凄く恥ずかしそうな表情。
 これは……。
 うん、わかった。
 翡翠から誘ってきている。

 言葉では答えない。
 答えずに、上半身を捻って翡翠の方に傾けた。
 そのまま顔を寄せて、驚き顔の翡翠の唇を奪う。
 うん、柔らかい。
 何か驚いての声か、突然の行為に対する抗議か、翡翠の唇から洩れかけた吐
息を、外に洩れる事は無く吸い込んでしまう。
 
 ちぅっ、ちゅっ。……ちゅッ。

 一旦離す。
 柔らかくて温かい翡翠の唇。
 
「志貴さま」
「うん?」

 何か言いかけて翡翠は黙ってしまう。
 なんだろうと翡翠の目を見つめる。

「……もっと」
「わかった」

 翡翠も体をこちらに向ける。
 まだ並んで座ったままでの、上半身だけを正面に向けてのキス。
 心持ち前に突き出された翡翠の唇。
 わずかに開いている。
 控えめに誘っているかのように。

 唇を合わせた。
 軽く左右に震わせて、擦れる感触を味わう。
 そのまま舌を入れる。
 翡翠は拒まない。

 くちゅっ、ちゅぅぅ……。

 水音を伴ってのキス。
 ゆっくりと舌を絡ませあう。
 吐息が舌を滑るのが何とも言えず気持ちよい。
 片手で翡翠の背を支えながら、空いた手で髪を撫ぜる。
 
 琥珀さんや秋葉もキスや軽い前戯を好むけど、翡翠は特に喜ぶ。
 順応性はあっても、まだ性感を過度に刺激する愛撫や、挿入されての動きは、
快楽に直接結びつかないか、あるいは受け止めきれないらしい。
 こうやって唇を合わせたり、ゆっくりと軽く、手や唇で肌を探る動きの方が
反応がよいし、ずっと心地よいようだ。
 
 今の唇を合わせてのくちゅくちゅも、舌をおずおずと出してくれてはいるが、
差し入れた舌を強く吸ったりはしない。
 あくまで俺のされるままに従い、時折控えめに舌を動かす程度。
 それはそれで翡翠らしい。
 
 一度、離れて息を整える。
 翡翠の喉が動いた。
 嚥下の動き。
 幾分流れ込んだ俺の唾液と、刺激されて分泌された自分のそれを飲み込んだ
のだろう。

 それを見てまた少し欲情した。
 翡翠はどうだろう?

 翡翠が自分から顔を寄せる。
 キスのおねだり。
 目がお願いをしている。
 頬に赤みが差している。
 翡翠も、キスに酔い始めている。

 両手で抱き締めながら、キスをした。
 さっきよりも舌を大胆に動かす。
 意図的に唾液を送り込んだ。
 小さな口内をいっぱいにされ、翡翠は息苦しそうにして、生温い液体を啜り
込む。
 嫌悪の表情ではなく、幾分嬉しそうに見える。
 何度も、そんな事を繰り返し、従順にされるがままの翡翠を見ていると、そ
れだけでは我慢できなくなった。
 翡翠をもっともっと味わいたくなった。

 上半身の体重を翡翠に預けた。
 意図を察して、翡翠は抵抗する事無くその力に屈する。
 重なって、ベッドに倒れる。
 
「翡翠が欲しいな」
「わたしも志貴さまが欲しいです」

 頷く。
 もぞもぞと動いて、体の向きを変えてベッドに横たわりながら、軽いキスを
繰り返す。
 唇にキスしながら、頬をぺろっと舐めたり、瞼や耳に軽く唇を触れさせる。
 耳に舌を伸ばしながら、翡翠の胸に触れた。
 赤いリボンを掠めつつ、何枚もの布の上から、控えめな曲線を描く丘稜を広
げた手の平で覆って動かす。
 柔らかい。
 直接触れるのには到底及ばないけれど、充分翡翠の胸の感触は伝わる。
 
