イリヤといっしょ
……意識が遠い。引き寄せようとするのに霞のように掴むことが出来ない。
それが、向こうからようやく自分に近づいてきて――
「――ん、あ……」
ようやく目覚めた。
朦朧としている視界は、見知らぬ天井を見上げていた。
体が動かない。
自分の魂はこの容器に入っているのに、まるで定着してないような……
――ああ、そうだった。
ここは……
「あ、目が覚めたお兄ちゃん?」
ひょこっと、俺の視界の横から紅の瞳をした少女が俺を覗き込んだ。
無垢な笑顔。俺が眠りから覚めるのを本当に待ちこがれていた嬉しさがその表情に満ちている。
ようやく魂が馴染んでくる感覚がある。しかし体は指先ひとつ動かすことが出来ず、まだ外界からの刺激とその認知に乖離が生じているようだ。
「どうだった? わたしが言ったこと、分かって貰えたよね?」
にこにこと、すごいでしょ〜とまるで満点のテストを自慢するように屈託のない笑顔。
しかし、その笑顔はあまりにも無垢で凶悪だということを、俺ははっきりしてきた頭で理解してしまっていた。
「……」
光景を、思い出した。
魂が見えない手で引き抜かれた様な気がした後、気付けば目の前には魂の抜けた衛宮士郎の体があった。
新しい容器に移し替えられた俺は、その後に目の前で行われていた事態を、ただ魂として見つめることしかできなかった。
――セイバー達が助けに来てくれたこと。
――魂の抜けた俺を連れ、この部屋を離れていったこと。
中身はここにいる、と大声で叫びたくとも、どうすることも出来なかった。
「あ、セイバー達はちゃんとわたしが殺したから、これでもうお兄ちゃんはマスターなんかじゃなくて、わたしだけのものなんだよ」
俺の考えることを見透かして、最悪の結末を嬉しそうにイリヤが告げた。
――ああ。
明確だった。
あまりにも実感がない。しかし、それは紛れもない事実だとイリヤの瞳が語っている。この僅かの間で、俺は理解していた。
「一度持って行かれたけど、バーサーカーが取り返してくれたからお兄ちゃんの体はこうして無事なんだよ」
そう言いながら、イリヤは俺の頬を指で突いた。ここでようやく、感覚だけは戻ってきていることに気付く。
「あの容器はデモンストレーション。これから、大好きなお兄ちゃんにはもっと特別な容器を用意してあげるんだから」
自慢げにイリヤは笑う。その容器がどんなものか分からないが、俺には受け入れるしか選択肢は用意されていないのだ。
ああ、諦めてしまえ。
そんな意識が、俺の中に芽生えようとした一瞬。
「その前に、ね。お兄ちゃん……」
イリヤの瞳が妖しげに光り、その姿が視界から消えたかと思うと――ずい、と俺の体の上にその小さな体がのしかかってきた。
何を考えているんだ。
自由の利かない身で、俺は動きを妨げることが出来ない。
絶望さえ感じ始めていた体に、その柔らかい感触は俗世を思い出させる生々しさとなって襲いかかった。普段着とは違う、寝間着を付けたイリヤの体が俺の上に馬乗りになり、楽しそうに俺を見下ろしている。
そこでようやく、ここがさっき見たイリヤのベッドの上なんだとわかった。天蓋が覆う空間は、イリヤの姿を浮かび上がらせるような仄暗い明かりに照らされていて、いやがおうにもにも雰囲気を高める空気に満たされていた。
「お兄ちゃんの魂は、わたしのものになってくれたよね? でもね、わたしもっとお兄ちゃんが欲しくなっちゃった」
イリヤの瞳はものをねだる子供の好奇心そのままで、喜びに見開かれていた。
「だから――」
ぎゅうと、イリヤがその体重を俺に預けてきて、
「この『体』も、欲しいんだ。お兄ちゃん、セックスしよう?」
屈託のない表情で、そう述べていた。
――な。
言葉の意味を理解するのを、頭が拒んだ。
あまりにもその容姿からはおかしすぎることを言っている。
「大丈夫だよ、お兄ちゃんがどうすれば気持ちよくなってくれるかって知ってるから」
こんな時に限って的はずれな事を言うイリヤは、するすると身につけていた服を脱ぎ去って――やがて、まだ幼すぎる、女性らしさを表す筈の線も殆どなだらかな、真っ白い肢体が露わになった。
服の下はブラなど付けず、膨らみも微かな胸が惜しげもなく晒され、僅かに包むのは手足にはめられた黒い生地と、同じ色のショーツのみ。
白い素肌に映えたギャップはあまりにも淫靡で、もはや体を隠す用を成さぬそれは、ただただ俺を扇情的に挑発するパーツとなっている。
それを見て――なんて正直か、どくんと胸が高鳴った。
ごくりと、感じてはいけない興奮に大きく息をのむ。
「あはっ、お兄ちゃん興奮してる?」
その微かな挙動に喜びを感じたか、イリヤはすうっと前屈みになり、俺の頬に手を添えてきた。
今までに無い程に、イリヤの顔が俺の視界を覆い尽くしたと思ったのも一瞬だった。
「大好き、わたしだけのお兄ちゃん……」
――!
