わたしはドキドキしています。 姉さんは、大丈夫ですよーあはは、と笑っていますが……。 でもやはりこういうのは……不潔だと思いました。 「姉さん」 「なんですか、翡翠ちゃん」 にこにこと微笑んでいて、なにを考えているのか読ませてくれません。 でもわたしの不安を感じてくれるのか、わたしの手を取ります。 「大丈夫ですよ、志貴さんはそんな心狭い人ではありませんから」 その姉さんの笑い顔が信じられないのです、ということは、とても言い出せませんでした――。 まるで全身が心臓になったかのようです。 心臓の鼓動が全身を揺らしているのです。 熱くて、火照っていて――たぶん、真っ赤なのでしょう。 羞恥の炎が血管を巡っているようでした。 なんて――熱い。 もじもじしているわたしと対照的に姉さんはてきぱきと衣服を脱ぎ捨てていきます。 しゅるりと帯をとき、着物を脱いでいくのです。 どうしてこのようなことができるのでしょうか? してもいいのでしょうか? (――さぁ翡翠ちゃんも、早く早く) 姉さんは小声でせかします。 しかしそれよりも、この扉の向こう――先に入られている志貴様のことにばかり、どうしても注意が向いてしまうのです。 華 雅 魅瑞香(――もぅ姉さんは翡翠ちゃんのことを思ってこうしているんですからね) 姉さんはなぜか恩を着せるような言い方をします。 しかしわたしが頼んだのでしょうか―― もしかしたら――頼んだのかも知れません。 あの夜、わたしは姉さんの部屋で――姉さんいわく、大胆でしたよ……ってああ! ――なん破廉恥なことをしてしまったのでしょう。 でもそれは――たぶん、わたしの心の底にある感情であることは、否定できません。 ――姉さん、ずるい……。 そうです、姉さんは志貴様の想い人、時々こうして夜こっそりと同衾するとか……。いえそれは年頃ですし、ご主人様であり想い人である志貴様がそのようなことを求められて、姉さんも拒否しないのですから、そうなるのは仕方がないと思います。 ――でも 姉さんは、ずるい……。 そう思ってしまうわたしがいるのです。 なんて浅ましいのでしょう。 ご主人様と姉さんを心から祝福できないだなんて……。 なんて下劣な心なのでしょうね――。 だから だからこうして、姉さんの誘いにのって、姉さんと志貴様の逢い引きの現場に来ているのです。 なぜ来てしまったのでしょうか。 来なければこんな思いをせずともいいですのに。 なのに、来ています。 ということは――。 これは、わたしが望んだこと。 そう思い至ると、羞恥でまた全身が熱くなります。 わたしはなんてはしたない女なのでしょうか。 でも、それを期待するわたしがいて――。 そのことに思いをはせて、期待に打ち震える、不潔なわたしがいるのです。 大丈夫ですよ、なんて言いますけど、 もし志貴様が あの瞳で あの声で もしわたしを否定され、 拒絶されてしまったら、 今後わたしはどうすればいいのでしょうか? どうして志貴様起こせばよいというのでしょうか? どのような顔をしてあえばよいというのでしょうか? どのような顔をして身の回りの世話をすればいいのでしょうか? そう思うだけで、一歩も動くことはできません。 できないはず――なのに。 わたしはカチューシャを外しているのです。 これを外すということは、わたしにとってどういう意味合いをもつのか、よくわかります。 遠野家に仕える、志貴様に仕えるメイドではなく、翡翠である、というこどす。 このようなメイド服をきちんとつけていないと、ダメだなんて――わたしは本当はメイド失格なのでしょうね……。 なのにそれを脱いでいるわたしがいるのです。 わたしの殻。 カラのわたしの殻。 それを脱ぎさる。 残るのは――ただの「翡翠」 そう望んでいる「わたし」 そうしたい「わたし」 諦観とそして――欲望がまじった感情……。 はしたないわたしが、淫らに笑っています。 これがわたしのの望んだことよ、と囁きかけてきます。 どんなに否定していても、その言葉に心では頷いているわたしがいて――。 そして姉さんとともに風呂場に入っていったのです。 罪深さを自覚しながら、そして罪に期待して震えながら……。 「琥珀さん?」 中から志貴様の声が聞こえ、体が強ばります。 姿は湯気ではっきりとは見えません。 