて、ぎゅうっと抱き締めながらのキスだった。
 今度は抱き締められたところから直に肌の感触が伝わって、俺に挟まれて潰されている朱鷺恵さんの胸の感触が、もっと気持ちよく感じられた。
 そこを味わいたくて、唾液を這わせながら体を降ろしていく。
「んっ……ああっ……」
 手で包み込むと、指が埋まってしまう程の柔らかさで朱鷺恵さんの胸が形を変えていく。ふにふにと揉み続けてその柔らかさに陶酔した後、ピンク色に染まった乳首へと唇を添え、優しく吸った。
「あっ……ん」
 口に含んだ時の懐かしさは、きっと幼い頃のそれを思い出させているからなのだろう。俺は朱鷺恵さんに甘えるようにして乳首を吸い続けると、何度も何度も胸を触っては先端を愛し続けた。
「ん……子供みたい……だね」
 朱鷺恵さんの瞳も、母性に包まれたそれを思い出させてくれて、一層乳首を溶かそうとばかりに舐めつく。
 ふやけると思わせる程の愛撫なのに、次第にそこは張り出しながら固さを増して、しっかりと存在感のあるものに変わっていった。
 これが女性の体なんだなと思わせる変化は、愛おしさに包まれた俺をより幸せにしていった。
「朱鷺恵さん……」
 頭を撫でてくれる朱鷺恵さんに、俺は子供の視線を向ける。こんな大きな子供だというのに、朱鷺恵さんはぎゅっと包み込んでくれて、その二つのふくよかな胸に顔を埋めながら、朱鷺恵さんの甘い香りを鼻腔いっぱいに吸い込んでいた。

 十分に胸を味わって、子供の欲望はより増していった。
 胸の下部からお臍をくすぐって、俺は朱鷺恵さんが一番秘密にしている場所に到達した。
「開きます……」
 閉じられた腿に手を添え見つめると、朱鷺恵さんはコクンと頷いて力を抜いてくれた。
 俺に委ねてくれている嬉しさを感じながら足を開いていくと、そこには女の園があった。

 生えそろったヘアは少な目で、上部に僅かな茂みを作っていた。
 そして、その下……朱鷺恵さんの花弁は、美しく開いていた。
 閉じ合わさっていたスリットが僅かに開かれて、ピンク色の花びらを見せていた。優しく色付いたそれは僅かに濡れていて、指で触れるとじっとりと濡れているようだった。
「ああ……っ」
 入り口に反って指を動かしていくと、それだけで朱鷺恵さんが腰を上下に動かした。
 気持ちよくなってくれているんだ……
 そう思うと、もっともっとそうしてあげずにはいられなかった。
「んっ……いいよ、んぁっ……」
 開いた足の間に顔を埋めて、俺は朱鷺恵さんの入口を丹念に愛した。指で少しだけくつろげてから、その奥にある柔らかい部分を舌で感じるようになぞると
「あっ、んんっ……」
朱鷺恵さんの甘い声が響いて、たまらなかった。
 二つの指で合わせ目の上部を開いて、その間に隠れていた真珠を優しく愛撫してあげると
「ああっ!」
 ぴくんと震えるようにして、俺を腿で挟む格好で朱鷺恵さんは感じていた。嬉しくて嬉しくて、何度も何度も気持ちよくさせてあげる度に
「ふん……んあっ!」
 声にならない喘ぎ声が、俺の脳髄を揺らしていた。

「志……貴君……わたしにもさせて」
 と、涙声で朱鷺恵さんが訴えてきたので、俺は体を移動させると、朱鷺恵さんの頭の方に足を向ける格好にした。
 熱い吐息が下半身にかかったかと思うと、俺のペニスはゆっくりとそれ以上に熱い粘膜に包まれていった。
「ふう……むっ……」
 俺のペニスを優しく口に含んで扱いてくれながら、朱鷺恵さんは俺の反撃に呼吸を荒げていた。
 互いが互いをより先に気持ちよくさせようと、自分が受けた以上の快感を与えるべく激しい愛撫が続いていた。
 俺はそっと指を差し入れると、間接が全部沈み込むくらいに深く朱鷺恵さんの中を探り回った後、出し入れを繰り返しながら真珠を同時に責めた。
「んん、んんっ!」
 朱鷺恵さんは俺を含んだまま喘ぎ声を上げて、その響きがペニスを刺激する。朱鷺恵さんも快感に完全に屈しないように、俺のものを銜え、舌で亀頭全体を包み込みながら、陰嚢をやわやわと揉み続け、更にその奥のすぼまりにまでに指を這わせて俺を喜ばせてくれた。
 終わりなき際限ない快感の応酬は、どちらかが果てるまで続くかと思えた。