イリヤがそっと瞳を閉じたと思うと、今まで無垢な言葉を紡ぎ続けてきたその唇が触れてきた。その体温はあまりにもリアルで、思わず軽い眩暈を起こしそうになる。
擦るように唇を動かす仕草は思った以上にたどたどしく、触れるだけのキスなのにそれだけで体の奥底からえもいわれぬ感覚が立ち上った。
「……はぁ、っ」
俺の唇の形状を確かめるようにキスを続けたイリヤは、やがてゆっくりとその瞳を開きながら離れていった。そして指で自らの唇をなぞり、その感覚を反芻する。
「お兄ちゃんと……キスしちゃった」
しばらくうっとりとした表情を見せていたイリヤは、やがて俺をもう一度見つめると、にっこりと薄く頬を染めながら微笑んだ。
その仕草があまりにも初々しく、こんな状況であるはずなのに俺はどうしようもない興奮を覚えた。
ああどうして――自らの身を恨んでしまうほどに、純粋な姿に惚れてしまいそうな自分がいた。
「でもね、もっともっと――お兄ちゃんの全部が欲しいよ」
一度得た快感をもっと知りたい、いや更に大きな快感が欲しいと、イリヤは寝ていた俺の首に手を回すと、その体重を全て預けてきた。
ふかふかのベッドに体が微かに沈む。その受け止めに体を心地よく感じさせながら、その小さな体の密着を高めたイリヤに唇を塞がれていた。
「ふう、ん、っ……。お兄ちゃ……ん」
一度で要領を覚えたのか、今度はちゅっ、ちゅっと可愛らしくイリヤが俺の唇にキスを繰り返す。
触れては離れ、そしてまた触れる柔らかさに次第に意識はぼうっとしだし、最早自分がどんな状況なのかを忘れてしまいそうになる。
そんな中、くすりとイリヤは笑ってまた離れると、今度はそのピンクの唇に紅の筋――自らの舌が走った。
ちろりと覗くそれはイリヤの唇を潤し、艶やかに光らせる。
「もっと繋がろう、お兄ちゃん?」
言うが早いか、イリヤにその唇で触れられて、俺の唇に濡れた感触が衝撃を与えた。ただでさえ唇は吸い付く程の柔らかさだったのに、更に二人を繋ぐ接着剤のようにイリヤの唾液が唇を繋ぎ止めた。
そうして触れ合う上に、イリヤの唇が今度は薄く開かれた。
ちろ、ちろ――と、先端で俺の唇の凹凸をなぞり、まるで表面に塗られた飴を舐め剥がすような仕草に、可愛さと淫靡さと愛しさを覚えてしまった。
俺が何もしないのを物足りなく思ったか、いや何も出来ないのを思い出したのか、イリヤは鼻先がこすれ合うような距離で、
「お兄ちゃん。舌、出して……」
優しく呟いた。
その命を受け、あの契約でイリヤの思うままになっていた体がゆっくりと動き出した。唇が開き、奥に仕舞っていた舌先が密度の濃い生暖かい空気に触れる感触を覚えた。
「は、あ……お兄ちゃんの、綺麗だよ」
と、イリヤはその舌先にしばらく見惚れた後、その舌先を唇で包むように塞いできた。
濡れた二人の蠢きが、一緒になる。
――!