そのうちゆっくりとほどけ、そこには、こちらに背を向けて頭を洗われている姿がありました。 その意外と広い背中にどきりとします。 背筋や肩胛骨が逞しく思え、志貴様を男性として再認識させてくれます。 そのすこし広い背中、逞しく盛り上がった筋肉――姉さんの柔らかそうな女性のラインではなく、まるで筆でさっとかかれたようなメリハリがあって。 これが、男性の躰……。 しばし見とれてしまいます。 「はい」 姉さんがいかにも何でもないように返事して、近づいていきます。 すでに姉さんは裸で、わたしはバスタオルで体を覆っています。 その違いしか、わたしたちにはありません。 姉さんはそのまま志貴様に近寄ると、御髪に手を当てます。 「いいよ、琥珀さん」 志貴様は慌てた様子でいいます。 でも姉さんはのんきそうに、 「もう使用人であるわたしに任せてください」 と含み笑いをしながら、わしゃわしゃと志貴様の髪を洗い始めます。 「でも……」 「まかせてください」 そうきっぱりと言い切られると、志貴様は観念したのか、手を離し、姉さんに委ねます。 ――なんて……ズルい。 心の底にあるどす黒いなにかが滾ってきます。とてもイヤな感情です。 と同時になにか腰のあたりからじんわりとした鈍い感覚が広がっていきます。 喉が渇き、飢えているようです。 その背中から一時も目が離せません。 そして俯いて、姉さんの愛撫――えぇあれは洗う行為ではなく、愛撫です――を受ける志貴様の姿へとふらふらと近づいていきます。 やめるのならば今のうちです。 まだ志貴様は気づかれていません。 今ならば、まだ――。 思いは散り散りになり、どんどん胡乱になっていきます。 ただこの躰の奥底にある熱くニブい感覚と、胸のの奥の志貴様への情が、一歩、また一歩と志貴様に歩ませるのです。 ふらふらとまるで夢うつつのまま、わたしは近づくと、その広い背中に手を伸ばします。 そろりと、指の爪の先で触ると――。 びくん、と反応します。 「こ、琥珀さん」 志貴様は慌てています。 でも――。 「ダメです、動かないでください。きちんと洗えませんから――」 そういってわたしにウィンクしてくるのです。 「それからシャンプーの邪魔ですから外しますね」 そういって志貴様の眼鏡を外したのです。 とたん、志貴様は閉じているというのに、さらに強くこわばるぐらいに目を閉じます。 「こ、琥珀さん……」 少し情けない、心細げな声をあげますが、姉さんはかまわず、鼻歌を歌いながら、頭を愛撫するのです。 わたしはシャボンにボディソープをつけると、ゆっくりと泡立てます。 それはわたしの欲望が泡立っているかのようです。 ゆっくりとたっぷりと泡立たそれを、背中に触れされます。 心臓がどきどきします。 これが――志貴様の背中……。 ゆっくりとマッサージする……いえ姉さんと同じように愛撫するつもりで洗います。 まずは左手を添えて、右肩胛骨から。 ゆっくりとのノ字を描くように。 張りのある皮膚になぜかドキマギしてしまいます。 思わず、熱くねっとりとした吐息を吐いてしまいます。 そして背骨のくぼみ。 男の人の太い骨。 そこをゆっくりとゆっくりと、泡でなぞります。 志貴様はこそばゆいのか、それとも――感じてくれいるのか、小刻みに躰を震わせています。 姉さんは楽しそうに鼻歌を歌いながら、髪を洗っています。 そして左手にシャボンを持ち替えて、左肩胛骨を。 なんて広い肩。 いえ他の方を知りませんから本当に広いかどうかわかりません。 でも、わたしや姉さんのと比べれば、あからさまに男性の肩幅で――。 ゆっくりと丹念に背中を洗い終わりました。 でも――。 わたしは不満でした。 姉さんが両手で頭を洗っているというのに、背中が洗えるわけがありません。なのにそれでもわたしを姉さんだと考えていて――。 とても酷く思えて、恨めしい気分になってしまいます。 泡だらけの背中を指先と掌でなで上げます。 すると志貴様はまた躰を震わせます。 わたしは触らずただ泡で躰をなで回すと、躰をひねります。 みると志貴様は顔を赤くされていて――。 そのきつく目を閉じられている姿は、まるで何かに耐えているようで――。 もしかして、わたしで感じてくれているのでしょうか――志貴様? そう思うと、まだ喉が鳴ってしまいます。 