……とまあ、そんな経緯があってこうなった訳だ。
俺は自らの境遇を嘆きながら――間違いなく心のどっかでは喜びながら――ただされるがままになっていた。
「何というか……」
「ん? 何か言った?」
「いや」
「? そう」
何かを言おうとした俺を遠坂は不思議そうな顔で見るが、俺はやっぱり口にするのはやめて万歳をする。そのスキに遠坂は母親が子供にするみたいに俺のシャツを頭から脱がすと、脱がしたシャツを脇にやった。
――考えてもムダだな。
俺は結局、二人とも大好きで、大切にしたい訳だし、こういうのに流されるのも悪くないと思った。
「シロウ、こっちも……」
「はいはい」
と、続けざまに腰をちょこっと上げて、セイバーがズボンを脱ぐのを手助けして……見事に、トランクス一丁のマヌケ衛宮士郎が出来上がった。
「はーい、次はわたし達ね?」
と、今度は遠坂は自分の服に手をかけていく。
「んっ……士郎じっと見過ぎ」
「あ……」
一瞬睨め付けられて、俺は慌てて顔を逸らすが、怒られない程度にその様子を覗き見する。その、『んっしょ』とでも形容したらいいだろうか――胸にたくし上げていく様は、目の前で見ると改めて酷く興奮する。
更にセイバーはというと、
「……」
無言のまま、こちらも今日はブラウスを着ていて、そのボタンをひとつひとつ外しているから……たまらないね。
なんだか親父臭さ満点な感想だけど、他に言葉は見あたらないし、他の奴だってそう思うに違いなかった――絶対に見せたくはないけど。
「ふふふ、最後は士郎のお楽しみにとっておかないとね〜?」
と、二人は上に着ていたものを取り去ると、共に下着だけの姿になっていた。
「何だか、セイバーに見られてると思うと恥ずかしいなあ……」
「わたしも同じです。異性の裸だって殆ど見たことがないのに」
「ふふふ、可愛い事言っちゃって。ねえ、このセイバーの下着、かわいい〜」
「きゃっ……ふふふ、凛もよく似合ってますよ」
そんな二人がお互いのブラの紐とか軽く引っ張り合うのを見て、修学旅行の夜にふざけあってる女の子達とかこんなだろうな……と妄想しつつ、目の前でそれが行われている事に、いいものを見たと感謝していた。
「さてさて……どっちからする?」
と、凛はひとしきりセイバーとじゃれ合った後本題を切り出す。何だかその瞳は子猫のようにイタズラっぽく、期待に満ちていた。
「はい、それは凛からどうぞ。サーヴァントはマスターに先んじたりしません」
と、そこが困りものだと思っていた俺に、あっさりとセイバーが遠坂へ先を譲っていた。
「あら、こんな時だけ謙遜するのね、ありがと。でも、次はセイバーの番だからね?」
「はい」
次……ってのは、この後のことなのか、それとも次回のことなのか――そんな風に俺が邪推している間に、遠坂はそっと俺の側へ身を寄せてきた。
「士郎……」
「あ、ああ……」
目の前にやってきて、遠坂が急にしおらしくなる。そのギャップが遠坂の遠坂たるところではあるが……あまりにもズルい。男心には『たとえ普段は強気に振る舞っていても、自分の前だけは可憐な少女』というのは、ぐっと来るものがあるのだ――それが遠坂みたいなとびきりの美人だったら、尚のこと。
「ね……キス、しよ?」
と、自分からではなく俺からそうして欲しいと求めてくる辺りがまた愛おしい。
「ん……」
だから、頬をそっと撫でるようにしてやると、まずは軽く挨拶のキスから始めた。
「は、あ……」
一旦唇を離すと、もうどうにもならなくなった遠坂の熱い吐息。
「ん、ふううっ……」
だから俺はその吐息を塞ぎ、舌を滑り込ませた。
「は……んっ……」
積極的に舌を絡めて、遠坂は俺から唾液を吸い取ろうとしている。瞳を閉じて、そこから得られる感覚だけを確かな物にしようとする姿が健気でいい。
「ん……」
その間にセイバーを盗み見ると、こっちをじっと見つめたまま何も言わず、ただ俺達の様子を行為を少しもの惜しげに眺めていた。それを感じると何だかちょっと……
「……んんっ!?」