瞬間、信じられないくらいの柔らかさに包まれて、俺は声として呻くことが出来なくとも、心で呻いた。
「暖かい……お兄ちゃんの体温、わたしより熱いみたい……」
繋がった口腔内で、イリヤは俺の舌先を包み、撫で、吸い、そして弄んだ。
ちゅくっ、ちゅくりと唾液が絡まる音と共に、イリヤから流れてくる雫は俺の喉を満たしていく。
甘く、甘く、とろけるようなその感覚。
「ん、お兄ちゃんの唾液、おいしいよ……」
そんな俺と同じなのか、吸い上げた唾液を飲み込んだイリヤは口の中でそれを味わって腑に落としていった。
こくっ、っとほっそりとした喉元が動く仕草だけで、俺はおかしな感情が体を支配していくのがわかった。
イリヤに魅せられるよう、同じくこくりと雫を嚥下すると、その軌跡が分かってしまう程に駆けていく。
身体の内部を辿り全身に心を満たす快感の波紋が広がっていく錯覚が、意思を離れていた筈の体を動かす動力源となるかと思う程に思えた。
「――お兄ちゃん」
すると、イリヤはニヤリと意地悪げな笑みを浮かべた。
「こっち、もう大きくなり始めてるよ?」
と、イリヤは体を俺の上でもぞもぞとさせる。すると、たった今意地悪く微笑んでいた顔に僅かな羞恥が見え、新たな朱がさしてくるのが分かった。
――!
その行動の意味が、俺ははっきりと分かっていた。
体の外面は動かなくとも、内部を支配する血流の流れはリアルに感じ取れてしまったから。イリヤの小さな体――その腰から腿にかけての位置にある俺の下半身が、その存在を服の上から示してしまっていた。
「気持ちいいんだね、お兄ちゃん?」
頬を染めての問いは最初から答えが分かっている意地の悪いものだ。
もちろん俺は――その通りで、答えられる訳がなかった。
ああなんで、こんな時にも体だけはその欲求に抗えないのか!――そんな恥とも絶望ともつかぬ感情で頭が支配されていくより早く、
「――わたしもだよ」
イリヤは恥ずかしそうに呟き、俯いた。
――え?
予期していなかった訳ではないが、頭では否定していた事実。
それを聞かされて一瞬戸惑った俺だったが、目の前のイリヤは一瞬の自分をすぐに忘れさせようと、無邪気に振る舞った。
「――ね。見て、お兄ちゃん」
イリヤは体を俺の上に起こすと、膝を立てて跨いだ格好のまま自らのショーツに手をかけ、ゆっくりと下ろしていった。
それは、 小さい頃自分がお風呂に入る時にしたであろう、そんなまだ妖艶という言葉には未熟な仕草。
しかし、現実はその何倍も妖艶だった。
片膝を抜き、小さく丸まったそれを脱ぎ捨てるイリヤの――中心に瞳を奪われた。
想像していたものとは全く違う、見たこともない何か――真っ白な肌、覆い隠す繁みなど何もない、他の部分とまるで変わらない素肌。
その、真ん中の、奥の――小さな切れ込みは、あの――
息が、出来ない。
目が、離せない。
初めて見た女の子の秘所――それ程に、心臓が一方的にバクバクと脈打って跳ね上がった。
「えへへ」
そんな俺の視線に気付いたか、イリヤはめっ、と俺を睨め付け、そしていつものように笑った。
「えっち」
姿と言葉の、あまりにもかけ離れすぎたギャップが、余計に狂ってしまいそうにさせられる。それを堪えるのに、全ての理性を動員しても敵わないのでは無いかと――
「でも、お兄ちゃんには全部見せてあげるよ」
考える、暇もなかった。
「ほら――見て、お兄ちゃん」
俺の上に体育座りのように座って、体を前に寄せてきたイリヤの――その膝がゆっくりと割られた。
ひと筋の秘所は、ただ肌をその部分で割るようにしているだけの様に見えた。
のに。
そこへ、イリヤの指がすうっと降りてきて、秘所に両側からVの字に添えられ――
「――綺麗でしょ? お兄ちゃんに、初めて見せるんだよ」
サーモンピンクに彩られたあまりにも生々しい肉の花びらが、目の前でぴらっと開かれていった。
――!
