昨日あっての、今日。 「なんか可笑しいなあ、さつきがウチで泊まり込みなんて……」 ついにやけ顔になってしまい、向かいの秋葉の視線が痛いのだが気にしない。屋敷の異常な広さや、一時的だとか言う事はさておき、まさに同棲なんだから…… 「お待たせいたしました〜」 と、何故かドアを開けて入ってきたのは琥珀さんだけだった。 「あれ?」 と、琥珀さんはドアの向こうにいるらしいさつきに笑いかけていた。 「ほら、志貴さんがお待ちですよ」 何やら言っているが、よく分からない。 「さぁ、恥ずかしがらずに。え〜い」 !? 「ゲホゲホ……って、さつき!?」 さつきは翡翠と同じメイド服を着て、そのまましぼんで消えてしまいそうな程小さく立っていた。 「どうですか志貴さん、折角住み込みで働いてくださるので、使用人として制服なんか用意してみましたが」 俺はそんな琥珀さんに、心の中で親指を立てて感謝していた。 「似合う……かな、志貴くん?」 自分の服装を見回すようにして改めてさつきが問うてくると、俺は正直にコクコクと頷くしかなかった。 「ということで、さつきさんはしばらくの間遠野家の使用人ですから、志貴さんも遠慮無く使ってあげてくださいね。何せさつきさんのご主人様ですから」 そう言う風に言うと、まるで普段から琥珀さん達にご主人様ぶってると思われ……あれ? 「ご主人様……かぁ、ご主人様」 さつきはごにょごにょと呟きながら、頭から湯気が立つかと思える程に紅潮していた。 「よろしくお願いします、ご主人様……」 そう言ってぺこりと頭を下げられて、正直可愛くて抱きしめたくなる衝動に駆られた。男として至福の瞬間。しかし、みんなのいる手前(特に秋葉)何とかこらえて、 「あ、うん……」 俺はドキドキを抑えながら返事するのが精一杯だった。 「さてさて、とりあえず弓塚さんには遠野家の使用人としてのお話がありますから、志貴さんは先に行ってて下さいな」 琥珀さんに居間から追い出されるようにしてドアを閉じられると、俺は立ち聞きしたい衝動を抑えつつ、仕方なく自分の今日の持ち場に向かっていた。 「で、さつきはいつまでそれを着てるの?」 夕食。 「ごめんなさい、琥珀さん、翡翠ちゃん。私ばっかり……」 そんな感じで、食卓に三人、秋葉は思いっきり不機嫌だけど、俺とさつきは琥珀さんや翡翠と談笑しながら楽しく食事した。 「ごちそうさまでした」 そう言いながら食器を下げる琥珀さんに、さつきが立ち上がって 「あ、片づけくらいは……」 と申し出たが、琥珀さんはやんわりとそれを断った。 「志貴さんのお話相手をしてくださるのも、使用人のおつとめと思ってくださいな」 流石琥珀さん、断り方まで悦に入っているな。 「志貴さま、お風呂の用意が出来ました」 と、さっきから席を外していた翡翠が戻ってきて、俺に告げた。 「ありがとう。ん〜、早速入ろうかな?」 やっぱり一日作業をしているから、疲れが溜まる。さつきと一緒だと、格好付けたい男の性か、ついつい見栄を張っちゃって、ひとつ余計に荷物を持ったばっかりにバラバラと書類をこぼしたりと、結果は好転した試しはない。 「はい、それでは……」 といつものように翡翠が応対してくれようとした時 「あ……志貴くん」 と、立ち上がろうとした俺の袖を掴んで、さつきがこちらを見上げてきた。 「ん?」 俺は何だろうと思い、次の言葉を待っていたが 「あの……琥珀さんに言われたんだけど……お背中、お流しします……」 その一言は、俺と翡翠を同時に驚愕させていた。 「え? だって琥珀さんが『使用人たるものご主人様のお背中を流さないでなにが使用人ですか!』って……翡翠ちゃんもやってるって……」 その言葉に、俺と翡翠は共通の認識を抱いたに違いない。 「そ、そんな事してないから! 俺はいつも一人で入ってるって!」 何も慌てる必要はないのだが、ここはちゃんと否定しないと色々厄介事になりそうだったから。 「そうなんだ……」 さつきが納得してくれて、良かった……と思っていたら、翡翠があまりの事に混乱して暴走しちゃったか 「でも……弓塚さんが望まれるのでしたら、ご一緒するのも宜しいかと……」 とか言ってしまっていた。 「ひ、翡翠?」 思わぬ翡翠の発言に、またこっちは慌ててしまう。出してみて気付いたけど、今の声裏返ってたし。 「あ……申し訳ありません!」 翡翠はそれで顔を更に真っ赤にしてしまうと、慌てて部屋を出て行ってしまった。 