ゆっくりと、二人を繋げているモノを抜く。
「あっ……」
 朱鷺恵さんの膣から出る瞬間、軽く声があがる。そして、僅かに紅く染まった精液と愛液の混合物が、蓋を開けられてごぼりとたれ落ちる。
「痛い?」
 朱鷺恵さんは頭を振る。そして恥ずかしそうに
「ううん、違うの。志貴君のが出ていく時に、また変な感じがして……」
 そんな風に言われて、改めてそこを見やる。
 その粘液の動きが淫靡で、更にぬらぬらと光る自分のモノが糸を引いて離れるその光景は、あまりにも刺激が強かった。
 ペニスは、今放出したばかりだがまだまだ足りないらしく、十分に固さと大きさを保っていた。すぐにまた挿入できる程だが、そんな過程を飛ばした行為には及べなかった。
 めちゃくちゃだけど、順番にしたかった。
 朱鷺恵さんへの気持ちは強く、自分を冷静にさせてくれているようだった。余裕を持てる程でもないけど、ちゃんと愛したいという想いで一杯だった。
 
「朱鷺恵さん……」
 顔を上げ、正面に映るその顔をじっと眺める。視線が交わり、そして意を決して顔を近づける。
 ゆっくりと、その唇に触れた。
「ん……」
 塞いだ口から朱鷺恵さんの声が漏れる。少し強弱を付けて押し当てて、その弾力を確かめる。
 改めて通じ合って触れたからか、温もりがじんわりと広がる感じに、嬉しさがこみ上げてきた。もっと、もっと喜ばせたい。そんな包み込んであげたいと、非力ながら思った。
 唇を触れあいながら、右手で髪を撫でる。手に通すとサラッと流れて、絹糸の美しいカーテンが出来る。
 目をつぶっている朱鷺恵さんの顔と、ピントがずれて髪の曲線。美しすぎた。

 このまま触れあうだけで幸せだったけど、すこしずつ、先に進みたいと思った。もっと繋がれるキスがある。それを試したかった。
 唇を僅かに開き、その間から自分の舌先を軽く差し出す。そのまま、触れている唇をなぞる。
「ん……!」
 朱鷺恵さんが一瞬震える。反射的にか離れようとするが、追いかけて後頭部に手を添える。そのまま、唇の周縁部を触れるようにして、合図とする。

 しばらくすると、ようやく朱鷺恵さんの唇の強ばりが解ける。軽く開いた唇にすかさず舌を滑り込ませて、まだ合わさる歯をなぞる。
「んっ」
 くすぐったいのか、朱鷺恵さんが軽く喉をならす。舌先でその並びを確かめるようにする。綺麗に並んだそれを舌が滑り、付け根まで軽く触れる。
 やがて、閉じられていた門はゆっくり開き、そこから控えめに舌が蠢き出すのを感じた。瞬間、俺は朱鷺恵さんの口腔奥深くまで舌を滑り込ませていた。
「んん……」
 奧に眠っていた雛を呼びさますように、優しく舌で合図を送るようにする。
 朱鷺恵さんは始め、遠慮がちに俺のそれに触れていた。が、一度その互いの熱さが分かると、緊張が解けたように動いてきた。
 それに合わせて舌をゆっくり戻し、自分の口腔に導く。
「はあっ……」
 合間にあがる声が、少しずつ興奮を帯びているようだった。それは自分も同じだが、何とか理性が保てた
 そうして、互いの唾液を送り込み、飲み下す。ぴちゃぴちゃといやらしい音が静かな部屋に響くようで、それが興奮を高めた。
 
 名残惜しいが、一度ゆっくりと唇を離す。とろりと、二人を繋げる銀の橋。
「あっ……」
 ゆっくりと瞳を開きながら、朱鷺恵さんの潤んだ表情を見つめる。
 朱鷺恵さんは真っ赤になりながら俯く。
「イヤ……なんだか志貴君、巧すぎ……ほんとに初めてなの?」
「だって……そうしたいって思ってたから、自然に……」
「私も、そうなってた……」
 テクニックを凌駕する気持ち。それがふたりの間に繋がっていた。
 もう一度、ゆっくりキスをする。
 そのまま、右手をゆっくり背中に回して、位置を入れ替える。そうしてゆっくり横たえ、朱鷺恵さんを布団に寝かせる格好にした。

