空想科学月姫 〜その3〜
「ネロ教授の体を科学する」
「志貴ー。ここって志貴の学校より広いねー」 俺たちは今、三咲町から最寄りの大学のキャンパスを歩いていた。メインストリートは非常に活気があり、大学の自由な空気が心地よかった。 今日はオープンキャンパス。日頃あまり出かける機会もないし、折角だからとアルクェイドを誘ってやってきたのだった。 「へー……」 教室を見渡し、俺は声を上げる。 「あ、ほらほら志貴、そこが開いてるよ」 アルクェイドは中段位に2つ空いている席を見つけ、俺の手を引っ張った。 「よっと……うん、いい眺めだなぁ」 見下ろすという感覚が爽快だ。高低差を感じて不思議な感覚にとらわれる。 「ところで……何の話を聞くの?」 アルクェイドは俺の方を見て聞いた。 「確か……物理・化学・生物の融合とかそんなタイトルだったような……」 公開講座として一般に開放される授業。看板にはそう書かれていた。 「へー、サイエンスの話なんだー。別に枠組みなんていらないのにねー」 アルクェイドはあっさりと答える。でもそれが真理であった。 「そういえば……おまえ、科学なんて分かるのか?」 楽しそうに開始を待つアルクェイドに、俺はふと思った疑問をぶつけてみた。 「志貴……わたしの空想具現化って、どうやってると思う?」 その笑みは、とても穏やかだった。 「―――――あ」 しばらく考えた後、なるほど。 「そういうこと。だから分からないことがあったら何でも聞いてね」 アルクェイドは控えめに言うが、俺はこの時物凄い天才と一緒にいるんだなぁと、改めて実感させられてしまった。
しばらく後、教室のドアが閉まった。 ガチャ…… ドアを開けて入ってきたのは、相変わらず俺の見覚えのあるヤツだった。 「あら」 横にいたアルクェイドも、見慣れたその姿に普通に反応していた。 「学生達、よく来た。私はネロという」 なんで……こいつがここに。 「少年、どうした」 めざとく俺を見つけたネロが話しかけてくる。 「いや、ネロ……教授、ここの人だったんですか」 頭を抱えながら答えた。 「うむ……丁度研究施設も整っていてな。この間から雇われている」 死徒が被雇用者ですか……なんだか涙を誘うがネロが満足してるならいいや。 「それでは、講義を始めよう。今回は私の体をテーマにして、様々な科学の切り口を見せようではないか」 |