「いいよ、朱鷺恵さん。すごく気持ちよくって、俺……」
 しかし、あまりの快感に俺が唇を離して訴えかけると、朱鷺恵さんも同じようにペニスからそっと唇を離して
「うん……わたしも我慢できない……よ」
 そう言ってくれた。
 いよいよだ。
「今日は……ね、わたしが上になってあげる……」
 朱鷺恵さんは、まだ俺の事を気遣ってくれていた。俺もその心遣いが嬉しくて、甘えてみたくなった。
「うん……そうしてみて……」
 ゆっくりと体を入れ替えると、俺は朱鷺恵さんを自分の上に導いた。
 腰が擦れ合う位置に来ると、俺のペニスが朱鷺恵さんの中心に触れて、熱さを感じた。
「んっ……どうしたら、いい?」
 朱鷺恵さんが腰を擦りつけて俺のペニスを動かすと、俺は朱鷺恵さんのてをと手自分のそれに導いていた。
「あっ……」
「朱鷺恵さんの手で、挿れて下さい……」
 見つめあげると、朱鷺恵さんは恥ずかしさに真っ赤になっていたが、俺を握る手を離す事はしていなかった。
 そのまま、腰の位置を整えると

「ん……あ、あ、ああっ……」
 ゆっくりと、朱鷺恵さんが俺の上に腰を落としてきた。
 一寸の隙間もなく、ぴったりと吸い付くようにして朱鷺恵さんの膣に入った。
 蜜に溢れかえったその花芯を貫く感覚は、何度も交わってるというのに、物凄く気持ちが良かった。
「あ……入った……よ」
 朱鷺恵さんが嬉しそうに、にっこりと俺を見下ろして微笑んでいた。
「うん、朱鷺恵さんの中、すごく暖かくて気持ちいい……」
 俺は真実のみを口にすると、朱鷺恵さんも
「わたしも……志貴君のがいっぱい奥まで入ってきて、きもちいいよ……」
 お腹に手を当てて、慈しむような顔をした。

 気持ちよかった。
 すごく、すごく、すごく気持ちが良かった。
 朱鷺恵さんをいっぱいに貫いて、その襞の感触に感動を覚える程だった。
 ずっと、こうしていたい。
 許されるのならば、いつまでも朱鷺恵さんの膣で溶けていてしまいたいくらいだった。

「動く、ね……」
 朱鷺恵さんが、控えめに腰を揺らし始めた。
 くちゅ、くちゅと音を立てながら、竿が朱鷺恵さんの結合部から少しだけ見え隠れているのが分かる。その周りには、朱鷺恵さんが感じてくれた証の愛液がてらてらとまとわりついていて、光に反射していた。
「ん……はぁ……声が、出ちゃうよ……あっ」
 俺の上で、普段はお姉さんみたいに清楚で優しい朱鷺恵さんが、今は快感に震えて恥ずかしげに腰を揺らしている……現実とのギャップに、俺の心はあっという間に狂いそうになった。
 僅かに動いているはずの腰なのに、朱鷺恵さんの膣は信じられない程に蠕動運動を繰り返して、俺を気持ちよくさせていた。
 本能の動きなのか、朱鷺恵さんの腰の動きは始めからぎこちないそれではなく、波を描くような滑らかな動きだった。
 きゅうっと締め付けてくる膣の感触に、俺は呻き、腰が迫り上がっていくのを感じた。
「んんっ……ああっ! 志貴君、だめ……」
 そう意識したわけではないのに、それが朱鷺恵さんの更に奥を突いていたようだった。更に俺を導いてくれる朱鷺恵さんに負けないようにと、俺は朱鷺恵さんの動きに合わせて腰を動かし始めていた。

「あっ! ああっ! 気持ち……いい……ん!」
 口に手を当てて、自分の喘ぎ声を何とか抑えようとする姿までもが、より妖艶な姿に見えた。顎を反らして上を向きながら快感に喘ぐ姿に、次第に動きも大きくなっていった。
 朱鷺恵さんが無意識のうちに腰を前後するならば、俺はそれとは逆の方向に。より深く、いっぱいに繋がれるような動きを目指して、ひとつになって動いていた。
「あっ……あ……ぁ……!」
 目の前で優しく揺れる胸に手を伸ばしてその先端を弄ると、朱鷺恵さんはつまったような声をあげ、膣がより収縮するように感じた。
 そんな反応が嬉しくて、不安定になりながらも腰を突き上げながら胸を愛撫し続けると、その効果か
「あっ、ああん! あっ! いやぁ……」
 朱鷺恵さんが恥ずかしさに震えながらも、大きな声で啼いてくれた。淫らに変わっていく自分が信じられないというように、その声には困惑が含まれているようだった。