「……」 残されて俺達は会話がなかった。 いや、ちょっと確かに憧れはするけど、翡翠には頼めないし……ご一緒すると言う事は……いや、そんな事したら色々ダメで…… 「あの……さ、着替えだけ用意して欲しいかな。いつも翡翠にお願いしてたから、場所は翡翠に聞いてよ」 そうして、俺達は何とかそれだけやりとりすると、ぎくしゃくしながらそれぞれ別れていた。 「ふ〜」 ベッドに寝転がって、一日の疲れが染み出てくるようだ。 「はぁ……」 ぼうっとして読書などしていたが、すぐに本をほっぽり出して天井を見る。 ……やば そんな事を考えてたら、ムスコが元気になってきた。 「仕方ない……」 何かに納得したらしく、俺はベッドの下にある有彦からの借り物に手を伸ばそうとした時だった。 「……はい」 俺は少しだけ慌てて居住まいを正すと、廊下に向かって返事をした。 「……失礼します」 ドアをゆっくり開けて入ってきたのは、さつきだった。 「……? どうした、さつき?」 用事も何も言わず、普段と違って緊張したようなさつきに、俺はハテナマークを浮かべたまま声をかけた。 「志貴くん……ううん、ご主人様……」 こちらを見ると 「あの……夜のご奉仕に、伺いました……」 と、信じられぬ事を言った。 「え? ええっ!?」 俺は飛び上がらんばかりに驚くと、さつきがこちらにゆっくり歩み寄ってきた。 「あのね、琥珀さんが志貴くんが溜まってるだろうから、夜伽でご奉仕するのもメイドの重要な仕事だって……」 そう言うと、ベッドの端に立ち止まる。 「ちょ、ちょっと!」 俺は後ずさりすると、ベッドの背もたれに背中をぶつけた。 しかし、真に受けてしまったのか、さつきは真剣な表情だった。 「ねえ、志貴くん……私じゃ、嫌?」 そう言われると、回路がプチプチと焼き切れた。 「そうじゃないけど……そういう事は」 さつきが、俺の言い訳を遮るように言葉を発した。 「……私も、志貴くんに……して、貰えなくて……だから……」 そう言われたら、反則だった。 「だから……お口だけで良いから……させて」 と、さつきはベッドの上に遠慮がちに上がってくると、俺のズボンを下ろし、トランクスのボタンを外してしまった。 「ん……こんなになってる……」 さっきからおさまりが効かなくなってたペニスは、既にかなりの大きさになっていて、さつきはそれを見つめると、何の迷いもなく舌を這わせていた。 「くっ……!」 久しぶりの感覚に、俺は飛びそうな感覚で呻く。 「んっ! ……じゅ……ふっ……気持ちいい……ですか?」 さつきは恥ずかしそうに上目遣いでこちらを見て、自分のはしたなさに恥じているようだった。それなのに舌の動きは決して止めず、むしろ情熱的に絡め、吸ってくれていた。 じゅ……ちゅるる……じゅうっ…… 部屋に響く水音が、耳から俺の心を沸騰させていく。 「ん……先からもう出てる……ん……ふうっ……」 先走りを舌ですくい取り、鈴口に愛撫を加えながら、同時に陰嚢を柔らかくさすられて、一気に背中がぞくっと来た。 「さ、さつ……き……!」 久しぶりの感覚に呻いて、俺は止める余裕もなく、精液をさつきの口内に迸らせてしまっていた。 「ん……ん、んくっ……」 自分でも大量に出たと思えるそれを、さつきはこくりこくりと飲んでくれている。口内にペニスを含んだまま、びゅくびゅくと反応する突き上げに口をすぼませ、あふれ出す精液を嚥下した。 「ん……はぁ……」 最後に鈴口を吸ってちゅっとすると、さつきはとろけた表情でペニスからこちらに視線を移し、にこっと笑った。 「いっぱい出ましたね、ご主人様……」 淫蕩な表情。 「さつき……」 もうだめだった。 「あっ……ん……」 痛いはずなのに抗いもせず、さつきは息を荒げていた。 「さつき……四つんばいになって、お尻を向けて……」 さつきに命令すると、一瞬驚いた様子だったが、自分の立場を思い出したのだろう、素直に従ってくれた。 「んっ!」 触れた瞬間、いや触れる前からさつきのショーツの中心は濡れていて、俺が触れただけなのにビクッと身体を振るわせ、シミがまた一段と濃く、大きくなった。きっと俺のを銜えているうちに興奮してしまったのだろう。 「んっ……し、き、くん……」 「さつき……さつきはえっちなメイドさんだなぁ……」 最後に一度置くまで差し込んでから指を抜き去ると、二本の指には既にとろとろのさつきの愛液が絡みついて、部屋の明かりに光っていた。 