「……星、綺麗だね」
 帰り道、俺達は手を繋ぎながら有間の家への道を進んでいた。
 朱鷺恵さんが見ている方向だけでなく、空全体には星が輝いていた。
「朱鷺恵さん、そんなに空ばっかり眺めてますと、道に迷いますよ?」
 俺は笑いながら見ると、朱鷺恵さんもこちらを見て笑った。
「大丈夫。ほら、北極星は船乗りを北に導いてくれたでしょ? わたしたちも、星に誘われてるから」
 と、ぎゅっと俺を握る手が強くなったような気がした。
「……そうですね、それならもう、迷わないですね」
 星の導きというものが本当にあるのなら、俺と朱鷺恵さんがこうなったのはその為だと信じたかった。
 出会った時は気付かなかったけど、流れ星が落ちるような瞬きの早さで、俺達は恋をしていたのかも知れない。
 初めて出会ったときから、何故か分からないけど懐かしい気持ちがしていた。それが遙か遠い記憶と共にやってきた星の導きなら、どんなに運命的なんだろうかと思えてしまう。
 そんな朱鷺恵さんを……俺は、好きだった。

「あ……もう着いちゃうね」
 空を見上げながら歩いていたから、気付いたらもうすぐ有間の家だった。
「……本当だ、楽しい時間はすぐ過ぎちゃうんだな」
 残念そうにそう言うと、俺はここでさよならしなくちゃいけないと思った。
「じゃぁ、ここで……一緒にいるところを見られたら、都古ちゃんがうるさいから……」
 俺は少しだけ苦笑すると、繋いでいた手を離そうとした。

 しかし……
「……?」
 俺の指を、朱鷺恵さんの手がきゅっと掴んでいた。
「朱鷺恵、さん……」
 見つめると、悲しそうな朱鷺恵さんがそこにいた。
「……離したくない。離したく、ないよ……この手。だって、そうしたら志貴君が……」
 心が痛かった。
 でも、それは俺も同じだった。
 本当は、二度と繋いだこの手を離したくなかった。
 童話であった『何でも願いを叶えてくれる』魔女がいたら、手が放れない魔法をかけて欲しいと思うくらい。
 でも……信じているから。
 きっと簡単じゃないけど、朱鷺恵さんを悲しませたりしないから。
 だから、俺はそんな朱鷺恵さんを引き寄せると
「!……」
 抱き締めると同時に、唇を奪っていた。

 目の前には、幸せそうに目を瞑る朱鷺恵さんがいる。
 この人を、ずっと大切にしたいから……分かって欲しかった。
 唇が触れる時間に比例して朱鷺恵さんの手から自然と力が抜けていくのを感じ、俺達の手はゆっくりと離れていった。

「……志貴君。大丈夫だよね? わたしたち……」
「うん、きっと大丈夫だよ」

 最後に交わす言葉は、笑顔に満ち溢れていて。
 ちょっとだけ朱鷺恵さんが涙を光らせていたのが印象的だった。

「それじゃ……」
「うん、またね、志貴君……」

 ふたりで手をひらひらとさせると、俺達は名残惜しそうに互いを見つめながら、背を向けていた。
 朱鷺恵さんは時南医院へ、俺は有間の家へ。

 そうして、また今日という日の思い出は俺に刻まれていったのだった。

 

 

 

〜後書き〜

 人気投票に投稿した朱鷺恵さんSSです。

 誰が何と言おうと朱鷺恵さんです。
 さっちんにも幸せになって欲しいですが、それ以上に朱鷺恵さんに幸せになって欲しかったです。

 「あの夏、一番静かな夜」、「この夏、君を離さない夜」そしてこの、「Destiny Lovers」……
 僕の思う朱鷺恵さんは、ここにいます。

 結果の方はまぁ、前回と同じような位置でしたね。さっちんは躍進したものの、念願の先輩キラーの異名は果たせず次に持ち越し、と。でも、さっちんに関しては本当に嬉しくて涙しました。
 今度はさっちんに関して、もっとペンを進めていきたいと思いました。

 少し自分の作品と矛盾がありますが、許してください。それでは。
('03.02.06:'03.03.10追記)








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