「恥ずかしい……」
「俺も……緊張してます」

 改めて、行為に及ぼうとするその逆転した立場。共に緊張が見られた。それを振り切り、ゆっくりパジャマに隠された膨らみに手を添える。
「あっ……」
 朱鷺恵さんが控えめに声をあげる。パジャマの下には何も付けていなかった。布越しに、朱鷺恵さんの柔らかい胸が掌に吸い付く。その先端に固く当たるものを感じ、それを撫でるようにして揉み出す。
「はっ……うん……!」
 感触が、異常だった。今までのどれにも形容できない柔らかさ。考えていたイメージは、一瞬で崩壊する。
 無心で、その胸をこね回す。上着は手を動かすたびに乱れ、その下の形状を否応なしに表す。一番上のボタンはいつからか外れていて、そこから上る熱気と香にクラクラさせられる。覗く鎖骨がいやらしく、欲情させられる。
「上……脱がしますよ」
 答えを聞く前に既にボタンに手をかけていた。普段と違う行為に戸惑いながら、一つずつ外していく。
 3つほど外したところで、汗に光る谷間が目に飛び込む。光が反射し、あまりにも美しすぎ、淫靡だ。手が慌てるが、何とかして全て外し終える。
 ゆっくりと手をかけ、その邪魔者を取り去る。朱鷺恵さんも体を僅かに浮かし協力してくれて、その全貌を明らかにした。
 
「朱鷺恵さん……綺麗です」

 目の前に愛する人が生まれたままの姿でいる。
 恥ずかしさに胸の前に軽く手を合わせ、俺を見つめてくる。
「恥ずかしい……私ばっかりじゃイヤ。志貴君も脱いで」
 言われて、僅かに残っていたTシャツを脱ぎ捨てる。原始の姿で、互いに見つめ合う。

 ゆっくりとその腕をどけ、双房を見つめる。小さい訳でなく、それでいて仰向けでも形の崩れない張り。先端で息づくピンク色の蕾。
 俺は迷わず、その頂点に唇を寄せた。
「ああんっ……」
 しっかりと自己を持った感触。それを啄むように甘噛みし、跳ね返る弾力を味わう。
 朱鷺恵さんの体は罪だ。男をこんなに狂わそうとする。
「志貴君……気持ちいい……ん」
 一度唇に戻り舌を重ね、今度は先程されたように首筋にゆっくりと舌を這わせる。軽く朱鷺恵さんの汗の味がしたが、心地よい味に感じて、まるで体から染み出る媚薬のようだった。それが俺を興奮させている。そんな気分だ。
 されるがままに朱鷺恵さんは声を上げ、シーツに捕まるようにしている。その手の一つを握り、俺の顔に導く。指が俺の顔の形状を確かめるように動く。やがて唇に来て、その奧まで探り出そうとする。俺は差し込まれる指を舌で愛撫する。そうするだけで
「んっ……」
 指にも性感帯があるかのように反応する。
 
 乳首の愛撫に戻り、今度は軽く歯で引っ掻くようにする。朱鷺恵さんが
「あっ、ああ……」
 と反応し、頭に持ってきていた手で胸に押しつけるようにする。顔全体に当たる感触に陶酔してしまいながら、最後に一度強く吸い付いて、顔を下に持っていった。
 
「あ……」
 朱鷺恵さんはぴったりと足を閉じている。見られる羞恥心からだろう。
 先程まで積極的に俺を導いていたとは思えない。攻守が逆転して、一気に弱々しい女性の姿になっていた。
 それが愛おしく感じる。でも、大事な人のその部分を確かめたい、その想いで両膝に手をかけた。
 抵抗は、僅かだった。自分の中での葛藤がそのまま力となっていったのだろう。
「大丈夫……」
 俺がそう言って、弛緩させた。ゆっくりと脚を割り開く。
 
 遂に、その部分にたどり着いた。
 先程まで俺を受け入れていた、その部分に。
 
 美しかった。
 本当にさっきまでの事が嘘であったかのように、秘裂はぴったりと閉じ合わさっていた。
「はずかしい……」
 視線を感じて、朱鷺恵さんが消え入りそうな声で言うが、初めて見るそれに目を離せなかった。
 もっと見たい一心が、更に脚を割り開かせる。
 ゆっくりと閉じ合わさった裂け目を開く。
 