そして、ちらりと志貴様の腰に目をやります。 タオルがまかれていますが、そこにはふくらみがあり――志貴様がそこで滾られているのがわかります。 感じてくれているのでしょうか――志貴様? わたしは、そのタオルのふくらみから目が離せません。 そこには志貴様の男性自身があり、それが――。 わたしは泡だらけの手を伸ばします。 いったい、わたしはなにを――。 いったい――。 今ならやめられる。 わたしはそんなにいやらしい女ではない そう思うのですが、そう思った理性の声は胡乱な波間に消え去り、ただ見えるタオルのふくらみだけがわたしの心を占めるのです。 そのふくらみは、わたしに触れて欲しそうで――。 気が付くと、姉さんは志貴さんと口づけをかわしています。 それも唇と唇が触れ合うような、姉さんの部屋にあったマンガのようなものではなく――。 舌を出し、絡め合い、唾液を啜り合うような破廉恥な口づけ。 ねちゃねちゃと粘液質な音が聞こえてきます。 その音に背を押されて、わたしはタオルの下から手を入れて、そっとそれを握ります。 なんて熱い。 それは柔らかいのに、十分に固く、なんともいえない手触りをしています。 これが志貴様の。 すこしつるつるとしていて、でも鼓動にあわせて脈動するそれは――初めての感触でした。 これが――男性。 その鼓動が伝わるたびにわたしの鼓動も大きく早くなります。 わたしは後ろからそれを握るような態勢のため、背中に自分の胸を押し当てた形になります。 その感触に思わず吐息がもれます。 乳房が志貴様の広い背中に押しつぶされて、触れていて、そこからむず痒く気持ちいい感覚が広がっていくのです。 それに対応して、腰の奥からじんわりと熱いたかぶりが昇ってくるのです。 この湯気でなはい、熱く湿ったものを、自分のあそこからわき出てくるのを感じました。 まるで恋人のように、背によりかかりしなかかる姿を想像すると――。 息が荒くなり、鼓動は速まり、そしてあそこからなにかがわき出てきてしまうのです。 ――なんて なんていやらしい女―― でもそれがわたしなのです。 そしていやらしいわたしは、泡のついた手で握った男性自身をそっと洗います。 その竿にあわせて、右手を動かします。 どれくらい強くしていいのか、わかりません。 でも熱い高ぶりをにぎり、ゆっくりと動かします。 泡と湯が潤滑剤となって、なめらかに動きます。 もう少し力をいれてもいいのかしら――。 わたしはそっと力を入れます。 そうすると、志貴様の口から、ああ、と熱い声が漏れます。 わたしはそのまま、志貴様の陰毛を、股を、そして陰嚢を左手で洗います。 初めて触る男性の秘所に、目眩を覚えました。 やわやわとしごき、洗い、もみあげ、こするのです。 陰嚢をもみ上げると、志貴様は首を微かにふります。 そんな様子の志貴様がもっと見たくて、やわやわとふたつの玉を握ります。軽く強く、時には引っ張って。 そして右手では茎の先の大きくなったところに手をあてて、指でこすります。 先の割れ目に手をあてて、そこを強くこすりあげました。 ソープやシャンプーの爽やかな香りに混じって、強い牡の匂いが立ち上ってきました。 志貴さんのそれは隆起し、タオルをおしのけて顔を覗かせていました。 はじめて見る男性自身に、その強い匂いに、くらりとします。 赤黒く雄々しくそそりたつその姿に、初めて嗅ぐ匂いに、魅入られてしまい――。 ぼおっとしてしまいます。 その匂いを嗅ぐと、わたしの奥から熱くどろどろと溶けていくのです。 その姿を見ると、わたしの脳がとろとろに溶けていくのです。 腰骨の奥がどろどろにとけて、それがわたしの股間をつたわり、落ちていくのです。 わたしはその匂いを求めて、もっと握り上げます。 先の割れ目から、とろりとした雫が漏れてきます。 雫がつななり、そしてこぼれ落ちていきます。 そうするともっと強く牡の匂いがして――。 躰が痺れてきます。 疼いてきて、たまらなく、躰を動かしてしまいます。 とたん、はぁーとねっとりとした息を漏らしてしまうのです。 志貴様に、男の躰に押しつけ潰れている乳房から、甘い疼きがじんわりと躰を灼くのです。 それが気持ちよくて、もっと匂いが嗅ぎたくて、もっとそれを勃たせたくて、わたしは腰をゆすり、志貴様の背中に乳房をもっと押しつけるのです。 