と、一瞬舌の動きを緩めてしまっていたらしく、俺は遠坂にぐっと顔を引き戻されると、舌をちょっと強く噛まれてしまった。……よそ見はいけないよな、と痛みを堪えながらも、すぐに優しく舌を包んでくれた遠坂に謝罪しながらもキスを続ける。
「……んっ」
キスだけで物足りなくなった俺は、そろっと胸へと手を伸ばす。
小さなカップのブラジャーに包まれたそれは男の欲望からすれば若干物足りないが、それでも手に広がる柔らかさは素晴らしい。
「は、あっ……」
俺が何度かさすってあげると、遠坂は感じたのかちょっとくすぐったそうに唇を離して俺を睨め付ける。
「ブラ、取っていい?」
と、そこへ俺がお願いをすると、
「んっ、自分でするから……」
と、遠坂は自分で背中の方に手を回した。まあ俺だと上手く外せないから、最後はたくし上げることになってしまったりするのだが、遠坂としてはちゃんと取って欲しいらしい。その『脱ぎかけ』が興奮するのだけど、そんな男の事は知っちゃくれない。
「ん、いいよ……」
と、ホックを外した遠坂は改めてこちらを見ると、俺は緊張の解かれたそこへ手をかけた。
最後の抵抗とばかり先端を隠していたカップを取り去ると、遠坂の可愛らしい胸が露わになる。
「や……」
見られた瞬間、恥ずかしそうに遠坂は胸を隠そうとするが、俺はその手をがっしと掴むとそうはさせないで、がら空きになった左胸にそっと顔を近付けた。
「あ……あっ」
一度軽く挨拶をしてから、まだふくらみかけの先端にちゅっと吸い付く。それから舌を這わせながら何度も、遠坂の感じるところを責めてあげた。
「ん……ダメ……っ」
遠坂がそんな俺からの責めから逃げるように、次第に後ろのめりになっていく。俺もそれを追っかけると、遠坂の身体が布団に倒れ込んで、その上に乗っかる格好になる。
「はあっ……」
小さなサクランボはつんと上向きに、ちょっとだけ濃いピンクのそれは俺が唾液をまぶしてゆっくり愛してあげると、次第に固く尖ってきた。
「ん……いいよ、士郎……?」
だけど、ちょっと遠坂の脚が窮屈な体勢だったので、俺がすっと体を離してあげると、遠坂は急に離れていった間隔に瞳を開いて俺のことを見た。
脚をスッと伸ばして布団に倒れ込みながら、遠坂はショーツ一枚で俺を見上げている。その瞳の潤み加減が……弱々しい子犬を思わせてるからたまらない。先程の猫とはうってかわって今度はそうなってしまうのだから、遠坂という女の子の可愛さがより際立ってしまう。
「……そうね、セイバーにもしてあげないと」
とそこで、遠坂は愛撫の中断が俺の躊躇いだと勘違いしたのか、そんなことを言った。
「あ……」
今まさに遠坂へのしかかろうとしていた俺は、不意のその発言に動きを止められて、それからセイバーの方へ視線をやってしまう。
「凛……」
セイバーの方も今の言葉にちょっと驚きつつも、投げかけられた言葉に感謝しているようだった。
「ね? わたし達だけってのは、やっぱりよくないから」
「は、はい……わたしは構わなかったのですけど……」
もじもじとしながら、セイバーは『ですが凛が……』とごにょごにょとなにやら俯いて口の中で言っている。
「もう、そんなところで遠慮しないの。じゃないと士郎あげないよ?」
「! それは……!」
が、俺の名前を出して挑発すると、ハッと顔を上げて正直にいやがっていた。
「あはは、ウソウソ。でもほら、セイバーだってしたいでしょ?」
「はい……」
「と言うことで衛宮君、次はセイバーよ?」
と結局訳の分からぬ内に俺はセイバーへと差し向けられ、遠坂が退いた布団の上で改めてセイバーと向き合った。
「シロウ……」
見つめ上げてくる瞳がたまらない。
「わたしも……凛みたいにキスしてください」
そう素直に言われると、そうしてあげたくなるのが本能だ。
「あっ……」
ゆっくり、顔を傾けてセイバーの顎を上げさせると、その柔らかい小さな唇をそっと塞いでいた。
「ん、んん……」
