「ん…あ、先輩おはよう」
何となく視線を感じたから目を覚ます。
「遠野君…おはようございます」
気が付けば、先輩が横で微笑んでいる。
「俺、寝ちゃったのかな?」
「はい。流石に遠野君も私も疲れましたからね」
そう言いながらも、もじもじと自分の指を胸の前でくるくる回し、赤くなる先輩。

結局あの後、目を覚まして真っ赤になっている先輩が可愛いからそのまま正常位、バック、騎乗位、駅弁スタイルと4回。
「汗を流そう」と二人で入ったお風呂場で、シャワーで洗いっこしている間に、泡にまみれた胸の感触が気持ち良くって1回。
お湯の張った湯船の中ででも、ちょっと狭いからって密着していたら、つい俺のが「きかん坊」になっちゃったから1回。
それはそれで、改めてベッドに戻ってからも…何回したのか覚えてない。
交わって、出して。息が整ったらまた再戦と、それこそ数えるのも無理なほどした。
もちろん、全部中出しだ。これは先輩のご要望だから、とにかく外に出すなんて野暮な事はしなかった。
もちろん「後ろ」も無し。たまに指を差し込むと、途端に前の締め付けが良くなったりするから、驚いて予想外に出しちゃったりもしたっけ。

「うーん。ああ、こりゃ今日もサボりかな?」
窓の外、カーテンからの明かりはだいぶ射し込み、窓際の時計はいい感じでお昼を迎えようとしている。
「大丈夫です。今日は第二土曜日で休日ですから」
先輩の的確なフォローが入る。
「そっか…なら、まだまだかな」
目覚めの微睡みをもう少し楽しんでいたかったが、それよりもまだ足りなかった。
「まだ、ですか…?」
先輩もちょっと期待したよな、呆れたような表情をする。
「なんて言うか…やっぱり底なしです」
赤くなって、先輩が笑う。
「そ。先輩が悪いんだからね」
そう言うと、俺は先輩に乗りかかろうとして…ちょっと思い出した

「ねえ先輩、どうしてあんな事…言ったの?」
「えっ?」
「いや、何となく知りたいから」

俺は浮かんできた質問を投げてみた。
今までそんな事無かったのに、どうして急に愛されてないかもなんて不安になったのか…?

「…実は、私もちょっと焦ってたのかも知れません」

「え?」
意外だった。焦ってたって…?
「先輩?」
「遠野君が私だけを見ていてくれているのは解ります。でも、遠野君は何となく私が捕まえておけるような人じゃない、と思ってしまうんです。言ってしまえば「みんなのもの」って感じでしょうか?」
「みんなの?」
先輩は俯くように寂しげな、悲しげな、何かを噛み潰すような複雑な顔をしていた。

「そうです。ロアがいなくなって、私は運命から解放されて幸せになりました。平和になると、何でもない日常にも、不安が射し込んでくる余地が生まれてしまうのです。ひょっとしたら妹さんや、使用人のお二人とか…あのアーパー吸血鬼なんかに、遠野君の気持ちが移って、取られてしまうんじゃないか、なんて考えてしまったんです…」
「そんな…」
そこまで俺は考えてなかった。

正直、生きてきた世界が先輩とは違う。
確かに少し特殊だったけど、元の平和な時間に戻って、いつも通りの生活―先輩が側にいる事だけが違うけど―が続くと思ったけど、先輩にとって見れば日常が非日常だったんだ。不安にもなって当然だ。

「でも、考え過ぎでしたね」
先輩は顔を向けると、いつものにっこりとした笑顔に戻った。
「こうして、ちゃんと遠野君は私の横にいてくれるんですから」
決して作り物でない、先輩の笑顔。
そんな笑顔を抱え込むようにして抱きしめる。
「先輩、俺はここにいます。誰のものにもなりません。先輩のものです」
ちょっと恥ずかしいけど、先輩を安心させるための宣言…いや、それは当たり前だけど、先輩を愛した時から、俺の永遠の責務であり、生きる目的でもあった。
抱きしめる力を強くする。裸の先輩を全身で感じる。
だが邪な心はなく、何故か神聖な気持ちでいられた。

「そうですね…」
先輩も抱き返してくる。今は理性が勝ってるけど、そのうち負けて「おっ立て」ちゃいそうだから、そのまま新たなラウンド開始にしようと思った。

「…ちゃんと既成事実も作れましたし」
「そうだね…って?」
既成事実…キセイジジツ?ナンデスカソレハ?普通そう言うのは違うんじゃ…?!?

