美人女教師の淫らな誘惑
「先生、さよならー」
「ええ、さようなら」
HRが終わり、職員室に戻ろうとする私に男子生徒の一人が挨拶する。私はいつも通りに返すと、その子は教室を後にした。
「さよならー」
「先生!また明日ね!」
次々と男子達は私に声をかけて下校したり部活に向かったりする。
もちろん女の子も同じように挨拶してくるが、男子達はいやに熱心だった。
「先生ー、罪作りですねー」
女生徒の一人が、ニヤニヤとからかいながらそう言ってくる。
「そんな事無いわよ、みんな女の先生だからってバカにしてるのよ」
私はそう笑ってかえすと、教室を後にした。
私は知得留。一応こんな感じではあるが教師である。
この学校に赴任して、早いもので1年と半年が過ぎようとしていた。
教師になって初の学校だったから一体どうなるものかと不安だったけど、生徒のみんなはとても優しく、ここまで快適な学園生活が送れてきていた。
共学だけに男子校、および女子校にはない不思議な活気があり、それが楽しくて仕方がない。
でも正直……男子校の方が良かったかなぁ、なんて思ってしまう。
「だって、男の子が半分しか居ないんですもの……」
私は廊下でそうひとりごちて、ため息をつく。
私が教師になった理由は、確かに教鞭をとる事への憧れだった。人に物を教える事への楽しさ。正直それは私にしてみれば天職だと思っている。理由なんて物は、普通の人ならそこで終わりだ。
しかし私にはもう一つ理由があった。
「若い男の子に囲まれる職場がいい!!」
しかも、中学生みたいなまだまだ恋愛にはほど遠そうな青っ子じゃない。それこそぴちぴちの男子高校生よ!!
私の大学生活は、その夢を叶えるためだけに存在していたようなものだった。
私の理想は、か〜わいい男の子。それもちょっとおとなしめで端正な顔立ちの美少年限定。
もちろん、自分の事を占有したいような子は論外だ。
私の思い通りになる男の子、そんな純な綺麗な子を見つけて、いーーーーーーっぱい可愛がってあげたい!!
同僚にはもちろん話していないが、一部その秘密を知ってる友人からは、理想の職場だねとうらやましがられていた。
私もそう思った。そうしてこの学校に意気揚々とやってきたのだった。
でも、現実って結構厳しかった。
最近の高校生って、思った以上にスレてるんだもの……。
声をかけてくれる子は、どっちかと言ったらキザ系なナンパ野郎ばっかり。
私の担当するクラスの子も、ちょっとかわいい子がいてもそれは彼女持ちだったり、私に全く興味がないようだったりするし。
で、私が興味ない男の子ばっかりが積極的だったりするから困ったものね……ひらひらと交わすのも、次第に疲れてきたわ。
こう、もうちょっと「あの……その……せんせい……さようなら……っ!」とか言って可愛く脱兎のように走り去るような男の子はいない物かしら!?
そう思っていた頃、私は一人の少年と出会ってしまった。
それはとあるクラスに授業へ行った時。男子なのに、急に貧血を起こしてしまった子がいたの。
バタンと、イスから倒れた彼を私が抱きかかえた時……
その苦痛に歪む顔に、一瞬で心を奪われちゃいました。
その時は授業中だったからすぐに保健室に連れて行ったけど、放課後とかだったらそのまま私専用の茶道室に連れ込んでいたわ。
すぐに元気になったみたいで、放課後に私の所に来てくれた彼は……
私の理想の男の子、そのものでした。
顔は、もうアイドルと言ってもいいくらいの美少年。少し愁いを含んでいるその表情がたまらなかった。それでいて人なつっこい子犬のような目。初めて見つめられた時にはストライク過ぎて我を失いそうになったわ。
性格は、とにかく優しい。その時も何度も感謝を並べてくれて、私は夢見心地だった。
そして、私が更にキュンとしてしまったのは……その危うさ。
言葉ではひとえに表現しにくいけど、そのオーラというのか、彼の持つ雰囲気がどこか危険な感じで、私はそこに一気に惹かれてしまったの。
そんな彼を、自分だけの物にしたい!!
そうして、一杯色んな事を教えてあげたい!!
その時、私は彼を絶対手に入れようと心に決めました。
私は、通りかかったその教室の中を、後ろのドアから覗き込む。
教壇ではあははーと、生徒と共に笑うアーパー吸血鬼。
アルクェイド。
認めたくはないけど、私のライバル。
あいつは何で教師になったのか知らないけど、私以上に生徒に人気があるのが許せない。
男女わけ隔てず人気あるってのは別にどうでもいいのだけど、ウチのクラスのとある子、折角可愛いと思ったのに、あいつにメロメロだっていうじゃないの!
許せない、許せない、許せない……!
…っと、そんな目的で覗いたんじゃなかった。慌てて私は首を振るとその姿を探す。
教室がにぎやかな笑いに包まれてる中、その隅でたった一人だけ窓の外を見ている彼。
遠野志貴君。
……今日の姿も素敵すぎです、遠野君。
思わず、その退屈そうな横顔に見とれてしまう。
「ああ……」
私は思わずウットリとしてしまう。
神様、どうしてあんな子がこの世に居るんでしょうか?
神様、ありがとうござます!
私は目を輝かせると、両手を合わせ天を拝んでしまう。
そんな折、遠野君がふうとため息をついた。
その姿に、私は鳥肌が立ってしまう。
その吐息を、私の目の前で、私の首筋に吹きかけて……!
そう思い、イケナイ妄想を始めてしまう。
「遠野君が私に呼ばれて、放課後人の居なくなった茶道室にやってくるの……そして……」
|