Taste so ...?  

 

 

 

 

「ああっ、あああっ! 志貴くん……い、っちゃう……っ!」

 朱鷺恵さんの切なそうな声が、暗い静かな部屋に響き渡った。
 俺が抱えている片脚がピンと伸び、腰を激しく打ち付けているその体はぴくぴくと痙攣を起こす。
 シーツを握りしめ、首を後ろに反らしながら、朱鷺恵さんは達していた。
 その凄く綺麗な姿に愛しさを覚えると同時に、絶頂を受けて朱鷺恵さんの膣がぎゅうっと収縮する。
 優しい締め付けに誘われ、一緒に達せる悦びに体を震わせながら、俺も限界を迎えた。

「……っ!」

 突き抜けるような快感に腰が震えて、朱鷺恵さんの絶頂と同時に、俺も膣内奥深くに自らのペニスを突き刺して飛んだ。
 一番奥へ心を一緒に流し込むようにして精液を注ぎ、やがてゆっくりと折り重なっていった。

「はぁ、はぁ……はあ、っ……」

 ふたりの呼吸が融和するような感覚を味わった後、朱鷺恵さんに負担にならないように体を起こし、繋がっていたペニスをゆっくりと引き抜いてゆく。

「んっ……」

 抜ける瞬間、朱鷺恵さんは軽く声を上げる。やはり達した直後の刺激には敏感なようだ。
 朱鷺恵さんはまだ意識がぼんやりしているみたいだけど、『志貴くんのが抜ける瞬間の、切ないのとと気持ちいいのがまぜこぜになったのが幸せ』なんて前言っていたっけ。
 朱鷺恵さんの中から全てを抜くと、俺はついその部分を見つめてしまう
 まだ呼吸に合わせて朱鷺恵さんのそこが収縮を繰り返していて、薄く華開いた綺麗な中心を中から美しい花を醜く汚すように、白い精液が溢れていた。
 その瞬間、改めて朱鷺恵さんの膣に出しちゃったんだな、と実感する。そこに罪悪感は微塵もなく、ただ純粋に嬉しさ。
 『出来ちゃったらどうする?』なんて本気か冗談か知らないけど言われているが、俺は全く構わない。
 まだ未熟で、先生にも殺されるかもしれないけど、朱鷺恵さんとの愛の結晶なら欲しい。そう思っていた。

 トロトロと垂れてくる精液に濡れる朱鷺恵さんの中心は酷く淫靡で、そこから目が離せなくなっていた。
 が、すうっと微かに紅く染まった手のひらが伸びて、その光景を隠してしまう。

「だめ、志貴くん、っ……」

 気付けば、朱鷺恵さんが恥ずかしそうに俺の事を睨め付けていた。

「あ……ごめんなさい」

 言われて初めて、俺は朱鷺恵さんが物凄い恥ずかしがる事をしてたんだなと実感した。
 朱鷺恵さんのすぐ隣へ横たわると、朱鷺恵さんはぷうと膨れながらも、嬉しそうに腕枕を望んできた。

「もうっ……わたしが気持ちよくなってる時にそんなことするなんて、ずるいよ」

 まだ少しお怒りの様子の朱鷺恵さんに、俺は『ゴメン』を繰り返しながらキスを降らす。
 ようやくご機嫌を直してくれた朱鷺恵さんは、改めて微笑んでくれた。
 その手が伸びて、俺をいつもみたいに抱きしめて、胸を吸わせてくれるのかなと思った時

「あ……汚れちゃってる」

 朱鷺恵さんが俺の頭越しに自分の指を見たらしく、そう呟いた。
 手を引いてきた朱鷺恵さんの指先を見ると、さっき自分のそこを隠した時にあふれ出ていた精液に触れたのだろう、白く濁ったものがあった。
 俺はそれを見て、一瞬どうするのかな、と思った。
 別にそれ以上の事を考えた訳じゃないけど、何となく。
 だけど、朱鷺恵さんはそれを慈しむように見つめると、何の躊躇いもなく口に含んだ。
 ちゅ、ちゅっと俺にわざと聞こえるような音を立てて指を吸うと、満面の笑みで俺を見る。

