一度たがが外れてしまうとなんとやらと言うか、結果的に遠野家公認となった俺達は、昼夜を問わずいちゃいちゃしだした。 翡翠はそんな俺達に何も言わなかったけど、あれで結構怒ってるのかもしれない。ほぼ毎朝起こしに来ると、二人で絡み合って寝ているか、もぬけの空なのだから気に障るだろう。 「ああー!! もう我慢できません! 弓塚さん、貴方は解雇! 解雇です!!」 怒髪天を衝く、とはまさにこれの事。 「あら〜。秋葉様、嫉妬などという私情で労働者を解雇するのは、雇用者として失格ですよ?」 あまりの事にきょとんとしている俺達を後目に、なだめる琥珀さんをはね除け、秋葉は早々と解雇を決定してしまっていた。 「……ということで弓塚さん、すみませんが秋葉様のお怒りに触れちゃったので、ここは……」 さつきがちょっと残念そうに呟くと、秋葉がギロリと俺達の方を睨んでいた。 「琥珀さん、翡翠さん、短い間だったけどありがとう」 すっかりうち解けあった三人は、秋葉を無視してちょっとしたお別れの会話を繰り返し…… 「では弓塚さん、これ、少ないですけれど……」 そう言って、さっき金庫に向かっていた琥珀さんが、茶封筒をさつきに手渡していた。 「うん……ありがとう。楽しかったのにお金まで貰っちゃって……」 その言葉に、隅っこにいた秋葉が鋭い視線を投げかけるが、二人とも気にも留めていないようだ。 「ありがとう、ご・主・人・様」 チュッ そう言われると、突然頬にキスされて、俺はお子様にも顔を赤らめてしまった。 「弓塚さん、学校で志貴さんの事『ご主人様』なんて言わないで下さいね〜」 琥珀さんにからかわれ、関係ない俺の方が正直自身がなくなっていた。 「えへへ……ちょっと、中見ちゃお〜」 そうしてさつきが、ふと手にしていた封筒の中を覗いた時、 「……えっ?」 さつきの世界だけ、時が止まっていた。 「ん?」 俺は何があったんだろうと思い、横からのぞき見してみると…… 「こ、これ……」 正確な量は分からないが、そこには大量の諭吉様が鎮座ましましていた。 「こ、琥珀さん……?」 琥珀さんは俺の質問に答えず、始めから用意していただろう、もう一つの封筒を俺に手渡した。 「少し色も付けておきましたけど、遠野家のお給料はこんなもんなんですよ〜」 手渡す時、小声で琥珀さんがそう言ったが、開けてみると……さつきよりは少ないけれど、やっぱり初任給にも値する金額が入っていた。 「はい、これで契約は完了ですね。あとはご自由になさって下さい〜」 そう言われて、俺達は顔を見合わせてしまった。 「ご自由に……って」 こんな大金が貰えるとは正直思っていなかったから、喫茶店でブラブラお茶しようだとか、映画に行こうだとかいう当初の予想はあっさり崩壊していた。 「そうだ」 ひとつ、思いついた。 「さつきはちょっと待ってて。すぐ戻るから」 まだぽかんとしているさつきを居間に残し、俺は部屋に帰って、いつものバッグに適当に着替えと洗面用具を詰め込んで戻ってきた。 「お待たせ」 何故かバッグを背負った俺にハテナマークいっぱいのさつき、そんな可愛い姿の彼女の手を、俺は笑って引いた。 「うん。お金も入ったし、折角さつきが荷物あるんだから、このまま旅行でも行こう?」 驚いていたのは、さつきと翡翠と、秋葉だった。 「もう四月だしさ、予約なんていらないと思うし、足を伸ばして京都なんてどう? きっと桜も満開だと思うよ?」 俺がね、と同意を求めると、琥珀さんもそうですねーと頷いてくれた。 「……うんっ!」 そう言って俺の手を握り返してくれるさつきの笑顔は可愛くて、おもわずぎゅーっと抱きしめたくなった。 「じゃ、そう言う事で。留守の間はよろしく、琥珀さん」 俺は翡翠にも笑いかけると、翡翠もにっこりと笑いながら「行ってらっしゃいませ」と礼してくれる。 「さ、そうと決まったら早速行こう。今日は金閣寺から夜桜見物かな〜?」 なんて、大して知らない京都の町を想像しつつ、俺達は部屋を出ていった。 「に……兄さんの、馬鹿ぁ〜!!」 最後に秋葉の怒号が聞こえたが、そんなものは俺達には聞こえない。 「ふふふ……まだしばらく一緒だね、志貴くん」 肩を寄せ合いながら、やんわりと暖かくなってきた日差しを背に、屋敷を飛び出していた。
〜あとがき〜 書いた時には、まさかさっちんがアニメでこんなに活躍してくれるとは思いもせず……(笑 タイトルは、参加したイベントが「巫女メイドマニアックス2」、略して「MMM」だったからです。 「先輩、先輩の書きたい分はまだ終わってないんですよね?」 とまぁ、流石編集長だけあって、うまくおだてられた気分です。 中身は、かなり前から書きたいと思っていた、さっちんによるメイド本です。 ……で、さっちんはメイド服が似合うと思います。その欲望を、もうだらだらと綴ってみました。後は、ひかえめなさっちんが、えっちの時に、はしたないと思っていて喘ぎ声をこらえてる姿もうまく組み込んで……自分でもたまらないです さっちんはいいよね。うん、なんていうかみんな目を背けすぎです。こんなに可愛い娘がいるのに、それで18禁SSを書かないなんて勿体ない。ということでみんな、目を覚ましてくれたかな?(笑 |