瞬間、俺の意志は瞳を閉じさせた。
見てはいけない。
見てはいけない。
罪悪感にまみれる行為に、本能だけで反応するかの如く、首を背け、瞼を二度と開かぬようにさせる。
だというのに、
「――もうっ。お兄ちゃん、ちゃんと見てくれなきゃだめ」
イリヤの声は、それが明らかに不満だと告げていた。
すっと体に乗った重みが薄れ、気配が動いて。
「ほら、こっちを向いて。目を開いて。お兄ちゃん?」
勅令が、下されていた。
それは俺の立場を改めて象徴するもの。
意志なんて一瞬で却下され、俺の首は正面を向き、瞼は力を開く方へ向けていく。
その言葉は、抗えない魔術なのだ。それを、いやがおうにも知らしめられる言葉の魔術。
そして――
「……」
見て、しまっていた。
イリヤの体は、今は俺の顔を跨いで座り込むように。
その、目を閉じる前よりももっと、すっかり鼻先にまで掛かる近さに、イリヤの花びらが開かれていた。
目の前いっぱいに、イリヤの秘所を認める視覚。
白い肌の中身の、真紅の色。
想像とは大きくかけ離れた複雑な襞と、ちょんと小さくすぼんだ中心の孔。てらてらと既に濡れ光っていたそれは、イリヤを女と意識させるに、あまりにも十分すぎる光景だった。
そのイリヤから広がる、ぐらぐらと脳を揺らして性を意識させる嗅覚。
「ほら――こっちも」
と、イリヤが指を軽く動かすと、くにゅりと軟らかい肉が形を変えていく。あまりのリアルさは、その映像を脳髄に何度も叩きつけて眼球の奥が真っ白にフラッシュする。
そうして今度、イリヤの指は淫らに咲いた花びらを繋ぐ部分、微かに膨らんだ雌しべを露出させた。
「濡れてるよ。お兄ちゃんとキスしたら、気持ちよくなったから」
その言葉と共に。
――じゅくり。
新たに沸き起こった卑猥な音を、確実に捕らえる聴覚。
イリヤのそこから、溢れてくるもの。
蜜が。
イリヤの中から絞られた蜜が糸を引いて――遂に、その雫の先が垂れ落ちた。
そして俺の肌を、雫が垂れ落ちる触覚、
それは、惑わすなんて生やさしいものではない、俺を堕とすために仕組まれた罠だ。
「ね――お兄ちゃん」
その行為に身が疼いたのか、イリヤの声ははっきりと、
「わたしのここ、舐めて――」
純粋な欲望を、俺へと見せつけた。
ああ――
イリヤがにっこりと笑っている姿が、容易に想像できた。
ああ――これが、服従を誓った俺の、契約の証なのか。
当たり前のように俺の首は僅かに持ち上がり、開いた唇からは舌先が伸びていき、
「――ぁ、あはぁっ!」
口に、イリヤから分泌された甘い蜜の味覚。
広がり染み込むそれを、俺は何度も舐め、飲み込んでいた。
「いい、お兄ちゃん、気持ちいいよ――!」
イリヤが俺に跨り、犬のように舐めさせている光景。
端から見れば、それはまさに俺達の関係を象徴する光景であった。
「ふあっ……ああん、っ! おにいちゃ、ん……ひあっ!」
小さな躯が、快感に跳ねている。
イリヤの望むまま俺は秘所を吸い、舐め、啜り、愛した。
「んっ……お兄ちゃんも、気持ちよくしてあげる」
俺の顔を愛液でベトベトにした頃、イリヤはするりと体の向きを変え、逆向きに俺の上半身へのしかかった。
先程から愛し続けている花弁は、天地を入れ替えてなおヒクヒクと蠱惑的に蠢く。そこに命令とも考えなくなった頭で触れようとした時、
「ほら、こんなだよ」
イリヤの両手は、ズボン越しに俺のモノをさすっていた。
――!
