(ナニかあったと思いねえ)

 

 

「はあっ……志貴さん。順番は変ですけど、わたし、志貴さんに初めてをあげられて……一番幸せです」

 アキラちゃんはその遠い深淵から意識を蘇らせてくると、すぐ側にいた俺にきゅっと抱きついて甘えてきながら、そんなやばい事を言ってくれた。

「アキラちゃん……」
「契約、します」

 ぽうっと光、そしてそれはアキラちゃんの中へ……

「志貴さん、えっちなわたしにしたんですから、ずっと責任とってください……」
「……」

 クスリの所為ではないだろう一言に、この娘は、本当に真正のえっちな娘かもしれないと思うと、俺はそんなアキラちゃんをもっと開発してあげたいと思った。すっと手を伸ばして、アキラちゃんの顔を近付けさせる。

「……」
「……」

 今更、こんなキスなんて順番がおかしいな、ふと笑いながら、俺はアキラちゃんの唇を優しく奪って微笑んだ。

「アキラちゃん……」
「志貴さん……ひゃあっ!」

 見つめ合ってると、突然アキラちゃんが跳ねた。

「ほらほら志貴さんも瀬尾さんも、自分達の世界はやめてくださいね〜。わたし達がいるんですから、うりうり〜」
「ひゃ! アンバーさん……何を!?」

 気付けば、琥珀さんがアキラちゃんのセーラー服の中に手を突っこみ、何やら胸の当たりをもぞもぞと弄っていた。服の上から弄られるその皺の動きがなんだかいやらしい。

「は、はぁぁぁ……!?」

 ようやく琥珀さんの悪戯から開放されてホッと息を付くアキラちゃんだったが、すぐに異変が現れていた。今度は胸の当たりを押さえて、自ら撫でている。
 対する琥珀さんの方は、その手にトロトロの液体……先程の媚薬を絡めてアキラちゃんの胸を可愛がっていたようだ。その名残の液体が指に絡みついてるのを、一本一本美味しそうに舐めていた。

「琥珀さん、それ……」
「はい。媚薬はまだ残ってますから、折角だからみんなでぱーっと使っちゃいましょうと思いまして。ほら、翡翠ちゃんも……」
「え……あ、翡翠」
「ううんっ……はあっ、わたし、こんなの……っ!」

 気付けば、さっきから部屋の隅で始終を見守っているだけだったはずの翡翠まで何だかおかしな様子で、腰の辺りをもじもじとさせていた。

「まさか、あの紅茶の……」
「はいー。お砂糖の変わりにちょちょっと仕込ませて頂きましたよ〜」

 琥珀さんが手にしてる薬瓶は既に空っぽだ。あれだけあったはずなのに、俺達四人で全部使っちゃった訳なのか……

「さぁ志貴さん。わたしもこうやってますけど、もうおかしくなりそうなんです……お慈悲を、下さいまし……」
「ううう、志貴さんっ……また、今度は胸が熱いんですぅ……」
「志貴さま、わたしもう……だ、め……」

 なんて言うか、一気に凄い事になりそうだな。でも、もうアキラちゃんは俺達の事をどうにかしようなんて思わないんだし、今更あっちに行っても何もない。なら、今はこれに乗るのも悪くないか……

「よし、まとめて相手してやる。腰が立たなくなっても知らないからな……」

 ギンギンに復活していた自分のそれを感じると、俺はニヤリと笑って全員をベッドに呼んだ。

「志貴さーん! 次はこっちですー!」
「ひいい……待ってよアキラちゃん……」
「ああ! もうこんな列が! 早く並ばないと!」

 翌日。
 結局全員引き分けと言う事で、一つのベッドで俺達は眠った。まぁ、朝起きたら俺とアキラちゃんだけが布団を掛けられてて、琥珀さんと翡翠はいつも通りにこりと朝のお目覚めをしてくれたわけだが。
 で、お互いの目的は果たした訳なんだし、とっとと秋葉が怒らない内に屋敷に帰るのかと思ったら……

「はい〜、アンバーちゃんの妹、ジェイドちゃんですよ〜」
「あわわ、アンバーさん、わたしもアンバーさんの妹にしてください……」
「あは〜、じゃあ妹の妹。アキラちゃんで〜す」
「きゃっ! アンバーさん、抱きしめ……お姉さまぁ……」

「はぁ……」

 ……やれやれ。
 結局三日目があるとかで、俺は付き合わされてるわけで。それも、アキラちゃんの荷物持ちに、写真係。並み居る紙袋を下げた人、カメラ野郎に混じって自分がそうなるだなんて、一昨日には思っても見なかった結果だった。両手には紙袋。そして首からはストラップに下がったカメラ。やな格好だと、本能が語っていた。
 琥珀さん達は、昨日のアキラちゃんの制服がよほど可愛かったのか、みんなで同じ格好をしてまるで百合の園の如く――いや、実際昨日の夜はアキラちゃん、琥珀さんに大分可愛がられてたから、本気かも――仲睦まじいをちょっと妖しいところで越えそうな関係を漂わせつつ、コスプレブース最大の華となっていた。

「は〜い、取るよ〜……」

 俺はいかにもやる気無いようにファインダーを覗くと、アキラちゃんの持ってたデジカメをズームさせて、
 ……
 俺は、琥珀さん達の後ろに、はっきりと見覚えのある姿を捉えていた。

「どうしました〜? 早く撮って下さいよ〜」
「い、や……ちょっと待って」
「?」

 俺はその方向へ歩み寄ると、やはり琥珀さん達と同じ格好をしている人物を見つけて……ノリノリのその人の背後から声をかけた。

「……先輩」
「あ、遠野君……」
「あー、マスター様も来てたんですかー?」

 ……先輩。
 まさか『別行動』が本当にこんな意味だとは思っていませんでしたよ。しかもななこちゃん――セブンを先輩は普段そう呼んでいるから、俺もそうしてる――にまで同じ格好させて……

「あは、あははは……ほら、今回琥珀さんからここが怪しいって言われたので、折角だからー、と思いまして、あははは……」
「あー、皆さんいますね。あ、カメラ! マスター様、わたしも撮ってください〜」

「……」

 何て言うか。
 この三日間、報われてないのって俺だけ!?
 っていうか俺、確か誉れ高きセヴンスナイトなんだよなぁ……何だか、涙が出てきた。