「せ、せせせせせ、せせせせせせせせせ、先輩!!?」

ガバッ!と抱いている手を離し飛び起きた俺に、先輩は体を起こしながら答える。
「はい、御察しの通りです」
何故か先輩の笑顔に、恥ずかしさとは別の朱が差し込んでいた。
「昨日、中に出してくださいって言ったのは、モシカシテモシカスルト????」
先輩はにっこりと頷くと
「実は昨日から今日にかけて、排卵日だったんです。これだけ沢山中に出して貰えれば、生命力旺盛な遠野君の分身ですから、きっと『できちゃって』ますよ。こうすれば他人に浮気なんてできませんしね。遠野君は私のものです」

…視界がぐらりと歪んだ。先輩とは対照的に顔に青みが差しているのが自分でも解る。
その前では、腹部の辺りに手を当てて、母親の目をした先輩。
「今から楽しみです。私と遠野君の子供ですよ。きっと可愛い子に違いないです」
「ちょちょちょちょ、ちょっと先輩!」
「何ですか、遠野君?」
そんな姿を見せられ、混乱まっただ中の俺に対し、先輩は余裕だ。
「俺、高校生ですよ。そんなパパになるなんて知れたら、学校行けません。それに先輩だって…!」
「その辺は大丈夫ですよ。妊娠は5ヶ月くらいにならないと見た目には解りません。そのころには私は卒業しています。流石にその後も交流の有りそうな乾君あたりにはマズイですが、そこは私の暗示で『預かった子供』とでもしておけば問題有りません。」
「そんな…」
暗示はありがたいですけど、我が家には暗示なんて、いくらかけてもかかりそうにない女傑が3人もいらっしゃるのですよ…

ああ…秋葉の檻髪が、琥珀さんのクスリが、翡翠の料理が思い浮かぶ…俺、オ先マックラ?

「こうなったら、受精卵を…」
眼鏡を外そうとした俺の手に触れる冷たい金属の感触。いつの間にか先輩はスラリと長くて美しい長剣を、その手に構えていた。
「変な事は考えないでくださいね。11ヶ月ほどベッドで生活したくありませんよね?」
「…はい」

完全に、俺は騙されていた。そして、結局は女性の手のひらで踊らされてるんじゃないかー!
結局、相手は誰であれ尻に敷かれる運命だったのね…ああ、涙が溢れてきたよ。
先生、助けてください。俺は先生にも尻に敷かれるかも知れないけど、今の境遇よりずっとマシです…

その時、俺は何故か針灸用の長針を持ち歩こうと誓った。隙あらばその点を突く為に。

…結局、先輩の日頃の激務がたたって、奇跡的に生理が遅れてくれたのが先輩にとっては誤算であり、俺にとっては神の助けであった。
3日遅れで「来ちゃいました…」とがっくりする先輩と、それを聞いて大喜び踊りまくっている俺を見たとき、周りの人はどう思ったのかなんて、この際細かい事は気にしちゃいられない。
(ちなみにその後、俺が学校をちょっと休む事になった理由も、ここでは教えない…グスッ)
お陰で、28日周期の計算が得意な、ちょっと珍しい男の誕生となった。

教訓:中出し最高…じゃなくて、「注意一秒、怪我一生」



後書き


月姫は去年の冬コミ時から知ってはいたのですが、「どうせたかが同人だし」と高をくくり、プレイもしませんでした。今年の九月、実家で免許を取得してる際、暇だからと手元にあった月姫をプレイ。

…即死でした。一般もゲームはほとんどやらないのに、一気のクリアで涙流しまくり、免許の取得も睡眠不足で大幅に遅れました。免許合格の瞬間、「これで歌月十夜ができる〜!」でしたから(笑

今回はシエル先輩のお話。自分の得意分野「ラブラブ路線」でいってみました。ちょっと文章がかったるくなりがちで、自分でも頑張って端折ったはずなんですが、いかがでしたか?

ネタとしては、いい感じでした。
実は中出し大好き志貴君、実は先輩にだけは中出ししてないんですよねー
罪悪感たっぷりに翡翠やレンに出しているくせに、一番問題なさそうな人には出さないんですから、変な志貴君です(笑
そこを発見して、無理矢理こぎつけてみました。
こんな所まで先輩を不憫にしちゃいけないですから、僕的に補完です。

唯一中出しされず、唯一後ろ出しされる、そんな哀れな先輩を僕は応援します(笑