「……し……ん」
「ん……」
 遠くで、誰かが呼ぶ気がする。
「……志……貴君」
 ああ、俺の名前を君付けで呼んでるから、きっとこれは朱鷺恵さんだな。たまに夢に出てきては俺をからかってたからなぁ。
 ……って、朱鷺恵さんだって?
 
「あ……」
 そこで、目が覚めた。
「もう、いくら呼んでも起きないなんて、頑張りすぎだよ」
 見ると、俺の顔を覗き込むようにして朱鷺恵さんが笑っていた。
「朱鷺恵、さん……」
 それは違う、と言おうとしたけど、それもあるかも知れないと思った。
「おはようございます……」
「ふふっ、まだ夜は明けてないわよ。でも、おはよう、志貴君」
 ようやく辺りを確認すると、確かに外はまだ暗いようだ。
 朱鷺恵さんはパジャマを着て、すぐ横に座っていた。対照的に俺は眠ったままの格好……つまりは裸だった。何だか気恥ずかしくなる。
「どのくらい、眠ってました?」
 シャツを掴み、被りながら聞く。
「そうね……私はすぐに目が覚めて、志貴君が寝てたから起こそうとしたけど、寝顔が可愛かったからずっと眺めてたかな。それからずっと呼びかけてたから……」
「……寝顔って」
「うん、綺麗だったよ」
「そうじゃなくて……」
 自分でも赤面しているのが分かった。朱鷺恵さんに無防備に寝顔を見られたのは不覚だった。かなり恥ずかしい。
「どうしたの?」
 目を反らして照れ隠しに俯いていた俺を追うように、覗き込んでくる。
「いいです……ところで、どうして起こそうと思ったんですか?」
「あ、そうだ。これからどうしようかな、と思って……」
 含みのあるような表情と言い方で、朱鷺恵さんが訪ねてくる。
「どうしようって……」

 こんな夜中にどこかで歩く訳にもいかないし、さっきまであれだけ動いてたから体も汗だらけで……汗か。
「そうですね……良かったら、シャワー浴びませんか?」
「えっ……?」
 ちょっと意外そうに朱鷺恵さんが答える。
「ほら、さっきまで……してたから、お互い汗かいただろうし、そのままにしておくと良くないじゃないですか……」
 口に出して、改めて眠る前までの事を思い出し、少し照れながら答える。
「……そうね。じゃぁ、行きましょう」


 ザァーッ
 俺は浴槽の縁に腰掛け、その姿を眺めていた。後ろでは浴槽に湯をためる音が聞こえる。
 あれから浴室へ来て、二人してシャワーを浴びる事になった。
 脱衣所で改めて一糸まとわぬ姿の朱鷺恵さんを眺めると、ちょっとクラクラきた。なだらかな、それでいて小さくない胸の曲線、きゅっと引き締まったウエスト、可愛いお尻。
 ぼけっと眺めてたら、「えっち」なんて言われて慌てる。危うく無節操にもまた大きくさせてしまうところだった。
 当たり前だけど、シャワーは一つしかないから、俺はこうして空くのを待ってるという訳だ。

「待っててね、すぐ終わるから」
 朱鷺恵さんはそう言って、体を洗っている。
 何か、それをぼーっと眺めていて、改めてこの人としたんだなぁ、って思う。
 あの時の、肌の感触を覚えてる。手が、唇が、体が。
「ヤバ……」
 思い出して、また前が疼く。何とかして抑えなきゃと思った。でも、その視線を離せなかった。
 体を包む石鹸の泡、そして洗い流す雫がその朱鷺恵さんの張りのある肌に珠となって吸い付いているようだった。
 
 美しすぎる。
 そして、妖しすぎる。
 誘われているようだった。
 
 その、腰から腿にかけての妖しい曲線にある雫を眺めていて……我慢が出来なくなった。
 俺の中で、カチンと撃鉄が落ちた。

「……」
 俺は無言で立ち上がると、体を洗い流している朱鷺恵さんに後ろから歩み寄った。
 鏡越しに俺を見た朱鷺恵さんは
「志貴君?」
 シャワーを戻しながら呼びかけるが、それが俺への引き金になった。
「朱鷺恵さん!」
 後ろから、強く抱きしめる。
「ちょ、ちょっと、どうしたの……あっ」
 そのまま後ろから朱鷺恵さんの双房をこねまわす。抑えが効かなくて、力任せに形を変える。
「んっ……もっと優しくして……」
 その声もほとんど聞こえない。でも、嫌がる含みは感じられなかった。
 信じられないのは、その柔らかさだった。俺が掴むままに形を変え、それでいてしっかりと弾力を持って手を押し返してくる。犯罪的だ。こんないいものを女性は持っているなんて。
「あっ……」
 俺の下半身はいきり立って、朱鷺恵さんのお尻に擦りつけられていた。それだけで十分に気持ちよく、イケそうだったが、中で果てたかった。