「うん……」

 溜息にも似た小さい吐息。
 それだけでもぞくぞくするような震えが背を走る。

「柔らかいよ、翡翠の胸」
「や……」

 少し強く押すように刺激を加えると、また新たに声を洩らす。

「志貴さま、まだ脱いでいません……」
「そのままでいいよ」
「でも……」

 そうだな、最初にお互いに抱き合って、そして下着姿や裸にしてからだもの
な、いつもは。

「こういうやり方もあるんだよ。翡翠がどうしても俺に綺麗な体を見せたくて
仕方ない、早く一糸纏わぬ姿になりたいって言うんなら、別だけど」
「……そんな事ないです」
「じゃあ、このままでいいよね?
 あ、でも皺だらけになっちゃうし、少し汚れちゃうかもしれないけど、大丈
夫かな?」
「替えは幾つもありますから」
「そうなの、じゃ遠慮なく」

 安心して皺を増やす作業に取り組む。
 首筋にキスし、洩れる吐息と声を吸い、喉にちゅっと痕をつける。
 指は節足動物めいた動きで、翡翠の胸で蠢く。

 いいな、こういう着衣のままってのも。
 手の感触であたりをつけて翡翠の胸の先と思しき処を指でつつく。
 うん、心なしかぽっちりしているような。
 もう一枚下に指を潜らせればはっきりわかるんだろうけど。
 指で引っかいたり、摘んでみたり。
 翡翠の反応。
 うん、間違ってないな。

 胸をやんわりと可愛がりながら、手を伸ばし、エプロンドレスの裾をゆっく
りとたぐり上げる。
 翡翠のほっそりとした足首の上が露わになっていく。
 ふくらはぎ、膝、太股。
 普段ほとんど日に触れる事がないからだろうか。
 驚くほど白い。
 うっすらと静脈が透けるほどの白さ。
 その汚れない白色で形作られた細くてすんなりとした美線の翡翠の脚。

 触れると吸い付くような肌の感触を求めたくなる。
 細いけれど丸みと柔らかさを持つ腿を手で何度も撫で上げて、より柔らかい
腿の内側のしっとりした様子を味わいたい。
 でも、素通り。
 直接生肌には触れない。
 
 触れるのは、その左右の腿の合わさる処。
 すっかり丸見えになったショーツに隠された処。

 翡翠はまだ気づいていない。
 布越しに摘まれた胸の先の感触に、喉をぺろっと舐める舌の生温かさに、注
意がいっている。
 横目で、素朴で飾り気のない白い小さな三角形を見る。
 指が近づき、頂点に触れる。
 そのまま第一関節が見えなくなるほどめり込ませる。

 柔らかい。
 直接触れるのともまた違った感触が心地よい。
 指先でショーツを突付きながら、三角形を二等分するように、底辺へ動かす。
 真中辺りが、そのまま飲み込まれそうなほど頼りない。
 
「ああ、んんッッ」

 翡翠が可愛く喘ぐ。
 いきなりの敏感な秘処への刺激に、抑えようもなく洩らした反応。
 もう一回。
 今度は底辺から頂点へ。
 いや一回だけでなくて、もっと。
 
「ふぅ。ッッ……」

 声を抑えようとする。
 成功しているとは言い難い。
 抑えているのに、それでも洩れる押し殺した喘ぎ声と、その表情がなんとも
色っぽい。
 それをもっと堪能したくて、指をもっと動かす。
 あくまで布越しで過度の刺激は与えないように気をつけながら。
 包皮に守られた敏感な肉芽を探り、あると思しき処を突付く。
 にちゅ、と湿りを帯びてきた処をまさぐる。
 
 最初はちょっと生地の手触りが変わってきたな、という程度だったショーツ
は、今はもっと凄いことになっている。
 すっかり内側から熱く湿り、指を濡らすまでになっている。
 指だけで味わうのはもったいなくて、目ではっきりと確認したくなった。
 上半身を起こして、翡翠の下半身に向う。
 
 ショーツは濡れて、少なくとも大切な処を隠蔽する役割を、完全には果たし
えない有り様になっていた。
 うっすらと翡翠の下の唇の様子がぼんやりと透けて見える。
 黒い翳りも垣間見える。
 粘性のある甘い液体で薄布は肉に張り付いて、翡翠の谷間の様子を形作り浮
かび上がらせている。