「ふふっ、志貴くんの味だ」

 無邪気に淫ら。
 こんな表情をするなんて、朱鷺恵さんはずるい。脳が焼けてしまいそうな程くらくらくる。

「いっぱい出たんだね。溢れちゃってるよ……勿体ないなぁ」

 そう言って朱鷺恵さんはもう一度溢れていた精液を掬うと、蜜を舐めるように口に運んでいた。
 俺がじいっとその様子を見つめていたら、視線を感じたのか『やだっ……』と言って自分のはしたなさを恥じたらしく、行為はやめてしまったが、俺は多分朱鷺恵さんの思う事とは違う事を考えていた。

「……ねえ、朱鷺恵さん」
「なあに?」

 ふと、本当にふと疑問に思った事。

「その……どんな味がするんですか?」

 どんな味がするんだろう。
 なんておかしな質問だとは思ったけど、気になってしまったからしょうがなかった。

「うーん……」

 そう言われると少し驚いた様子で、それから考え込んでしまう朱鷺恵さん。やがて難しい顔をしながらも笑って、

「言葉で上手く表せないなぁ……本当に、志貴くんの、って感じ」

 やっぱりはっきりしない答え方をする。

「よく苦いとか、まずいとか言う人がいるじゃないですか、ほら……」

 俺は乏しい知識をさらけ出してしまう。そんな中学生レベルの自分がやっぱり情けないけど、こっちも精一杯だ。

「うーん……」

 本当にひとしきり言葉を探している朱鷺恵さんに、とんでもない質問しちゃったなぁと思い始めたその矢先、朱鷺恵さんの声。

「そうだ」
「ん?」

 朱鷺恵さんはにこっと笑うと、おもむろに自らの指をもう一度自分の中心に添えて、一滴の精液を掬ってきた。
 どうするのかと思ったら、その指の先を俺に向けてくる。

「志貴くん、自分で確かめてみる?」
「え、え!?」

 それは唐突に、あまりに想像を超えた提案だった。
 自分の……それを舐めるなんて、正直気持ちが悪くて出来る訳がなく、焦ってしまう。

「ちょ、ちょっと……」
「えー。自分で言ったのにー?」

 狼狽えるけど、朱鷺恵さんは優しい笑顔に小悪魔の表情を混ぜて、意地悪そうに微笑む。
 こういう時の朱鷺恵さんは、俺が許してって言っても許してくれない。
 俺をいじめるのを本当に楽しそうにしてるから、遙かに年上な――そこに憧れていた――のに、どことなく子供のような無邪気さを感じてしまう。
 そんな朱鷺恵さんを知れたのは、愛し合えるようになったからだとは思ってるけど、今はそんな実感に浸れる状況じゃなかった。

「ねー。どうするの、志貴くん?」

 迫るように、朱鷺恵さんの指が更に俺の鼻先までついと寄ってきた。
 ……こうなったらダメだと分かっていた。やらなきゃ朱鷺恵さんは許してくれない。
 俺はせめてまじまじとは見るまいと目を強く閉じると、意を決して朱鷺恵さんの指を舐めた。

「……っ!」

 その時の感触といったら、もうどう表現して良いか分からない。
 とにかく想像通りのドロドロしたそれが、舌の上に張り付くような感じがする。
 しかも、それは自分が出した『汚い』ものだという認識があるから、強烈な嫌悪感に吐き出したくなる気持ちは誰でも分かるはずだ。
 閉じた目の端から涙が出てきそうになる。
 味は……分からない、匂いを知りたくない為に鼻で息をしてないし、多分余り無いのかも知れない。

 が、とにかく、このまま口を閉じていては窒息してしまう。
 しかし、飲み込みきれずに喉の奥に残ったらという、ある種ぞっとするようなおぞましい未来を思うと、なかなか飲み込む決意がつかず、かといって朱鷺恵さんが意地悪そうに見てる前で吐き出せる訳もなかった。
 だが、遂に限界を感じたから、とにかく溜め込めるだけの唾液を集めて、無理矢理に喉を収縮させて嚥下した。
 飲み下した後も意識してしまい、喉を押さえて気持ち悪そうにはぁはぁ息をして、それからようやく涙を堪えて目を開けた。
 ……と、