そして熱く滾ったそれをにぎり、しごきたて、左手で玉を揉むのです。 志貴様からこぼれた雫はわたしの指に絡み、ねちゃねちゃと淫音をたてます。 強く勃ったそれは、びくんびくんと動き、わたしの指先に快感を与えてくれます。 わたしが快感を与えているのか、それとも快感を得ているのか――。 あぁ、もうどちらでもかまいません。 その熱いものに触れている先から、玉の感触から、勃った乳首から、甘い疼きが広がり、それをもとめて、わたしはもっともっととせがみ、腰を揺すりながら、弄び、そして弄ばれるのです。 ふと上をみると、志貴様は姉さんの乳首を口にくわえていました。 とたん、躰の奥が震えます。 志貴様は歯でその尖った乳首に歯をたて、そして舌でねぶっているのです。 そうして欲しくして、そうされているのがわたしでなくて、わななきます。 そうしてほしいと、志貴様にいじってほしいと、わたしのオンナが叫ぶのです。 すると、姉さんは笑います。 笑えないわたしにそっと、艶やかに微笑むと、志貴様から離れます。 まるで自分の思いを見透かされたかのような笑み――。 瞳の色しか違わないそれは――そうわたしの貌。 そうしてほしいと願っているわたしの姿。 そしてわたしの側にくると、 (ふふふ、交代ですよ) と囁くのです。 その淫靡な響きに導かれて、志貴様から手を離し、ふらふらと前へ行きます。 かわりに姉さんが後ろに。 つよく目を閉じているその顔はいつもの志貴様。 なのに、見えていないということに、わたしは少し大胆になって、乳房を曝すのです。 強くはったそれは痛いほどで、はやく噛み、すってもらいたくて、尖っています。 志貴様の口までそっと近づけると、素早く吸い込まれます。 乳首から走る甘い電撃は幾度と無く私の躰を貫き、痺れさせます。 そのスイッチを甘噛みし、ねぶり、しゃぶり、噛み、そして吸うのです。 そのたびに電気がはしり、頭が白くなっていきます。 腰から下が蕩けていく感覚に溺れるのです。 わたしはもっとやってほしく、志貴様の頭を抱え込み、押しつけたのです。 しかし乳首を嬲られるわたしは、ただ嬌声をあげるだけで、躰こねらせ、いやいやをし、その疼きに乱れるばかりで――。 翡翠というわたしが溶けて消えてしまう感覚に、怯えながらも、もっともっととせがむのです。 「――翡翠」 その言葉に突然固まります。 火照っているのに、頭だけ突然冷静になって――。 おずおずと抱え込んだ顔をみると、 やはり目を閉じたままで、でも乳首を弄びながら、しゃべるのです。 「翡翠、だろ――」 そして耳が痛くなるほど血が頭に上ります。 熱くて圧迫されて、心臓がばくはぐと音をたてて。 なぜ気づかないと思ったのでしょうか。 なぜそう信じてしまったのでしょうか? そんなこと――ありえないのに。 「今度は俺のを慰めてくれ」 なにを言っているのかわかりません。 ただ志貴様はいつもとまったく変わらない口調で――。 意味がまだ頭にまで入ってきません。 なにを言われたのでしょうか? 「翡翠ちゃん」 姉さんがくすくすと笑いながら言います。 「さぁ志貴さんを……志貴様をお慰めして」 その言葉におされて、わたしは跪きます。 それでも足りず、這いつくばります。 冷たいタイルの感触が火照った躰に心地よく――。 そうして座っている志貴様の男性自身とようやく高さが同じになります。 これを――。 こわくなって、ちらりと姉さんを見ます。 するとこくっと頷いて――。 わたしはそれをまた握ります。 この熱く逞しいそれがびくんと震え、わたしの躰はわななきます。 それをこすり上げます。 とたん、姉さんは後ろから手を回すと、下の袋をまさぐります。 志貴様は軽くうめくと、なすがままに――。 そうわたしたちのなすがままになったです。 わたしがそれをにぎり、 わたしがそれをもみ、 わたしがそれをしごき、 わたしがそれをこすり上げるのです。 強い牡の匂い。 躰の奥からどろどろにとけていく、あの感覚。 甘い悦楽の疼きが、わたしから歯止めを奪ってしまいます。 その疼きにせき立てられて、それをしごくのです。 「う」 志貴様が嬌声を上げます。 とたんしごいていたそれがもっと反り返ったのです。 