「朱鷺恵さん……もっと気持ちよくなって……」
 そう呼びかけて、朱鷺恵さんの腰を掴んで強く突き上げた。
「ああああっ!」
 何よりも一番奥に到達して、朱鷺恵さんが激震した。
 ぎゅうっと締め付けるような動きが強烈になり、俺をも強く刺激していた。
「気持ちいい?」
「あっ! 気持ちいい……気持ちいいよぉ……!」
 コクコクと頷きながら、目を瞑って朱鷺恵さんは次々に襲いかかる快感におかしくなりかけていた。
 そんな姿と絶え間なく与え続けられる収縮に、次第に俺も余裕がなくなってきているのを感じた。

「朱鷺恵さん……そろそろ……っ!」
 俺がそう言うと、朱鷺恵さんの締め付けがまた一段と良くなった。
「うん……、わたしも、いくっ……」
 その朱鷺恵さんの「いく」という言葉の響きが、俺を酔わした。朱鷺恵さんからそんな言葉が聞けたかと思うと、俺はすごく幸せだった。
「んっ、俺も、いく、いくよ……」
 それを意識させるかのように、声を出しながら朱鷺恵さんの腰をがっちりと掴んで、離さないように激しく上下させた。
「ああ! あっ! あっ! ああああっ!」
 朱鷺恵さんが、今までで一番大きな声を出す。
「志貴君……いってもいいよ!……んあっ! 一緒に……気持ちよくなろ……ああああんっ!」
 その呼びかけが嬉しく、貧血だった事も忘れて俺は力一杯下から朱鷺恵さんを突き上げた。
「あっ、いく、いく、いく……いっちゃう……!」
 自分の声に追いつめられるように叫び続けると、朱鷺恵さんの膣が激しく蠕動して、俺を限界にさせようとしていた。
 腰の奥から、今までにない快感が駆け上ってきた。

「あっ! ああああああああああーっ!」
 最後に、ビクンと激しく朱鷺恵さんが震えると、その動きが急に止まった。
 と同時に、それとは逆に朱鷺恵さんの膣が一気に収縮をして……
「いくよ……んあっ!」
 俺は朱鷺恵さんを壊れるくらいに突き上げながら、一番気持ちよいところで。
 その熱い胎内に、精液を迸らせていた。
「あああああああ……ああっ、ああっ……」
 朱鷺恵さんの叫びが響く中で、どくり、どくりと脈打つ俺のペニスからは、おびただしい量の精液が朱鷺恵さんの中に注がれていった。
 ぎゅう、ぎゅうと断続的に収縮する中、それに合わせるようにしてペニスは精液を吐き出し、朱鷺恵さんの胎内を汚していく。
 朱鷺恵さんの体が美しいまでに弓なりに反って、光る汗が太陽を反射して美しすぎた。俺の腹に置かれた手は体を支え、ぎゅうっと押しつけられた結合部は、俺の精液を全て受け止めるようにして擦りつけられていた。

「あ……あ、あああ……」
 朱鷺恵さんが、ゆっくりと体を弛緩させて、こちらに倒れ込んできた。瞳は閉じたままで快感に震えて、俺が受け止めてあげると
「はぁ、はぁ……ああ……」
 未だに発射されている俺の精液を感じて、声を漏らしていた。
 そんな朱鷺恵さんが、誰よりも愛おしくて、俺はそのからだを抱き締めていた。
「朱鷺恵さん……」
 気持ちよかったです……
 そんな心のない言葉以外に浮かばなくて、俺はそれだけ呼びかけると荒ぶる呼吸を整えようと深呼吸した。
「ああ……志貴、君……はぁ、はぁ……」
 すうっと息を吸い込む時、朱鷺恵さんの体が自分に密着してきて、俺はその感触をより味わいたいと強く抱いた。そのまま朱鷺恵さんの髪に顔を埋めて体温を感じていると
「志貴……君」
 朱鷺恵さんが顔を上げて、キスを求めてきた。
「ふうんっ……んっ……」
 唇を重ねてあげると、朱鷺恵さんはぼうっとしながらも嬉しそうにそれを受け止めて、いつまでも離さなかった。
 そうして、啄むようなキスを繰り返しながら、俺達は午後のまどろみを過ごしていった……

 










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