 唇を寄せた。
 舌を出して翡翠の愛液の染みた柔らかい薄布を舐める。
 ざらっとしつつも、にちゅと濡れた感触。
 布地自体の匂いもあって、そう翡翠を感じられない。
 でも、翡翠の味を匂いを確かに感じた。

 ぺろぺろと舌で舐め、唇を押し付け、舌先で突付く。
 外からも塗らされ、ぐっしょりとしていく小さな布切れ。
 見ると、さっきよりさらに覆い隠していたものを、露わにしている。
 
 その中心に唇を合わせ、ディープキスをする様に、舌を動かし、激しく吸上
げた。
 自分自身の唾液と混じって、染み込んだ翡翠の愛液がじゅるると口内に広が
っていく。

「いや、嫌です。そんな処吸わないで……」

 翡翠が俺の頭に手をやって、押すような動きをする。
 それに構わず、さらに唇を押し付ける。
 太股を手で抑えて、翡翠の行動の自由を奪いながら。
 夢中で布越しに翡翠の谷間に顔を埋めて、泉で渇きを癒すように翡翠の愛液
をすすり込んだ。

 口の周りをべとべとにして顔を上げると、翡翠は荒く息をついていて、そし
て手はだらんと下に垂らして、形ばかりの抵抗すらもうしていなかった。

「気持ちよかった、翡翠?」

 なるべく揶揄や面白がる口調を消して、自然に訊ねた。
 なるべく優しく翡翠を見つめながら。
 
「はい、志貴さま」

 翡翠も素直に答えてくれた。
 そうか、と小さく頷く。

「翡翠を見たいな。もうすっかり濡れているし。脱がせてあげようか、それと
も自分で脱いだ方がいい?」
「志貴さまに……」

 恥ずかしそうに、でもその選択を翡翠は採ってくれた。
 どちらが俺を喜ばせるか知っているから。
 ショーツに手を掛ける。
 両手で、左右のゴムの部分を、少し後ろの部分を摘む。
 翡翠は黙っていても、少しお尻を上げて協力してくれた。
 少しぴちゃという音を立てつつ、お尻からショーツは脱がされた。
 お尻、腿、膝、するりと足から抜ける。
 小さな塊状になったのを見て、こんな小さなものなのにな、と思う。

 脚を広げさせると、翡翠は抵抗せずに従ってくれた。
 先ほどから布越しに透けて見えた翡翠が明らかになる。
 翡翠の官能の花が咲き誇っている様が。

「綺麗だ」

 思わず感嘆の声が洩れる。
 既に露濡れた翡翠の秘裂。
 ぽっと紅に染まった肌色に近い色から、艶やかな真紅に近い鮮色まで、それ
こそ百花繚乱といった様。
 いつもは大切な奥を覆い隠している大陰唇。
 僅かに開いてほのかに見える粘膜の連なり。
 蕾から咲きかけた花弁のような小陰唇。
 顔を見せていない肉芽。
 どれもただピンク色とか、薄桃色とか言ったのでは、その彩りの欠片すら表
現できない。

「志貴さま、恥ずかしいです」

 言いながらも、隠そうとはしない。
 何回かの経験で、見られる事に慣れたのか、いかに脚を閉じ手で覆っても無
駄と悟ったのか。
 とにかく、翡翠の魅力的な処は邪魔されることなく視線を受けている。

 琥珀さんとは違うな。
 双子なのに。
 琥珀さんも綺麗でいつも見惚れてしまうが、もっと成長した感じがする。襞
や粘膜ももっと複雑に見える。
 翡翠は、ほとんど自分でも弄ったことが無いと言うだけあって、もっと幼く
見える。
 そんなに極端な差ではないのだが、そんな双子の姉妹の秘処を対比をするよ
うな真似をすると、よりいっそう興奮を誘うのは確かだった。

「綺麗だ。それに、こんなに濡らして、誘っているみたいに」

 言いながら、ズボンをかちゃかちゃとさせる。
 いい加減、圧迫されすぎて痛いくらいだ。
 もう解放して、もっとはるかに居心地の良い処へ潜り込んでも良いだろう。

「志貴さま」
「うん、何?」
「わたしが……」