 ぐっと、朱鷺恵さんのお尻に手を当て、その中心部に埋め込もうとする。
「あっ……まだ、準備も……」
 朱鷺恵さんが言うが、こっちは十分出来ていた。
「朱鷺恵さんが悪いんだ、あんな姿で俺を惑わすから……」
 言うが早いか、ぐっと腰を突き出す。
 しかし、狙いは外れ上手く挿入らない。
 朱鷺恵さんの花びらの入り口を擦りつけ、陰核を刺激するような形になる。
「あん……!」
 朱鷺恵さんが軽く反り返る。
「くっ……」
 俺は焦って、何度か位置を変えようとするが、まだ女性の体を分かっていなかったからどうしても上手くいかない。
 なのに、擦りつけるだけで十分気持ちよくなっていた。
 素股の格好のまま、腰を前後させる。挿入ているのとは違う感覚が俺の脳髄を刺激する。
「朱鷺恵さん、朱鷺恵さん……」
 譫言のように呟き、その感触に埋没する。改めて胸に手を回し、朱鷺恵さんの背中に体重を預けるようにして胸を揉む。
 端から見れば、ただ腰を擦りつける猿のような格好だろう。だが、今の俺は猿に成り果てていた。
 尻の谷間から見える自分のペニスが、水とは違うもので濡れていく。
「あっ……志貴君、いいよ……」
 朱鷺恵さんも感じている様で、愛液が俺のモノにまとわりつくほどに染み出していた。
 しばらくすると、キーンと頭に上るものを感じた。
「うっ……出ちゃいます……!」
 挿入られなくて果てる、何とも無様だったけど、素股だけでも十分におかしくなれた。
 前後させる動きを早め、その高みに早く上り詰めたいと思った。

 その時、
「だめ……」
 ぎゅっと、俺のペニスを優しい手が掴んだ。
「志貴君だけイッちゃ、イヤ。私も気持ちよくして……膣に出して」
 朱鷺恵さんが後ろ向きに、潤んだ目で訴える。
「あっ……」
 一瞬、動きが止まる。その目に吸い込まれる。
 しかし、どうすればいいか分からなかった。自分が挿入られなかた事に、一瞬絶望が走る。
「……」
 複雑な表情に無言の俺を見て、朱鷺恵さんには悟られたようだった。
「ほら……ここだよ」
 俺のペニスを握ったまま、朱鷺恵さんが体を少しずらす。
 亀頭に、触れる感覚。
 朱鷺恵さんが俺を入り口にあてがってくれた。
「朱鷺恵さん……」
 そのまま、ぐっと腰を進める。
 さっきまでが嘘のように、あっさりとそれは朱鷺恵さんの膣に入っていった。
「あっ……んんっ……」
 朱鷺恵さんが、その感触を味わうように声を絞り出す。
「はあっ……入ってるよ……気持ちいい」
 その声に合わせて、律動を始めた。さっきまでと違う、今度はペニス全体が締め付けられるその感触は、朱鷺恵さんが俺を求めているという行為そのもののように思えた。
「っ……!」
 まだ朱鷺恵さんの膣はきつく、異物を押し出そうとする感覚が強い。押し戻されぬよう、強く差し込む。
「ああっ!」
 初めての時とは違うところを刺激されて、朱鷺恵さんの声が大きくあがる。
「凄いっ……感じちゃう……っ!」
 少しずつ、朱鷺恵さんの腰が動いている。俺の動きに合わせてもっと奧まで導こうとする動きが、俺を急速に高めていた。
「あっ……あっ……ああっ!」
 朱鷺恵さんの声が急速に高まる。同時に収縮が一気に強まり、俺を締め付ける。
「あっ……!」
 耐えきれず、俺も射精した。
「っ……」
 二人の動きが止まる。
 ビクンビクンと、朱鷺恵さんの収縮に合わせて、俺が精を膣に注ぎ込む。