さわりと撫でられるだけで、腰が跳ね上がる程の快感。
他人に、異性に触られる衝撃を初めて体感し、本能はあまりに素直だった。
「さっきからずっとこのままなの? 凄い……」
イリヤはそう言いながら、形を確かめるように手を動かしていたが、やがてその動きは止まり、ジッパーを下ろしていた。
や、め――!
叫びは決して声にならない。
俺が止めることの出来ない行動、
しかし、それに明らかに興奮している自分がいた。
「わぁ……っ」
トランクスまでずらされ、蒸れた空気から解放されたモノを見て、イリヤの吐息混じりの声が聞こえた。
「おっきい……」
イリヤの、そんな熱にうなされたような声が、聞こえ――
――!
たと思った瞬間、触れられた。
イリヤの細い両手が、俺のモノを優しく握っているのを感じた。
「また……大きくなったよ。お兄ちゃん、気持ちいいんだね?」
嬉しそうに、イリヤは直接触れた感覚を更に確かめようと、握った手を上下させた。
刹那、腰の方から一気に駆け上ってくる激震。
先端に向かって迸らせたいと、本能があらゆる叫びで俺の体に命令を送り込んでいたのだ。
にゅくにゅくと、イリヤの手で擦られる感覚が、今までにどんな感じたこともない快楽となって俺を飛ばす。しかしその快感はそれだけに留まらず、次々と快楽を重ね合わせてきて俺を翻弄する。
「あ、先から出てきたよ」
先走りの腺液が、亀頭の先から滲んできたらしく、それを見たイリヤが楽しそうに更に絞りだそうと俺をしごいた。
心の中で歯を食いしばり、必死になって俺はもうダメになりそうなのを堪えた。
が、そんな俺を知る訳もなく、
「ん――これ、お兄ちゃんの――」
そんな声と共に、湿った吐息が亀頭に掛かる。
ま、さか……
そんな不安と欲望とがせめぎ合いをした一瞬の後に。
「ん――」
!!
イリヤが、おそるおそるといった感じで俺の亀頭に舌を這わせ、その雫を舐め取っていた。
「ん――変な、味……」
一瞬舌が離れ、イリヤはその感覚に嫌悪を抱いたようだった。しかし、何を思っているのかすぐにまた舌を這わす。
「ん……でも、お兄ちゃんのだから――」
そんな、信じられない言葉と共に、今度は先程とは反対に積極的な舌が亀頭を蹂躙した。
だ、めだ。そんなの……
そんな想いとは裏腹に、イリヤが触れた場所から止めどなく快感が突き上げてくる。
イリヤの愛撫は、程度を知らなかった。
とにかく休む暇もなく与えられるそれにきをやりそうになり、亀頭が膨れて破裂してしまいそうになる。
「ふ――も、う。いっちゃうの、お兄ちゃん?」
その予兆を感じ取ったのか、イリヤがこちらを向いた。
口の周りを唾液にまみれさせ、だらしなく食事をしている赤ん坊のような錯覚が意識を朦朧とさせた。
俺の切なそうな表情、それは顔の筋肉に引きつりを与える程度でちっとも届いていないようだったけど、イリヤには俺の様子が手に取るように分かっているようだった。
「出させて、あげるよ、お兄ちゃん。このまま、わたしの、口のな、かで……」
だから、イリヤは淫靡に笑って、
「ん、あ、ふっ……んんっ、いふでほぉ、いいから……」
体を元のように戻すと、今度は口いっぱいにモノを含んで上下した。
く、あああっ……!!