「……」

 そこには、さっきまでの意地悪そうな――でも、実はそんな表情も俺は大好きだけど――顔じゃなくて、本当にビックリしたという表情で俺を見る朱鷺恵さんがいた。
 
「?」

 なんだろう、何かあったのかなと不思議に思う俺に対して、

「やだ……」

 呆然と、という表情が正しいようにして自分の指を見ている。
 ……と、次の言葉はあまりにショックだった。

「……冗談のつもりだったのに……」
「ええっ!?」

 俺は天地がひっくり返るんじゃないかって思う程の声を出していた。
 当たり前だ。こっちはあんなに必死だったのに、それが嘘から出た真だったなんて……

「……」

 愕然とする。ちょっと落ち込んでしまいそうだ。

「ご、ごめんね……まさか本当に舐めちゃうなんて、思わなかったから……」

 朱鷺恵さんはあはは、と笑いながら何度もぺこぺこ謝っているみたいだけど、なんていうか俺はかなり落ち込んでしまった。

「ごめんね、本当にごめん……」
「!」

 と、朱鷺恵さんは謝罪の証か、唇を寄せてきてくれた。
 そのまま舌が俺の中に滑り込むと、口の中を綺麗にするようにして這い回ってくる。

「んんっ……ふうっ……」

 苦しそうに精一杯に舌を伸ばして朱鷺恵さんがキスしてくれるから、段々俺も許せるようになってきた。

「ごめんね……」

 はぁ、と唇が離れると、朱鷺恵さんの濡れた唇との間に唾液の橋がつつっと伸び、消える。
 キスしている間にも自責の念が積もったのか、今度は朱鷺恵さんの方が悲しそうな顔になっちゃってた。
 俺がそんな朱鷺恵さんに声をかけようとするより早く、朱鷺恵さんが今度は俺の下半身に顔を埋める。

「ごめんね、志貴くん。許してなんて言えないけど、いっぱい謝るから……」
「く、っ……」

 そう言って朱鷺恵さんは俺のペニスにも舌を這わせて、残滓を舐め取っていた。
 その奉仕は確かに気持ちよかったけど、朱鷺恵さんを従えてしまったみたいな気持ちになってしまい、力を取り戻す程じゃなかった。
 朱鷺恵さんとはそうじゃなくて、もっと優しく愛し合いたいよ……
 そんな気持ちが伝わってくれないのだろうか、

「ね……なんでもしてあげるから」

 朱鷺恵さんは悲しそうな顔のままペニスを口に含んで俺を見上げていた。
 俺は、ううんと首を振ってにっこり笑うと、朱鷺恵さんの頭に手を置いて口からペニスを抜くように促す。
 従ってくれた朱鷺恵さんをそっと抱き寄せると、顎に手をおいて見つめ合う格好にした。
 すごく泣きそうな顔、悲しそうな顔ですがるように俺を見る朱鷺恵さんは、なんでこんなに綺麗で美しいんだろう。
 けど、笑ってる朱鷺恵さんが俺は一番大好きだから、それは仕舞っておいて欲しいと願う。
 優しい想いでゆっくりと顔を近づけると、朱鷺恵さんはいやいやをするように逃れていってしまった。