凄く幸せそうに目を閉じて、セイバーは俺に動きを委ねている。しかし、しっとりとした唇は微かに開いて、その奥から感じられる生暖かさは俺を控えめに誘っているようだった。だから、そこへ舌をゆっくりと差し入れる。
「ん、むうっ……」
待っていたとばかり、セイバーは俺を出迎えると、早速舌先が柔らかく絡み合った。
「は、あ……ちゅ……」
舌先を吸われて、そこに乗っていた俺の唾液はセイバーの口内へ流れていく。どちらかと言えばセイバーは、普段は控えめでも、こういう時には自ら積極的に求めてくれる。遠坂とはまた逆のギャップが、こちらも男心をくすぐる。
「はあっ……」
俺はセイバーのブラへと手を当てる。が、やっぱり予想通り上手く取り外せなかったから、結局はたくし上げて――まあ、それほど膨らみがなくて簡単だし、それだからこそ興奮するのだけれど――小さな胸を露出させて、指先で軽く乳首にタッチした。
「! んんんっ……」
ピクン、とセイバーはファーストタッチから口の中でくぐもった声を上げさせ、そのまま俺にいじられる。
「はあっ……あ……」
息苦しさに唇を離してしまったセイバーは、舌をちろちろと覗かせながら尚も俺を求めようとするからかわいい。なので俺はその宙を彷徨った舌先を愛でながら、胸への愛撫もやめずに続ける。
「あ……ふぁ……」
くりくりと両の手でセイバーの胸を触ってあげると、セイバーは身体を震わせてその感覚に段々舌の動きが鈍っていく。俺はだから……というわけではないが、キスを終わりにすると胸へと照準を移して、今度はそっちにキスしてあげることにした。
既に十分に張ったそれへ、俺はちょっとだけ興奮しながら唇でタッチをする。
「はあうっ……!」
セイバーは新たに訪れた艶めかしい感覚に、一際高い声を上げて啼き出す。
「セイバーはいつも感じやすいね」
「やっ……言わないで下さい……凛が……」
そこで遠坂の存在を気に懸けたようで、矢張りセイバーらしいというか、控えめで可愛らしい。それがきっと興奮も読んでいるのであろう、ぷくっと膨れた乳首は非常に感度が良い。
「はあっ……あ、シロウ……!」
口に含んでみると、セイバーのここは遠坂に比べて幾分大きいような気がする。個人差ってあるんだろうなと思いながらも、それが嫌いじゃないどころかとてもお気に入りな俺は、半ば執拗とも思える先端への責めを繰り返しながら、反対の胸も弄るのを忘れなかった。
「はああっ!」
セイバーは胸が感じやすい。経験則から導かれた、そしてこれは悪いが――遠坂との比較で得られた傾向。
それを分かっていた俺はセイバーを布団にゆっくりと寝かせると、より際立って主張を始めた乳首に軽く歯を立て、唇で挟んでいた。
「ああああっ!!」
既に俺の頭をかきむしり、行為に没頭するようになったセイバー。その先端が痛いくらいに尖り、今度は交互に責めてあげると、それだけでビクビクと俺に胸を押しつけるようにして、更なる快感を求めてくる。
「や……あっ! も、う……っ!!」
嫌がっているのではない、どちらかと言えばもっとして欲しいの意味のリクエストに積極的に応えながら、早くも感極まってきたセイバーに感動を覚える。今までも何度もこうやってきたけど、俺はいつもかわいそうかなと思って途中で愛撫をやめていた。
だけど今回は、遠坂のいる前だし、ちょっと欲望があったので意地悪をする。セイバーは最早自分が隙だらけな事に気付いてない。だから俺が余った手をそろそろと伸ばし、下半身に伸ばしていくのにももちろん無防備だ。
そしてショーツの上、セイバーの敏感なところへ手を伸ばすと、くりゅっ……と、布の上からクリトリスを優しくなぞった。
「……! あ、ああああああああああっ!!」
「――!」
と、次の瞬間、セイバーの全身が激しく硬直して、ぴい――んと背筋が伸びた。ぎゅっと俺の頭を強く抱いて、ピクピクと震えて胸をせり上げる。唇の中で、セイバーの先端が一層大きくなったような気がした。そして、
「――あ……はあああああっ……」
その拍子で歯先にこすれた快感に強く反応するよりも、むしろ深く落ちていくような長い、声にならぬ声を上げてセイバーがイッていた。