声にならない叫びが、また神経を斬りつける。
しかし、今度はイリヤも良くなりたいと思ったのか、ふと俺の指先が動き出した。
自分から切り離されたそれは、先程舌で懸命に愛撫して今は届かなくなってまったイリヤの秘所へと伸び、まずは周縁をなぞった。
「ふ、あああっ! う、ん――お兄ちゃん、も、っと……!!」
瞬間、イリヤは腰を浮かして襲いかかる快感を受け止める。
すっかり花開いているが、更にほぐすように弄り続けている指は、まるで他人のもののように感じてしまう。が、確かに自分の指がイリヤを責め、そのお返しとばかりにイリヤの口内の狭さと舌の躍動は極まりを増していた。
「んっ……ふうっ、んんっ……!!」
イリヤに導かれた俺がイリヤを、イリヤはそんな俺を。お互いの交歓がうねりを呼び、またお互いへの更なる愛撫へと繋がる。
「い、やっ……! ダメ、だよお兄ちゃん……」
指の動きはどんどんと積極さを増し、自らだからこそ知り得る快感の場所を求めて指を操る。
襞の中央、イリヤの荒い呼吸と共に蠢くその中心、俺の指はその蜜壺へ沈んでいった。
「ふぁぁっ!」
俺の、イリヤのそれとは違う指が、たった一本差し込んだだけでもきつい膣内。その襞のうねりはドロドロに融けてしまうかと恐怖してしまう程、熱く濡れていた。
「んふぅ……ふぁ……」
差し入れる指がイリヤの中から漏れる蜜を捕らえきれずに、俺の首筋へとぽたぽたと雫を零す。
止めどなく溢れる蜜を、永遠に掻き出すかと思えたそれは……しかし、やがて動きを止めていた。しかし同時に再来した快感は、イリヤの口の激しい責めであった。
「んふ……、先に、お兄ちゃんをいかせちゃうんだから……」
このままでは自分が先に陥落してしまうと悟ったか、イリヤは自らからの責めに集中したらしかった。
そんなのが分からない程に、イリヤの口腔奉仕が激しさを増す。
唾液を要領よく絡め、潤滑の増した幹を今度は手で弄んでいる。
亀頭だけを口に含み、カリの部分を唇で震わせるような愛撫が俺を高めて、遂に――
だ、め――だ!!
最後まで理性が繋ぎ止めていた我慢が、止めどなく与えられた快感に溺れて、死んだ。
「ん、んっ――!」
体温を超える熱さが腰を駆け抜け、吹き上がった白濁が亀頭からあふれ出して真っ先にイリヤの口内を蹂躙した。
「んんっ……! ん、く……」
腰が砕けるばかりの吹き出しが、何度も何度もイリヤに注がれる。その度にイリヤの口内は狭まり、喉を鳴らす振動が俺の亀頭を更に震わせていった。
「――は、ぁ」
何度も訪れた高揚感が終わった後、イリヤは唇を亀頭から離した。
真後ろからでは見ることはできなかったが、イリヤは口を開こうとせず、そのまま――
「……んんっ」
何かを胃に流し込むような動作をした。
――イリヤが、俺の精液を飲んだ。
汚した罪悪感よりも、その行動からわかった事実が俺の中で喜びを生み出していた。
「ん……おいし――かも。お兄ちゃんの」
イリヤはそこでようやく振り返ると、にっこりと微笑んで俺を見下ろしていた。
口の端に残る精液のだらしない跡を、猫のように舌なめずりでぬぐいさる姿にまた刺激されてしまう。
「……まだ元気だ」
――んっ!
しかし、抑えようとするその欲望もイリヤには分かってしまう。
後ろ手にモノを握られると、欲望を吐き出したばかりにもかかわらずびくりと血管を震わせて暴れてしまった。
「よかった――こんどは、一緒に気持ちよくなろう?」
イリヤはまだ足りないらしい。
自らの体をずらすと、イリヤは後ろ向きのまま俺の股間の上に跨った。
「いく、よ――」
僅かに怖がっているのか、こちらを振り返ったイリヤは不安げな表情をこちらに向けた。しかし俺もどうすることも出来ない。経験もない、動くことも出来ない自分は、まったくの役立たずだ。
それでも、視線が交わっただけでイリヤには勇気となったのか、にっこりと笑った。
「大丈夫、だよ……ん、んんっ――!」
そうして自らの位置を合わせ俺のモノを掴むと、位置がずれないようにして体を落としていった。
「あ――い、た――っ!!」
イリヤが、微かに痛みを訴える。しかし自然なのか気遣ってなのか、
「え、へへ……平気、だよ。」
僅かに引きつる笑顔で微笑んでくれた。
胸が痛みを微かに感じる。
求まざるはずだった行為が、今イリヤのためにどうしてか気遣ってやりたいという想いを生み出す矛盾。
はぁ、はぁと息を整えて俺の大きなモノを沈めていく幼い姿は、普段の無邪気さと健気さを混ぜ合わせたどうしようもない蠱惑的なモノだった。
「は、あ――おっきい、ね。はいらない、かも……」