 精を吐き終わり、収縮の波が収まる頃、二人して弛緩する。
 ゆるりと、俺は後ろに下がり、そのままぺたんと風呂場の床に座り込む。
 朱鷺恵さんはそのまま、膝を崩すようにして背中を向け座り込む。
 
「はぁ……はぁ……ははっ」
 無理な格好がたたったか、膝が笑っている。脚は膝を立てて開く格好のまま、自分のものでないかの様に動かない。
「はぁ……はぁ……」
 肩で大きく息をする朱鷺恵さんが見える。そこに近付く事さえも出来なかった。

 しばらく、呼吸を整えるようにしていたが、やがて
「……もう、志貴君、突然なんだから……」
 ゆるりと、朱鷺恵さんが動き出す。
 こちらを振り返ると、顔はまだ陶酔したまま、這い歩きでこちらに近付く。
「す……スミマセン。朱鷺恵さんが綺麗だったから、つい……」
 一種の衝動を抑えきれなかった事に、今気付いて真っ赤になってしまう。
 朱鷺恵さんはふふっ、と笑うと
「もうっ……」
 俺を笑顔で非難する。
「さっき起こした時、私、志貴君にもっとしてもらいたいって思ってたのよ」
 笑いながら、朱鷺恵さんが話し出す。
「え……」
 俺は、ぽかんとなる。朱鷺恵さんは続ける。
「男の人はどうか知らないけど、女の子は一度じゃ満足できないものなのよ。だから、もっとしたいって思って誘ったのに……志貴君、シャワー浴びようなんて、女の子の気持ち、分かってないな……」
 紅潮させながら、朱鷺恵さんがトンデモ無い告白をする。
「そういうところ、分かってくれなきゃダメだよ」
 改めて目を見られると、恥ずかしくなってしまう。
「はい……」
「ふふっ、でも、志貴君が私の姿見てそう言う気持ちになってくれたのは嬉しいな」
 言って更にこちらに近付こうとした時だった。

「あっ……」
 俺の中心に目をやり、動きが止まる。
「これが……志貴君とわたしの……」
 そこは先程の行為の残光、二人の愛液と精液が混じり、ぬらぬらと光っていた。先端からはまだ白濁の液が滲み、珠のようになっている。
「これが、私の中に入っていたのね……」
 朱鷺恵さんは、潤むような表情でそう言って、自分のお腹にも手を当てる。
「いっぱい、出してくれたんだね。感じるよ……」
 愛おしそうな表情。
 その表情を見て、まだ大きいままだったモノが反応してしまう
「あっ……」
 少し驚いたようにそう言って、朱鷺恵さんの手が俺のペニスに伸びた。
 朱鷺恵さんの手に握られて、びくりと反応してしまう。
「すごい……まだ、大きいままだよ」
 掴まれて声が出ない。自分の節操無しに一瞬罪悪感を覚える。

「綺麗にしてあげる……」
 そう言うと、朱鷺恵さんはその小さな舌を、亀頭にゆっくり這わせ始めた。
「うっ……」
 思いも寄らないその行動に、一瞬声を失う。
 朱鷺恵さんはぺろぺろと、飴を舐めるように俺のそこに口づけをする。先端にまとわりついた粘液を絡め取るようにその舌が動く。
「そこ……あっ……」
 声にならない。まだ戻らない内に、また新たな刺激を加えられ、遠くに引きずり込まれる。首を反らし、思わず呻く。
「気持ちいい?」
 舐めるだけだったその行為に飽き足りないのか、だんだんと動きが大胆になってきた。先端だけでなく、茎の方にも舌を這わせ、全体を舐め取るように、舌が往復する。
 そして、先端に戻った時、更に未知の刺激が俺を襲った。
 ぬるりと、モノ全体を包み込む粘膜の感触。それでいて膣とは違う柔らかさ。
「かはっ……!」
 飛びそうになるのをこらえて片目を開けて見ると、朱鷺恵さんが俺自身を口全体で包み込んでいた。こちらから見て後頭部がゆっくり前後するその動きが、酷くいやらしい。それに反応して、俺のものが一段と大きくなる。
「ん……んっ……」
 急に口内で反応されて、声にならないくぐもったそれが、精一杯頬張っている朱鷺恵さんの口の端から漏れる。
 揺れる髪の一部がモノにもかかる。俺はたまらなくなって朱鷺恵さんの頭に手を置いてしまう。動きに合わせるように、ゆっくりと頭を動かす。
「んんっ……!」
 朱鷺恵さんがちょっと苦しそうにするが、構ってられなかった。あまりの気持ちよさにもう限界が近付いてていた。奥歯を噛んでいた力も抜けてしまっていた。
「ダメです……朱鷺恵さん、出ちゃう……」
 頭に置いた手を離し、朱鷺恵さんを離そうとするが、朱鷺恵さんは余計に口の奧まで含み、離れようともしなかった。
「ああっ……」