「ふあ、あ――」
ぐうっと身体を伸ばし、それから収縮して何度も苦しそうに震えているセイバー。そのこちらも予想だにしなかった突然の絶頂に、犯人である俺も、そして一緒にいた遠坂も驚きを隠せなかった。
「セイバー……?」
「ああっ……は、あ……」
「……」
特に遠坂は、セイバーのあまりの感度の良さにビックリとした表情を浮かべ、信じられないと言った様子で荒く呼吸を続ける姿を見つめていた。
「あ、ああっ……シロウ、ひどい……そんな、胸だけなんて……」
ようやく白んだ意識から回復したセイバーは、俺のことを軽く恨みながらそう呟く。だがその瞳は決して怒っているのではなく、あまりの良さに感覚がまだ麻痺してトロンとしたもの。
「ごめん、まさかこれだけでって思ってなかったから……」
「はい……わたしも、凛が見ていたと思ったら、急に……」
つっと俺が身体を離すと、セイバーは胸を手を隠す様に置いて呼吸を整え、それから恥ずかしげに笑った。
「ああ……でも、ちょっと驚いた」
俺は素直な感想を述べると、ふと遠坂の方を見やった。
「そんな……セイバー、胸だけで?」
俺達のすぐの所にいた遠坂は、目の前で見せられたセイバーの絶頂に少なからず困惑を隠しきれない様子。
「はい……シロウがあまりによくって、わたし……」
セイバーの応えにぐっと息をのむと、それから自分の胸をちょっと仰いでから羨ましそうに見る。
「凄い……」
そして、何かに気付いたように急に俺を睨むと、
「だから最近、士郎ってわたしの胸にご熱心だったのね……」
思い出したのか、むーっと半分呆れ気味に非難の目を向けてきた。
「あ……いや……」
――実は遠坂の考えたとおりだったりする。セイバーが胸でこれだけ感じてくれるから、遠坂もどうかな……って思っていた。だけど、それは別に比較しようだとか思った訳じゃなくて、どちらかといえば遠坂にも気持ちよくなって貰いたいからと思っての行為であって――
「まあいいわ。その辺は士郎の努力に期待するわよ」
「ん?」
と、遠坂はぶっきらぼうにもちょっと認めてくれたようだった。
「ほらほら、セイバー。次はわたし達の番よ」
「え……あ、はい……」
と、遠坂はまだ快感から冷め切らぬセイバーと一緒に俺ににじり寄ると、
「まずは……やっぱり先に男が全部脱ぐものよね?」
「うっ……」
と、すっかり二人と触れ合っているうちに元気になった俺の下半身を指差し笑った。
「は〜い、脱がしてあげますね」
まるでからかうようにトランクスへ手をかけると早速脱がしにかかるが、なんだかとても楽しそうだ。普段はそんなこと殆どやらないのに、セイバーの前で張り切っているなと思えてしまう。
「わ……もうおっきい」
引っ張られるまま素直に協力してやると、完全に顔を見せたペニスの先端に手を伸ばして、指でツンとつつく。
「くっ……」
情けないかな、その刺激に思わず呻くと、遠坂はおもしろがって何度もそれを繰り返してきた。
「ほらほら、セイバーもご挨拶なさい?」
「ふふふ、そうですね」
まるで珍しい物を見るかのように俺のそこを見つめると、セイバーも一緒になって弄んでくる。
「失礼します……」
間抜けな言い口をするセイバーも、遠坂に続いて俺の幹をきゅっと握りしめてきた。
「ああ……」
思わず出る溜息は、そうやって二人にいいようにされているから。どちらかと言えば情けない姿なのだが、それでも気持ちよさには逆らえない。
「元気ですね、シロウ――」
と、どちらかと言えば積極的なのはセイバーの動き。幹をこすこすと扱いてくれるから、次第に高まってくる感覚を苦笑して伝える。
「ふふふ……それでは」
そんな俺の先端が赤く膨らんでいくのを認めると、さも当たり前のようにセイバーは顔を近付け舌をちろりと覗かせるから、その淫靡さにちょっと興奮を覚えた矢先、
「ちょ、ちょっと、セイバー?」
「?」
突然、その行為を遠坂が止めていた。
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