イリヤの狭い膣を進んでいくモノは、ぎちぎちとそれ以上開かないところを穿つ。まだ先端が埋まった程度だから、その不安も理解できてしまった。
「でも、最後までやらな、きゃ――」
それなのに、イリヤは深呼吸をしながらそのタイミングを計り、少しずつ自らの胎内に俺を沈めていった。
そんなイリヤに、気遣おうという気持ちにさせられる。きつい刺激は快感とは程遠く、俺もしばらくどうなることも出来ないと悟っていた。
イリヤの腰が段々と俺に密着してくる。脚は震え、早く楽にしてあげたいと思うのに、それが叶わない。
しかし、
「ほ、ら。はいった、よ……奥が、あたって――」
イリヤが全ての体重を俺に預け、ようやく嬉しそうに振り返って微笑んだ。
小さなお尻にはまだ力が残っている様子だが、膣の締め付けに先程までのきつさはない。むしろ暖かいうねりは口腔に比べて数倍も気持ちよく、既にどうにかなってしまいそうだった。
亀頭の先端は固い感触に迎えられ、そこがイリヤの一番奥だと思わせる狭さを感じる。その最奥までの道程、幹を包み込む蠕動は男が想像付かない程におかしかった。
「ん、ふふ……お兄ちゃんは、これで本当にわたしのモノだよ……」
その言葉と共に、イリヤの心が膣の動きに影響を与えていた。
――!
今までの動きに加えて更に、もうひとつの波が加わった。
包み込み、奥へ誘う絡み付きが幹を、亀頭をなで上げる。
それは今まで感じたこと無い快楽。
一気に、溺れてしまう。
「ふぁ……も、う、出ちゃうんだ?」
イリヤはそんな俺を見つめる。その切なそうな笑顔で止められても、そればかりはどうすることも出来ない。
そう、見つめられても――もう、幾ばくも持たない――はずだったのに、
「まだ、だめだよ。わたし、まだ……一緒に、きもちよくなりたい。んんっ……」
だ、めだ、また。あ――ああっ!?
イリヤが体を揺すり出すと共に、俺はさっきみたいに白濁をぶちまけてしまうかと思ったのに。
目の前が白くなる達成感はあるというのに、体が放出を抑え込んで拒んでいた。
「ね、一緒にい、くまで、ふあっ、お兄ちゃんは、おあずけ――んんっ!」
快感を覚え始めた甘い声と共に、イリヤは妖艶な瞳で俺を見返っていた。
か、らだが。
精液が――さっきの視線の交歓でイリヤに金縛りをかけられたのか、爆発の寸前でせき止められていた。
精神はもうとっくに堕ちているのに体が返事を返さないから、精神の方はまだ達していないのかと思って、体にもっと気持ちよくなれとせがんでいる。
それはイリヤのわがままが、そのまま自分の状態に跳ね返ってきたみたいだった。
「ふぁ、いい、よ……動く、と……」
イリヤは慣れてきたのか、じっとしているだけでなく、腰を動かし始めた。
上下に動くイリヤの背中の動きに併せて、ぷちゅ、ぷちゅと腰の方から甘く湿った水音が聞こえる。
みっちりと埋まった感覚、そこを掻き出されたらしい二人の液体が、俺の陰嚢を濡らしている。こちらからはその様子が見て取れなくても、腰に甘く疼く触覚が、耳に届く聴覚が教えてくれていた。
「ん! こ、こ――す、ごい……っ!! ふあ、あ、ぁっ……ああんっ!!」
その音に、光景に惑わされたのか、イリヤの声が次第に幼いものから、艶濡れた大人のものに変わりつつあった。
より動きは激しくなり夢中になっている様子で、時折首を振りながらいやいやをするように、自分の内から沸き上がる感覚に翻弄されてる様子だった。
「こ、れがセックスなん、だ――あはっ! どうして、知らなかった、の……ふぁぁっ!」
止められない、とばかりにその動きは段々とスムーズになり、今まではただどちらか一辺倒だった膣のうねりが、呼応して強弱を持ち始めた。
「ううんっ……! お、にいちゃん――気持ちいいよ、ぉ……ひゃあっ!!」
うわごとのように漏れる、イリヤの切ない喘ぎ声。
だめだ、そんなのを聞かされたら――
ただでさえ可笑しくなっている精神が、更にイリヤに犯されている気がする。
まるで脳を鷲掴みにされたみたいに、全てはイリヤの望んだまま、俺は犯されていた。
「……ふぁぁぁぁっ! ね、わたしもう――」
イリヤの声が、一際切羽詰まったものになった。
瞬間、肉体の枷が外された。
今まで緊張を保っていた下半身が、びくびくと震えだす。
放出を止める為の束縛が、イリヤが快感に効果を失った為か消えていた。
「お兄ちゃん、今度は、いいよ――ふぁっ! い、っしょに、いこ……あああああっ!!」
何度も飛べずにいて、ようやく認められた。
こっちを見つめるイリヤの、涙に濡れて光った瞳が何よりも綺麗に映る。
そんな様子も、も、う見て――いられなかった――!!