 そこで、夢心地に現実が見えた。
 
 先程までの繋がっていた名残。
 合わせ目からしみ出している、僅かな血と精液。会陰部に伝わるそれは、グロテスクに、リアルに俺達が先程までしていたセックスを肯定するものだった。
 
「朱鷺恵さん……ごめんね、我慢してたんでしょう……」
 そう言い、俺はその合わせ目にゆっくりと顔を近づけた。
「いやっ、恥ずかしいっ……!」
 俺の突然の行動に、朱鷺恵さんはそう言って脚を閉じようとする。だが、既に間に頭を滑り込ませているから、俺の頭が両側から押されるだけだった。
 俺は朱鷺恵さんの腰を掴み、下がってしまわないように軽く押さえながら、その合わせ目に口づけをした。
「やだっ……汚いよっ……」
 朱鷺恵さんはイヤイヤと拒否するが、そんな気持ちは微塵もなかった。むしろ、先程まで自分が汚してしまっていたのかと思うと、清めてやらなければならない存在だと思うほどだった。
 口に混じる、血と愛液と、精液と思われる味。だがそれは全く嫌悪を抱く対象でなかった。むしろ愛の結晶のようで、嬉しい味にも思えるほどだった。清める行為に没頭するように、奥に進むようにする。
「んっ……あんっ……」
 腰を引く抵抗がないと見て、腰に回した片手を合わせ目にあてがう。開くようにして中をのぞき込み、奧に舌を突き入れるようにする。
 舌で探検するようにして届く限界の最奧。血の味の濃いような部分を感じ、そこを重点的に舐める。

「志貴君……やだっ、変な感じ……そこっ……!」
 朱鷺恵さんの反応が次第に大きくなる。痛みではない、新たな感覚に戸惑っているようだった。
 舌で攻め入るにも狭い膣。さっきまで俺のモノが入り込んでいたなんて思えない。まるでねじ込むようだったのではないか、そう思うほど舌でさえも跳ね返される感触があった。
 それを隅々まで調べるかのように、秘裂への浄化とも言える愛撫を続ける。
「ああっ……あっ!やだ……」
 朱鷺恵さんの腰が、動いているようだった。舌が動くのに合わせて、壁をすりつけるような動きが起こっていた。
 
「朱鷺恵さん、気持ちよくなってる?」
 唇を僅かに外し、俺は訪ねる。
「わからない、わからないけど、何か変……さっきとは違う感じなの……」
 朱鷺恵さんは熱にうなされるように、その秘裂を妖しく蠢かせながら答える。
「きっとそれが、気持ちいい証拠なんだよ。ほらっ」
 そうして、今まで触れなかった合わせ目の上部、先程から鼻先が触れてヒクついていたその部分に唇を触れた。
 刹那
「……ああっ!」
 ぎゅっと頭を強く挟み込むようにして、朱鷺恵さんが硬直した。俺も一瞬分からなかったが、それは朱鷺恵さんが強く感じた証拠だ。先程まで清めていた部分から、今度は透明な液体が沢山溢れ出してきた。
「……朱鷺恵さん」
 俺はそれを舌ですくうようにして味わう。その間にも朱鷺恵さんは啼き、喘いでいた。ぴちゃぴちゃと、新たな音を加えて愛撫すると、感極まったようだ。
「ダメ、おかしくなっちゃう……!」
 そう言ってまた大きく仰け反って、それからゆっくりと弛緩した。