「だめ……だよ。私……口、汚れちゃってる」

 俯いて、そんな資格はないと自らを卑下するような朱鷺恵さんを、俺は半ば無理矢理に上向かせて口づけた。

「んっ! んんっ!?」

 至近距離で朱鷺恵さんの目が見開かれてるのを感じながら、俺が今度は朱鷺恵さんの口の中に舌を滑り込ませた。
 確かにさっき口で綺麗にしてくれていたから、僅かにえぐみとも思えるものは残っている。普段の感触とは別の何かが、舌の上に踊っていた。
 そんなのがさっきは確かに気持ち悪かった。
 でも……
 でも、この感触はやっぱり、朱鷺恵さんを愛したから生まれたものなんだ。
 そして、朱鷺恵さんが口にしてくれたものなんだから、汚い訳なんて無い。
 愛の証を、『汚い』だなんて思っていた俺は、本当最低だと思った。
 自分の方が悪かったんだ、なのに俺は朱鷺恵さんを悲しませてしまった。
 泣いて謝らなきゃいけないのは俺の方なのに、どうして今は朱鷺恵さんが悲しんでいるのだろう。
 そんな自分を思いっきり恥じ、消え入りたい気持ちになる。
 でも、今はこんなに小さくなってしまっている朱鷺恵さんに、してあげなきゃならない事が。
 そうして自分を正当化してるみたいで卑怯かも知れないけど、それだけは許して欲しかった。

 想いの限りの優しさで後頭部に手を添えると、絶対離さないようにして朱鷺恵さんの唇を奪い、唾液を啜る。
 そんな朱鷺恵さんの体から段々と抵抗の力が抜けていくのを感じ取って、俺は最後にちゅっと優しく舌同士を触れ合わせると唇を名残惜しく離した。

「さっき何でもしてくれるって言ったよね、朱鷺恵さん?」

 信じられないというように俺を見る朱鷺恵さんに、俺が見せてあげられる一番の微笑み。

「だからもっとキスさせて。朱鷺恵さんは絶対汚いなんて事はない。悪いのは俺の方だからさ、ね?」
「志貴、くん……もうっ……」

 言っている俺でも恥ずかしいセリフに遂に堪えきれなくなったのか、朱鷺恵さんはぽろぽろと涙を零し始めた。
 でも、その表情はとても嬉しそうだったから、俺はそっとその涙にキスをして

「泣かないで、これもお願い」

 それから、唇にもキスをしてあげた。
 ちゅっと触れるだけだけど、愛情をいっぱい込めたその口づけで、朱鷺恵さんの微笑みがやっと生まれてくれた。

「……うんっ。志貴くん、好き、好き、大好き」

 だれよりも綺麗に笑ってくれて、そんな朱鷺恵さんが俺も大好きだ。
 うんと頷くと、おでこをこつんとぶつけながらお互いににっこりと笑い合った。
 こんな幸せな気持ち、感じた事は本当に無かった気がする。

「……ね、今日はどんなことしてもいいよ……全部、あげる」

 ずっと見つめ合っているだけでもいい、そんな風に思っていた俺に朱鷺恵さんは恥ずかしそうに言うと、抱きあったままゆっくりと後ろに体を倒して、一緒にベッドに横になった。

 

 

 

(了)

 

 

 

あとがき

 まああれです、チャット中に課程はともかく「精液の味ってどんなだろう」って話題が出て、『志貴には朱鷺恵さんが実践で教えたんだ、舐めさせたんだ』という結論に達しました。
 そこでのちさんかな? うろ覚えですみませんが、なんかちょっと無理矢理加減で舐めさせた系の一文を抜き出し風に書いたのですが、ごめんなさい朱鷺恵さん好き・第一人者としてはそれが許せなかったのですよ。で、反論だけしておいて何もしないじゃいけないと思い、書いた訳です。
 悪戯で舐めてみる? と言った朱鷺恵さんに志貴が本気にしちゃって、ごめんね〜と明るく謝る、という展開を書いていたんですが、なんか最後は朱鷺恵さん泣かしちゃったな……ゴメンね朱鷺恵さん。こっちのほうが展開的にくるものを感じたので。

 ということで皆のもの、志貴はこうして自分の精液の味を知り、克服したのだ。これからは思う存分志貴にフェラさせた後の女性陣とキスさせてあげたり、中出し後のあそこを舐めさせてあげたりしてください(ぉ
 ……ほら、そうやって軽い感じで終わらせておいた方が読後すっきりで良いでしょ?(笑

 では、ありがとうございました。執筆時間は実質一時間半……朱鷺恵さんだと凄い早さだ、僕(笑

('03.10.27)








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