「ふぁっ? んああああっーーーーーー!!」
心で、突き上げた。
心の中で思い切りイリヤを串刺しにして、子宮を突き破ってしまう姿を妄想しながら、意識は高く飛んだ。
ビクッ、ビクンッ!
イリヤの襞の収縮に、そして一際大きな叫び声に導かれ、遂に弾けてしまっていた。
胎内に大量の白濁を迸らせ、そのまだ花開いたばかりのイリヤの膣を、子宮を精液で満たしていく。
「ふぁ、ああああっ! ……ああっ、んくっ、ああんっ!!」
その一飛沫ごとに、イリヤの詰まったような声が襲いかかってきて、俺は我慢させられた分、いつまでも精液をイリヤの膣内に射精していた。
「は、あっ……あっ、あん……」
肩で息をしながら、イリヤが力無く俺の下半身を跨いだままうなだれている。イリヤも気持ちよくなったのか、その膣の動きはまだ浅い収縮を繰り返していて、俺も残滓を搾り取られていた。
しかし、ようやくその背中を起こすと、イリヤが腰を浮かせた。
「っ……抜くよ、お兄ちゃん――」
力を失いかけていたモノが、その声と共にイリヤの膣から露わになってきた。
幹はどちらとも分からぬ白濁にまみれている。そし今までイリヤの膣口を残酷なまでに押し広げていた亀頭がようやく姿を現すと、ドロリ……と、蓋を外されたイリヤの膣から、精液が零れだした。
「んっ……!」
イリヤが、その脱落感を感じたのか腰を震わせる。
そして、全てのモノがイリヤを貫いていた束縛から脱出すると、イリヤはころんと体勢を入れ替えて、俺を正面に見下ろす格好に戻った。
「ふぁ……お腹、重い感じ――お兄ちゃんの、まだ入ってるみたい」
イリヤがその小さなお腹をさすり、奥に残った違和感を感じていると、
「あ、っ……」
こぽこぽと、何かの拍子にイリヤの膣が花開き、そこからどろりと一すくい程もある精液が流れ落ちた。
「えへへ――わたしの中、精液でいっぱいだ……」
イリヤは俺のお腹の当たりに落ちた精液を掬うと、迷わず口に運んで飲んだ。
「お兄ちゃんの味――おいしいよ。ちょっとわたしの血の味がするけど」
そう言って無邪気に笑うイリヤは、いつものイリヤに戻っている気がして、
「赤ちゃん、できるのかな――」
ふと、俯いたイリヤのそんなつぶやきの意味を、俺は深く考えられなかった。
「……ね、お兄ちゃん!」
すると、そんな一瞬の行動を跳ね返すようにして、イリヤが元気よく叫んだ。
「夜は、これからだよっ! もっと、いっぱいセックスしよう?」
そしてイリヤはもう一度体をずらすと、俺のモノを自らの膣にゆっくりと収めていった。
「もう、あいつらは死んじゃったんだから、お兄ちゃんはわたしだけのもの……んっ」
挿入される感覚に早くも声を潤ませながら、イリヤは微笑んだ。
「いつでも、一緒だよ――」
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