Reborn’s Day−月夜の出来事−

作:村瀬夏実  出版:ケイエスエスノベルズ



この本を手に取ったのは、国立のある古本屋でした
もともと、この原作であるゲームにはかなりの興味を抱いていました
なぜなら、物語の重要な位置を占めるヒロイン「出田 雪乃(イヅタ ユキノ)」が
黒髪ロングで無表情ときているので、僕のツボにはまったわけです(笑
そんな娘がにっこり笑ってくれた時にはもう!(爆

ゲーム雑誌に載る情報では、ストーリーの(色々な意味での)面白さや音楽の素晴らしさというのは伝わりにくいので
こういうキャラクターで気を引くというのは少なからず重要となっていっている…というのは困った現実なのかも知れませんが
そういう点で小説は、ストーリーを全面に出して雑誌とは違う切り口で面白さを探れるのでは

とにかく、そういう前説はおいといて
正直、内容に関してはあまり期待はしていませんでした
ところがどっこい
ストーリーは、ある美しい満月の晩に起こった出来事
主人公の見る、不可解な映像と雪野の姿
とにかく、不思議です
読んでいる僕の中でのイメージは、月夜に照らされて全てが青白く浮かび上がる風景
とにかく、(心の中で)見えるもの全てがあの神秘的な色に染まっているのです
僕が思うに、文章でこういうイメージをいかに持てるかが、小説を読むときの決め手だと思っています
良く言えば想像力
悪く言えば妄想
その点で、この作品は僕を一気に引き込んでいった、そんな印象が持てました

主人公は、出来事に惑いながら少しずつ出来事を繋げてゆく

この小説での「主人公」は、自分でもあるのです

はっきりって、この小説は導入が全くと言っていいほどありません
読み始めの時点でこちら側に与えられている情報が余りにも少ないのです
つまり、文を読み進めていく課程での混乱の度合いは、主人公のそれに一致します
訳が分からないので、そこで読むのを諦めてしまう人もいるかも知れません
少々文章も難しい部類に入るので、腰を据えないとつらいです
流し読みでは頭にビジョンが浮かんできません
が、読み進めて行くほどに面白くなります
内容は言えませんが、話の後半に進むに従ってパズルのピースが埋まってゆく如き楽しさが生まれます
少々、展開が強引である部分もありますが(だいぶ強引なのかも知れませんが、それを補って有り余る文章力、なのかもしれません)
上手く読み進めれば、読み終わった時混乱を招いていた全ての事象が1つに集約されるのです
読後感は非常にすっきりと、それでいてまだあの青白い情景が心に残っていて何とも言えない、不思議な感覚です

正直、この作者の方の作品は多分初めてだと思うのですが
文章の巧さには脱帽しました
圧倒的に面白いです

で、最後に
最も印象的だった絵として、物語の間に見える幻想的な絵でも何でもなく
最後に雪野が黒髪を頭の上で1つに縛って笑顔で微笑んでいる絵
…万歳!(ぉ