 もう、きっと二人とも十分だった。
 さっきから俺のモノは、その存在を主張し、どこかに収まりたいといきり立っていた。理性で押さえつけるのは、もう限界だった。
 
「朱鷺恵さん……行きます……」
 まだ遠くにいるのか、朱鷺恵さんは虚ろな表情だった。
 脚の間から体を起こし、顔を近づけてキスをしてあげると、焦点が俺に合った。朱鷺恵さんは頬を赤らめ、ゆっくり頷いて
「うん。今度は、私を志貴君のものにして……」
 そう、小声で言ってくれた。
 その一言が、俺の中で一気に爆発した。
 俺はペニスをその入り口にあてがうと、腰をゆっくりと突き出すように挿入した。
 ぬるりとした感触が、少しずつ俺自身を包んだ。
「あっ……入ってくる……入ってくるよ……」
 朱鷺恵さんは、少しずつ進入する俺のモノを感じていた。手はシーツを掴み、まだ痛いのだろうか、目を閉じていた。
 俺はその手に自分の手を重ね、そうして俺の背中に回した。朱鷺恵さんはぎゅっと俺にしがみつき、俺は受け止めるようにしながら、同時に腰を深く深くに進めた。
 そうして、一番奥まで到達した時、ふと朱鷺恵さんを見ると、閉じた瞳の縁から涙が流れてた。
「痛い……の?」
 俺は気遣うようにして聞いた。痛い想いはなるべくさせたくないから、少し腰を引こうとした。が、逆に朱鷺恵さんは脚を俺の腰に巻き付け、離そうとしなかった。

「ううん……違うの」

 朱鷺恵さんはゆっくり目を開けて、今まで以上の笑顔で俺を見た。
「嬉しくって……ずっと、こうなりたかったから。志貴君に抱かれてるって思ったら、なんでだろう……あはっ」
「……!?」
 その笑顔と台詞に、俺のココロは一気に沸騰してしまった。

「んっ!」
 キスをする。すぐに舌を差し入れ、絡ませる。
 そのまま、腰を律動させ始めた。
 ゆっくり引き、また差し込む。まだ何にも知らなかったけど、こうする事で気持ちよくなれると体が勝手に動いた。
 テクニックなんてもちろん知らないから、ただただ前後させるだけ。それでも、締め付けてくる膣の動きは物凄く、十分過ぎるほど気持ちよかった。
「あんっ!志貴君のが、動いて……気持ちいいよ……」
 痛みはほとんど無いようで、朱鷺恵さんも声を上げる。
「あっ……ああっ……うんっ……ゃ……ん……」
 動かす度、いくつもの音色で朱鷺恵さんが喘いでいる。その声に翻弄されそうになる。
 奥歯を噛み、出そうになるのをこらえていたが、未だ慣れない強烈な感触に、限界はあっという間に訪れようとしていた。

「ごめん……朱鷺恵さん……気持ちよくしてあげるって言ったけど、もう限界かも……」
 動かなくても十分気持ちいい膣で、俺は最後の時が近いのを感じる。
「私も……何かこみ上げてきて……おかしいよっ……ああ!」
 朱鷺恵さんも何かが迫っているようだった。せめてそこまで連れて行ってやりたくて、必至に耐えながら腰を打ち付けるようにした。
「ああっ!志貴君、何か変だよっ!」
 朱鷺恵さんが強く収縮する。同時に俺もそれに従って飛びそうになる。
「朱鷺恵さん……」
 俺が朱鷺恵さんを強く抱きしめると、朱鷺恵さんも俺を抱きかえし
「来て、志貴君。膣に」
 そう言うと、それが引き金になったように
「ああっ、ダメ、ダメ!」
 一気に朱鷺恵さんの膣が収縮した。あまりに強いその運動に、今まで耐えていたモノが、全て爆発した。
 
 ドクン、ドクン!
 
 膣の最奧に突き刺して、俺は果てた。朱鷺恵さんの収縮するその動きに合わせて、精液を送り込む。

「あ……あ……あ……」
 精が送り込まれるたびに、朱鷺恵さんが反応する。
「……あ……志貴君……」
 涙を流し、朱鷺恵さんが俺の名を呼ぶ。抱きしめ、存在を誇示した。
「幸せ……」
 そう言うと、朱鷺恵さんはゆっくりと力が抜けていった。まだ収縮は収まらず、体を離すが結合部はまだ吸い取るような力で、俺を離してない。
 やがて、大きな波が次第に収まると、朱鷺恵さんの膣の収縮も解け、俺はゆっくりとそのモノを抜き出した。
 
 物凄く、幸せだった。
 満たされていた。
 愛する事が出来たんだ、その思いが、俺を安心させていた。
 
 朱鷺恵さんに重ならないように布団に横になると、目を閉じた。
 ちょっと、眠ろう。そう思った。
 朱鷺恵さんは目を閉じて、眠っているように見える。
 満たされた想いは、俺を急速に夢の世界に誘っていった……