 ドクン、ドクン……

 そのまま、朱鷺恵さんの口の中に、したたかに射精してしまった。
「ん……!」
 最初は少し目を開き、驚いたような朱鷺恵さんだったが、すぐに目を閉じて、口内に発射されるそれを受け止めていた。
 射精が収まると、朱鷺恵さんは俺のものからゆっくりと口を離す。唇の先との間に白濁が筋を作っている。
 そして、口にため込まれたものを、ごくりと嚥下していた。
「はぁ……」
 そこでようやく朱鷺恵さんが息を付く
「……飲んじゃった。なんか、不思議な味」
 そう言ってにっこりと笑う。口の端から垂れる精液の筋が、あまりにも淫靡で衝撃的だった。
「あ……」
 その姿を、声にならずにただ見つめるしかなかった。

「凄い……まだ、元気なんだね」
 見ると、俺のものは出したばっかりとは思えないほどそそり立ち、自己を示し続けていた。
「私も……まだ足りないみたい……」
 そう言って、朱鷺恵さんは俺の腰をまたぎ、その入り口を自らの手でくつろげた。
 とろりと、愛液とも先程の精液とも取れぬ滴りが、亀頭にかかる。
「んっ……」
 そしてそのまま、ゆっくりと腰を落としてきた。
「ああっ……ん」
 たちまちモノは新たな感覚に包まれる。うねるような収縮に、また覚醒する。
「志貴君……動くよ」
 了解を得るまでもなく、腰が上下する。
 繋がった部分はさわさわと陰毛がこすれ、中心から溢れる液体で濡れそぼっている。白く濁った粘液が視覚から、にちゃにちゃと淫靡な音で耳から刺激を与える。
 目の前で、ふるふると朱鷺恵さんの腰の動きに合わせて胸も上下している。鞠のように柔らかで、それでいて少しも崩れず、先端の乳首だけはいやらしく尖っている。
 その刺激に誘われ、目の前の膨らみに手を伸ばし、そして吸い付く。
「ああっ、志貴君!そこっ、いいっ……」
 朱鷺恵さんの腰の動きがいっそう激しくなる。俺も自分の体を反らし後ろ手に支え、下から突き上げるようにして、その感覚を共有する。膣壁の上部に当たるようにしてやると
「ああっ!ああん!!」
 また違うところを擦られて、朱鷺恵さんが大きく声を跳ね上げる。

「だめ、だめ……イッちゃう……」
 初めて、朱鷺恵さんが俺の前で余裕をなくす。その姿が愛おしくて、逆に動きを強めた。
「あっ、志貴君。ダメ、止めて、ダメ……イッちゃうの!」
 俺は笑って
「朱鷺恵さん……そのまま、いっちゃって下さい!!」
 強く激しく、一気に杭を打ち込んだ。
「あっ、ああああああっ!!」
 朱鷺恵さんが、俺の体に強く抱きつく。体に両手を回し、そして背中を掴む。
 同時に、激しく上下していたからだが一気に緊張した。
 膣壁が、ぎゅうと強烈に締まる。
「くっ……」
 少しは余裕もあったから、軽くこらえる事で放出は抑える。代わりに、その収縮をじっくりと感じる。
 朱鷺恵さんが、ぐっと、背中に爪を立て、快感の渦に溺れている感覚。その時の表情は、顔の横にあってよく見えなかった。
「はぁ……っ」
 やがて、朱鷺恵さんがゆっくりと顔を埋めていた肩から外す。
「……私」
 恥ずかしそうに、目の前で俯く。
「イッちゃったんだね?」
 コクリと、正直に頷く。その真っ赤な顔が、この場の雰囲気に何故か不釣り合いで、とてつもなく可愛かったから、少し意地が悪くなった。
「気持ち、良かった?」
 俺が囁くと、同じように首を上下する。
「……そう」
 俺はそう言った後、にやりとすると

