「先輩、綺麗ですよ」

 見惚れながら、そう呟いて。
 晶の体が秋葉に近付いた。
 そうして、一瞬だけ秋葉の視界から消えた後。
 晶はするりと後ろに回り込み、秋葉の体を抱きしめる。

「あっ……」

 ぴくりと秋葉の体が震え。
 それから安心したように体重を晶に預けた。
 その秋葉の行動が、嬉しい。
 自分に全てを任せてくれているようで。
 秋葉の重みが心地よい。
 体温を間近で感じながら、そっと目の前に広がる美しい髪に顔を寄せる。
 秋葉の臭いが、鼻孔から肺一杯に広がってくる。
 そのまま髪に顔を埋め、艶やかな絹糸を唇で愛でる。
 つつっと、唇に滑る柔らかな感触。
 全く遮るもののない流れに、ただうっとりとしながら愛撫を加える。

「先輩の綺麗な髪、羨ましいです」

 本心からの言葉。
 髪の短い自分にとって、秋葉の髪はそれだけで崇拝の対象。
 自分には似合わないと知るこの美しい海は、美の極み。
 優しく、愛しく唇で撫で、そのまま流れるように耳に唇を寄せた。
 秋葉の小さな耳元で、囁くように息を吹きかけ。

「これから……もっとたくさん、ね」

 語りかけると、耳たぶに優しく舌を這わせた。
 少しだけ紅潮したその柔らかな肉に触れると、たまらないように秋葉が吐息を漏らす。

「ああ……瀬尾」

 快感に打ち震えた声で、秋委がぞくりと身を震わす。
 同じように、晶もそんな秋葉に震えを覚える。
 くたっとより弛緩した秋葉の体に、自分の体を押しつけていると思うだけで。
 より自分の体が熱くなっていくのを感じる。
 その疼きを解放させようとより優しく耳朶に舌を這わせ。
 その奥の入り口までも唾液で濡らして、愛撫する。

「先輩……」

 晶の手が、体を支えていた位置から動く。
 より密着するようになって、するすると下がっていく右手。
 そしてまくり上げられたスカートを通り、その奥へと這い入る。

「あああ……」

 内股にぴたりと張り付くように、晶の手が触れる。
 それだけで奥から蜜が零れるような快感。
 一人では決して得られないような、大きなうねり。
 奥へ進もうとする動きに、既に気をやりそうになっている。

「まだ触れてないのに……こんなに熱を感じます」

 晶はまだその中心に手を触れぬままから伝わる秋葉の熱に溜息を漏らす。
 熱く、求めている秋葉のオンナがそこに。
 近付けば近付く程、マグマに手を翳すかのように熱が伝搬してくるようで。
 その先に触れる事への悦びとなって、晶の熱をも増幅させる。

 そうして、秋葉の薄い恥毛へさわりと触れる。

「あ……」

 撫でるようにしてその感触を味わい、少しだけ引っ張る。
 それだけで秋葉が声を上げ、次を期待する。
 でもその通りにしない。
 ゆっくり、ゆっくり。
 預けられる体重の変化を愉しみ、秋葉の荒い呼吸が奏でる曲を聴き続ける。

「あふ……ああっ……」

 軽く上顎を反らすその姿を後ろから眺める。
 その顔の曲線が美しい。
 跳ね上がる髪が美しい。
 露わになる首筋が美しい。
 間近で見られる事の悦びをかみしめ、晶はようやく奥へ進んだ。

