「楽しかったですね〜」
琥珀さんが、ニコニコと笑いながら横を歩く。
「そうだね」
俺も、満足そうに答える。
あの後は、部屋に戻って愛し合った。
思い出となる心の繋がりと共に、何度も何度も。
気付けばふたり絡まるように眠り、朝を迎えていた。
少し寝不足だけど、とても楽しかった。
2つの内の1つの布団しか使わずにそのまま出てきたが、この際そんな事は気にしない。
「また、来ましょうね〜」
琥珀さんが、後ろに過ぎゆく旅館を眺めながら、俺の腕にその腕を絡める。
「そうだね、こんなのも貰っちゃったし……」
と、俺が目の前で2枚の紙切れをひらひらさせる。
「宿泊ご優待券」
宿を出る時、精算を済ませ、帰ってきたお釣りと領収書と一緒にこの券が付いてきたのだった。
「今度は、秋葉達も連れてくるか?」
俺は、そんな事を口にするが
「あら、私と二人きりじゃ嫌ですか?」
と、琥珀さんは笑いながら予想通りに答えを返してくる。
「じゃ、あと2回来ようね」
俺は笑いながらそう言うと
「それじゃ、券が何時までもなくなりませんよ」
琥珀さんがおどけて返す。
「そうだな……。じゃ、何時までもここに来るってのはどう?」
俺の提案に琥珀さんが少し驚くと
「……そうですね。何時までも……一緒にいさせて下さい」
と、頭をもたれかけるようにしながら、潤むような声で言った。
そう言われて、少し感慨深げになってしまう。
でも、琥珀さんはさっと切り替えると
「さっ、行きましょう。明日からはまた忙しい日々の始まりですよ」
するりと腕をほどき、駆け出しながら俺に振り向きながら言った。
「琥珀さん?待ってよ、電車はまだ先……」
俺は少しだけ眠い頭を振り……でもとても満たされたその想いを胸に、琥珀さんの後を小走りで追いかけていった。
〜後書き〜
……えー、この場合は最初に謝った方がいいんでしょうか?(汗
最初のリクエストを下さいました天戯さん、別に差別した訳じゃありませんよ。ヨヨヨ?(滝汗
と、いうことで琥珀さんSS、如何だったでしょうか?
とりあえず「チョーーーーーーーーーらぶらぶ+ほのぼの」は達成出来たと思っていますが、実際の所はリクエストを下さった琥珀LOVEさん次第ですかね……。リクエスト、ありがとうございました!
これだと「チョーーーーーーーーー」は「ラブラブ+ほのぼの」ではなくて「作品の長さ」にかかっている気配です(ぉ
あえて二人っきりの状況を作り出すには、どっかに連れ出す。これは歌月十夜の「夏祭り」でも使われた手法ですね。今回は温泉に連れ出していきました。丁度有彦がいい設定を持っているし、個人的に温泉には思い入れもありますので。
この作品のイメージとなった温泉街は、僕が小さい頃7年ほど毎年正月に行っていた実在の所をモチーフとしています。二人の泊まった旅館はそうじゃないですけどね(苦笑
題名にその分かりやすいヒントがあります。さらに作中に出てきた、映画で有名な老舗旅館は「新井旅館」といいます。ここまで来れば分かるはず……
そして個人的に書きたかった「お風呂えっち」、まさか温泉の大浴場で実現しようとは……嬉しい限りです(笑
本編でえっちのときに、志貴は「琥珀」と呼び捨てにしていますが、そんなのは愛が足りないので却下です。愛があるなら「さん」付けやろーが(笑
この後、宿泊ご優待券は増える一方ですね。これは作者が実際某牛丼屋で50円引き券を1枚出したら2枚帰ってきた事に由来します。使ったはずの物が無くならずに帰ってくる……これを専門用語では「バイバック」と呼びますね(笑
という事で、上手くオチもついたところで(?)さようなら!!
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