「でも、俺はまだですよ。一緒に気持ちよくなりましょうよ」
「えっ……」
 まだ遠いところにいたような朱鷺恵さんの目が、驚きに見開かれる。

 先程の騎乗位の間に、脚は動くようになっていた。
 俺は朱鷺恵さんの腰に手を回し、ぐっと抱き寄せる。二人繋がったままで、俺はまだちっとも固さを失っていなかったから、その先端が奧に当たる感覚がする。
「あっ!」
 朱鷺恵さんがまたイキそうな声を上げる。かまわず、腰を支えるようにして立ち上がった。
「や、志貴君。何を」
「ちょっと、場所移動〜」
 怖がる朱鷺恵さんを抱えたまま、浴槽の縁に歩き出す。
 僅かの距離だが、以外にバランスが難しく苦労する。それでも、一歩小さく歩き出すごとに、朱鷺恵さんが奧に当たって気持ちいいし、それは向こうも同様らしく
「あっ、あんっ……!」
 と、喘ぎが聞こえた。

「よっ……」

 縁に腰掛けると、目の前に突き出されるように双房があった。そこに吸い付くようにして、同時に腰の律動を再開する。
「あっ……あっ」
 腰を支え、持ち上げては落とすようにして出し入れする。
「そんな、いきなり激しいっ……!」
 連続でイカせようと俺は休む暇なく打ち込む。それは杭打ち機のように、叩いては持ち上げまた振り下ろすという行為を繰り返す。
 それに合わせて、朱鷺恵さんは我を忘れたかのように激しく頭を振り、耐えているようだった。
 俺はそんな朱鷺恵さんの唇を探し当て、塞ぐ。瞬間、舌が割り込んできて、俺の口内を蹂躙する。まるでどうにかなってしまう気を逸らすかのように、積極的に絡んでくる。俺もそれに答え、唾液を貪り合う。
 それでも動きは止めず、唾液の媚薬が活力になる。更に上下運動を強く続ける。
「んっ!っっ!!」
 朱鷺恵さんが、早くも感極まった声になる。俺の口で塞がれたそこからは、大きな声であろう喘ぎが漏れ続けていた。が
「ああっ!ヤダッ!!もうだめ……早いっ……!!」
 朱鷺恵さんはもう達してしまう自分に困惑しつつ、俺から口を離して後ろに反り返る。肩に両手を置き、ぐっとこらえられずに嬌声をあげる。
 それを支えるように腰をしっかり掴み、俺も奧に向かって突き進む。
「俺も、イキますよ……」
「ああっ!志貴君、膣に、膣にきて。ああっ!!」
 一気に昇り詰めて、朱鷺恵さんが弓のようにしなる。
「ああっ!ああん!!」
 イク表情を確認して、遂に満足した俺は、貯めに溜めた精を放った。
 
 ドクン、ドクン!
 
 たったこれだけの間で3回目の放出だというのに、その勢いは一段と強烈だった。奧に打ち込むようにして、子宮口に直撃させる。ぐっと息をこらえ、倒れそうになる互いの体を腕だけで支える。
「あああ……」
 朱鷺恵さんが感極まった声を上げる。きつく閉じた瞳からは汗とも涙とも取れる雫がしたたり落ちていた。その姿、美しさに見とれ、更に精を送る。
 全て、搾り取られてもいい。そう思える姿だった。
 そして、刹那とも、永遠とも思える放出がようやく終わった。
 
「っ……はぁ……」
 朱鷺恵さんが、弓なりの状態から戻り、逆に俺にしなだれかかる。腰に置いた手を変え、背中に回してその体重を支えようとする。が……

 グラリ……

 今までの運動で無理をしすぎた成果の酸欠が、まとめてやってきた。
 マズイ……
 なんとか、意識を保とうとする。後ろは満面にたたえた湯。こんなので溺れるなんてゴメンだった。
 奥歯を砕きそうに噛み、自分を引き戻そうとする。顔の横には目をつぶり、まだ荒い呼吸を続けている朱鷺恵さんがいる。それを頼りに、何とか持ちこたえようとした。

 が、限界だった。思った以上にあっさりと意識は暗転し、俺はそのまま朱鷺恵さんを抱えたままぐらりと後ろに倒れた。
「朱鷺恵さん……ゴメン……」
 そう呟きながら、俺は体が浮き上がるような、意識が沈み込むような感覚に気を失っていた。