 一番奥、灼けるように熱い秘所。
 滾る洞窟の入り口は、とろとろと蜜を流して。
 晶の指が触れるだけで猥雑に蠢いた。
 
「あっ……」

 秋葉がひくっと反応し、その入り口を狭くさせる。
 瞬間、指は反動で上部に隠れる真珠へと触れた。

「あはぁっ!」

 激しく秋葉が悶える。
 予期し得ぬ強い電流にピリピリと身をくねらせ。
 指の腹が触れただけだというのに全身を震わせる。

「先輩……凄く感じてますね」

 嬉しく思い、そのまま真珠を優しくこねる。
 くりくりと、質感のある反応が返って。
 その度に

「あっ! あああっ……!」

 秋葉の震えは大きく、激しいものとなる。
 指に会陰部までしたった蜜を絡め、もう一度それを塗りたくるようにする。

「だめ……だめ……」

 秋葉は声も意識も虚ろに、ゆるゆると与え続けられる拷問のような愛撫に声を上げる。
 単調な動きと刺激は、やがて脳を狂わせる。
 そこまで辿り着けぬとも、せめて入り口まで。
 自らも荒い呼吸にまみれながら。
 自らも気をやりそうになりながら。
 どちらが先に狂ってしまうのか。
 こころを崩す時間が過ぎ続けていった。

「先輩……おかしくなっちゃってください」

 早くおかしくなって、私を求めて下さい。
 気を失うまで、好きなだけ味わせてあげますから。
 でないと、私がおかしくなっちゃいます。
 早く。
 早く。
 はやく。
 ハヤク。
 ハヤク!

 はぁはぁ
 はぁはぁ

「……せ……お……」

 ふたりだけの吐息が溢れる中、遂に秋葉が声を漏らす。

「意地悪、しないで……」

 涙声になりながら後ろを虚ろに見つめ、そのいたく冷静な瞳に訴えかけた。

「……も……っと……」

 それは陥落を告げる合図。
 それは開始を告げる合図。
 それは、晶を求める合図。

「解りました。先輩」

 晶は屈託のない笑顔でにこりと頷く。
 そして、指をその深部に埋もれさせるため、きゅっと秋葉を抱き、躰を密着させた。

 つぷり

「ああああ……」

 第一関節が埋まっていく感覚。
 まるで煮えた水飴に手を突っ込むような感覚。
 そして吸い取られ、捕まれるような襞の感覚。
 秋葉の膣に指が進入し、奥へ奥へと進んだ。

「い、いい……」

 秋葉の声はからからに焼けて、最早いつものような凛とした透き通った声色でない。
 艶と羞恥にまみれたオンナの声。
 これが、聞きたかったのだ。
 誰にも聞かせたくない、そんな声を。
 誰かの前では聞かせているのであろう、そんな声を。

「先輩……もっと、してあげます」

 そう言うが早いか、指を大きく差し込む。
 根本まで吸い込まれるようにして、膣を探った。

「ああっ」

 最深部に着くと、秋葉が仰け反って首筋を露わにする。
 その汗に浸みたラインが美しく、晶は舌を這わせた。

「ひゃぁっ……」

 中心と、そして首筋に与えられる熱い感触。
 ぞくりとする気持ちよさが、狂わせていく。
 信じられない程の熱。
 自分の発する熱に自分が融かされている。

「ほら……先輩」

 ずっと音を立てるようにして、晶の指が入り口まで戻る。
 今度は指を鍵状に曲げ、壁を擦られた。

「あはぁ!」

 直接的な強い刺激に、飛ぶ。
 何が何だか解らないような気持ちよさに、腰から下が自分のものでなくなっていく。
 ぐちゃぐちゃ卑猥な音を立て。
 どろどろと淫乱な愛液を流し。
 ぐらぐらと視界が歪み始める。

「い……ああ……」

 そんな秋葉の声に、晶もまた溢れるものを感じる。
 自分の躰の熱が、そこから流れ出して下着を熱くさせている。
 たまらない声と、たまらない動きと、たまらない臭い。
 ふたりの出す性臭が思考をおかしくさせている。
 こんなにツメタイ夜なのに。
 こんなに熱いワタシタチが。
 こんなに淫らに生きている。
 なんて――酷い、夜。
 それを感じずにはいられない。

「ああ……先輩」

 知れず腰を秋葉の躰に押しつけ、胸の突起を背中にこすりつける。
 心地よさに、何度も軽く達し。
 また秋葉をおかしくさせている。
 もっと深いところへ。
 もっともっと、凄い高みへ。
 連れて行きたい。
 連れて行って欲しい。
 そんな気持ちが、指を2本に代えようとしている時だった。

 何かが、ふたりの視界を覆った。