顔のない月(上)

作:深町薫  出版:キャロットノベルズ


僕の記憶が正しければこの作品、キャラ原案担当の「CARNELIAN」さんが立ち上げたブランドの
デビュー作だと思うのですが、発表当初から期待の持たせるものでした。とにかく絵が綺麗
ですが実はゲームとして大事なシステム・シナリオは殆ど分からない状態でした。
で、出てみれば、肝心のシステムがただのADV(アドベンチャー・ゲーム)のハズなのに破錠していて
全くお話にならなかったそうです…(プレイしてないので何とも言えませんが…)

で、そのノベライズがこれ、と言うわけです。作者は確か、前はメガヒットノベルズで幾つか作品を
見た記憶が…とりあえず今目に付いたところで「再会 卒業旅行98」だそうです。
この人の文章と言えば、個人的には「つかみ所のない文章」です。どういう意味かは後々分かります(謎

ストーリーは至ってこの世界でのシンプルフォーマット・館モノです。
「不思議な体験を持つ主人公が、招待された館で色々な出来事に遭遇する」
とでも言いましょうか、その骨組みに肉付けをしてある感じです。
もー、とにかく最初っから謎ばっかりです。最早何が分からないのか分からないといった感じで
自分の中で嚥下出来ぬままページを無理矢理めくるのです。
とりあえず、主人公が何故か「倉木家の次期当主」となり、許嫁にさせられた「鈴菜」とそれこそ
謎のうちに交わります。何か、「自慰してるのを見てムラッとしちゃったから処女を奪っちゃった」とか
「巫女の儀式を見に行ったら謎の酒と祝詞で惑わされて襲っちゃう」とかって、いきなりこっちが納得
してないうちに書かれても、それこそ「あれ?あれ?」といった感じです。正に輪郭を読む、そんな表現が
正しいのではと思います。
今回の上巻は、そんな中で屋敷のメイド「沙也加」が実は…って話なんですけど、それも
主人公と鈴菜の交わりの中、断片的に描き出されてるので、なんだか殆ど話が繋がらないままに
終わってしまった感じです。展開も急で付いていきにくいです。

で、ここまで酷く言ってますが、一番訳の分からなかったところが、何回目かの交わりの時
「彼女と一体となってSEXをしている感じだ。彼女も感じているのだろう」的なくだりがあるところです。
…あのー、ちっとも鈴菜側の心理描写がなされていなくて(というかやられてるだけ)
だたの主人公の自己満足(しかもかなりナルシズム入ってる?)的表現になってるのです。
はっきり言って、最初から最後まで鈴菜側の表現が少なく
「襲われて処女を散らされたのに」
「祝詞のせいとはいえめちゃめちゃやられてるのに」
「いきなり押し掛けられてやっぱりやられちゃったのに」
制服着せられて(笑)悪戯されまくってるのに」

なんで好意持ちまくりの態度で最後はちゃんとラブラブなんでしょうか?さっぱり分かりません。
女性だったらかなり批判的な感想を持つのでは無いでしょうか?

「つかみ所のない文章」おわかりいただけましたか?正に霞を掴むが如し。
ホント「煙に巻く」とはこういうことを言うのでしょうね(汗
使用目的なら、かなりHの頻度が高くお勧めなんですけど(爆
いわば、某ソフトウェアの掲げる「オカズゲー」(いわゆる良い意味でストーリーが無いも同然)ですな。
これだけ謎だらけで下巻でも収束できそうになく、違う意味で次が楽しみだったりする本は久々です(苦笑
…それでも、中古で並ぶのを待つんですけどね(笑
上巻を買った人、下巻も早々に頼むよ!(ぉ

余談:鉛筆書きの挿し絵、何かきちっと書かれているよりエッチっぽいのは
    「そういう絵の方が想像をかき立てる」からなんでしょうか。
    それともラフのような線が
     「自分好みの輪郭線が見えるようになっている」からなんでしょうか?