「んんっ……いやぁ……だって、志貴くんが」 俺が言葉の途中で訂正してやると、ぼうっとしながらも気付いたらしく、さつきは一瞬言葉を飲み込んで 「……ご主人様がしてくださらなかったから、さつきは我慢できなかったのです……」 もう変態プレイも良いところだ。しかし、めちゃめちゃに興奮して仕方がない。 「もっと言って」 俺はクリトリスに触れるか触れないかで指を彷徨わせながら、言葉を求めた。 「……はい、さつきはご主人様の……おちんちんを銜えながら感じちゃう、いけないメイド……ひゃぁっ!」 最後まで聞ける余裕さえ俺になかった。 「ひゃ……あ、だめえ……ご、主人様ぁ……」 腕に力が入らなくなったか、途中からがっくりと崩れ去り、肩で身体を支えてさつきがシーツをぎゅっと掴み、襲いかかる快感に喘いでいた。 「さつき、入れるよ……」 もう我慢できない。 「あ……ご主人様。ご主人様の好きなだけ、突いてください……」 身体にもう力が入らないか、言葉だけでも従順を誓うとばかりに、さつきがくの字に折れ曲がるような格好でこちらを見た。 「いくぞ……っ!」 俺はそんな光景に飛ばされると、その中心に滾ったペニスをあてがい、一気に挿入した。 「あああっ!」 さつきが感極まった声をあげる。 「さつき……いつもより狭くて熱いよ……」 俺はその内部の快感を味わいながら、腰を前後させた。 「んっ、んんっ! 志貴くんも、凄くおっきい……っ!」 声が出てしまうからか、さつきは枕に顔を埋めてしまいぎゅっとその端を握っていた。 「あっ……あ、んふうっ……、ふうっ、あ、あ、あっ……」 俺の動きに合わせてくぐもった声が聞こえる。それは俺がさつきのお尻にぶつける肉の音よりも小さく、微かに聞こえる程度。くちゅくちゅと鳴り響く結合部のそれよりも微かで、淫蕩な気分があった。 「ん! ダメ、ダメ……もうっ!」 さつきが二度目の絶頂に向かって体を震わせた。 「んっ、ん、んんっ〜〜〜〜〜!!」 さつきが枕に必死に顔を押しつけ、絶頂の声を押し殺した瞬間、俺も弾けた。 「ん……んんんっ……あっ……熱い……ご主人様の精液が、中でいっぱい出てる……」 どく、どくっと精液の固まりが出るたびに腰を打ち付け、そのたびにさつきがビクンと揺れ、声を出す。熱い迸りを後ろからさつきに打ち込みながら、一瞬真っ白になる。 「ん……はぁ……」 最後の一滴まで全部さつきの中に放出すると、俺は掴んでた腰から手を離した。 「すごい、感じちゃった……自分も気持ちよくなっちゃうなんて、私……メイドさん失格、だね……」 まだ少し呼吸は不規則で、ぼうっとしてとろりと溶けた瞳で言われると、凄く嬉しかった。 「いや、さつきはいくらでも気持ちよくなっていいよ。その方が嬉しいから」 そっと頬や首筋に舌を這わせて、自分のモノだと顕示するようにキスマークを付けていった。 「志貴くん……」 さつきも身体を翻し、俺の胸に顔を埋めてキスする。そんなさつきの頭を撫でてあげると、シャンプーの匂いでぴくりとペニスが反応してしまった。 「さつき……もう一度したい……」 俺が素直にそう告げる。正直何日も我慢していた分は、とてもじゃないけど一度や二度じゃ治まりそうにはなかった。 「うん……さっきも言ったけど、私は志貴くんだけのメイドだから……ご主人様のしたいだけ、私を愛してください……」 逆にきゅっと抱きしめられて、心地よい疲れまでもが一気に吹き飛んでしまった。 「……志貴さま、弓塚さん」 翡翠の声が聞こえる。それに弓塚って……って!? 「志貴さま、弓塚さん」 俺は急に覚醒すると、がばっと起きあがった。 「……おはよう、翡翠……」 二人とも真っ赤になりながら、布団の中で縮こまっていた。 あの後、俺達は今までの埋め合わせをするかの如く、激しく愛し合ってしまっていた。 「十分、こうしていよ……?」 とさつきに言われ、十分、十分……と思っているウチに、どうやら二人とも寝てしまったらしい。 「お食事の用意は出来ています。その……なるべくお早く服を着てからお越し下さい」 そう言うと、翡翠は一礼をして部屋を出ていった。 「……」 何とも気まずい雰囲気でさつきと交互に見つめ合う。 「さ、さつき……着替えるから、そっち向いてて」 俺はとりあえずバッと窓の方を指さすと、ベッドから這い出て服を着込んでいた。 |