みると、姉さんの左手は志貴様のおしりに回されています。 左腕が怪しく動くたびに、志貴様自身は反応し、先からとろとろと雫を流しているのです。 「どうです、志貴様」 姉さんの声が妖しく響きます。 「もぅわたしのを飲み込むかのようにぐいぐい動いていますよ」 淫らに笑う女の貌。 なんて浅ましいわたしの顔。 なんてうらやましい――。 わたしは志貴様のをそっと口に含みます。 苦くえぐみのある味が広がります。 口にくわえただけで、そのえぐみが口の中に広がった時点で、軽く気をやってしまいます。 えぐい牡の、この味に、この匂いに、躰の奥が疼き、ふるえが幾度となく走るのです。 口はあまり大きくひらかず、先を飲み込むのが精一杯でした。 舌でそっと触れてみます。 そのつるりとした感触と、とろりとしたえぐみに鼻の奥がつーんとしてきます。 それだけで頭が胡乱となり、ただ舌をゆっくりと這わせるしかできません。 唾液とともに、その先からこぼれる雫をすすり上げ、舐め上げるのです。 そのえぐみに慣れれば慣れるほど、あそこはとろとろと溶け、下半身から広がる愉悦は全身を疼かせるのです。 舌をその切っ先の割れ目にあてて、えぐります。 もっとあの味を、牡を味わいたくて。 生々しい牡を味わいたくて。 えぐい味。 なのに、とても甘露で――。 そこから出てくる牡のエキスを舐め、すすり上げ、口に一杯に、息もできないほど、それをなめ回したのです。 口の端から涎がこぼれ落ちます。 鼻から強い男の匂いが抜けていき、目の前にある恥毛と引き締まった腹筋が、わたしを狂わせます。 口がまるで溶けていくようで。 頬張ったそれが、熱く、舌の上で口の中で震えていて。 それがそのまま口の奥底まではいり、躰を貫いていきそうで。 どろどろになった躰を突き、こね回し、かき乱してくれそうで――。 なんて――なんて気持ちいい。 志貴様――気持ちいいです。 志貴様 志貴様! 志貴様 !! 幾度となく、想い人の名を呼びます。 頭がとけていく。 とろけていきます。 見てください――志貴様 わたしはくわえながら、志貴様をのぞき込みます。 その顔は何かをこらえているようで、眉をしかめ、なんて――美しいのでしょう。 その顔にわたしはそっと囁きます。 見てください――志貴様。 わたしは、翡翠は、こんなにいやらしいオンナなのです。 そう思うだけで恥骨のあたりからしびれが駆け抜けるのです。 口全体で、男を、牡を、志貴様を味わいます。 舌をただ亀頭にまきつけ、なめ、こすり、ただすすり上げるだけ――。 でもそんな淫らな自分の姿を思い描くだけで骨までぐすぐすに溶けていきそうで。 、 口の中でそれが突然大きく逞しくなる。 わたしは本能的に、頬をすぼめるほど強くすする。 そこから男を、牡を、志貴様をすすり上げてしまうように、強く、激しく、これ以上ないほどに! 喉が震え、躰が歓喜にわななく。 感じてくださる志貴様に答えて、わたしのオンナがわななき、震え、感極まるのです。 頭がはじけます。 愉悦の淫らなどとろどろになっていって――。 涙も流しながら、わたしは男性をすすり上げるのです。 見て――志貴……ちゃん とたん、 びくん――と 口の中で爆ぜました。 突然のことにわたしは驚き、逃れようとします。 白いどろりとした、今さっきまでのえぐい味を何十倍にもしたとろとろなものが口の中に広がっていきます。 その甘露に打ち震えました。 避け、口から離すと、陰茎は幾度となく震え、白い粘液を吐き出すのです。 それはわたしの貌に、鼻に、頬に、口に、髪に、目に、耳に、喉に、胸に、首に、どろどろとふりかかってくるのです。 その強い牡の匂いに、歓喜にふるえてしまいます。 生ぬるく――でも熱いそれが、わたしの貌を、口を汚していくのです。 その熱さは躰の芯まで辱める淫蕩な炎で。 どろどろのそれに汚れて、辱められているというのに、わたしは昇り詰めていました。 刺激臭といってもよい牡の匂いと味に、わたしは気をヤったのです。 びくんびくんと躰は震え、頭は胡乱となり、蕩けて果てたのです。 そして湯気がたちそうなほどの熱くねっとりとした息を吐き、志貴様に微笑んだのです。 ――志貴様、 お情け、ありがとうございました、と――。 - Fin - 15th. May. 2002 #26 |